神主さん。
お昼も過ぎ、何故か久子さんが持っていた
肩に掛けられるタイプのペット用キャリーバックに子犬達を詰め
ちぃーと共に図書館に向かうため畑の脇の道を歩く。
ちなみに、綾瀬さんは徹夜で原稿をやったらしいが間に合わず、
朝から佐藤さんという編集さんに電話で怒られていた。
本当に馬鹿な人だな。と思っていると、
前の方の木の傍にイナリがいるのが見えた。
「イナリーっ」
名前を呼ぶとこちらを振り返った。
一緒に図書館に行こうと思い掛け寄ると、
丁度死角になっていた木の陰から20代後半ほどの男の人が見えた。
「あれ?もしかしてお邪魔でしたか?」
イナリと喋っていたであろう男の人に喋りかけると、
男の人は私の顔を見て目を見開いた。
「っ...?」
「別に対した用じゃねぇーよ。
お前は図書館か?」
「あ、あぁっうんっ。
あの、えっと...。」
視線が気になりまた男の人の方を見る
「ッ!す、すみませんっ、あまりにも知人に似ていたのでっ...、」
そう慌てた様子で言うと、男の人はぺこりと頭を下げ
小走りで神社のある方へ小走りで行ってしまった。
「なんか、そそっかしい感じの人だね。」
男の人の走り去っていく姿を見る。
「俺が住んでる神社の神主だよ。」
普段はあんな感じじゃないけどな。とイナリは付け足し、
私同様、神主さんの後姿を見た。
「で、そのバックはなんだよ。さっきから獣臭くてかなわねぇー。」
イナリが子犬が入っているキャリーバックを指指す。
「あー、いやさ、馬鹿な知り合いが犬アレルギーの癖に子犬拾ってきて...。」
バックを開くとイナリと中を覗き込む。
「うわ、ちっさ。」
そうボソリと呟くイナリ。
「抱っこする?」
子犬を一匹片手で取り出し差し出すと
一瞬手を出そうとしたが、イナリは一歩下がってしまった。
「いや、いい。」
「.....。」
私がズイッと距離を縮めイナリが一歩下がるを数回繰り返す。
「あ゛ぁッ!もういい加減にしろよッ!」
そう怒るイナリに半強制的に子犬を押し付けた。
「おっ、おいッ...、」
子犬をどうしたら良いのか分らずオロオロとし始める。
「イーナーリー。」
「しょッ、しょうがねぇーだろッ
子供とかちっちぇー動物とかどう扱ったらいいか分んねんだよッ」
逆切れをするイナリ。
「私、別に何も言ってないし。」
「ッうあ゛あああッ!!顔に書いてあんだよッ!」
「ふーんふん。」
私が図書館の方向へ歩き始めると、
イナリがモゴモゴと動いている子犬に動揺し焦りながら付いてくる。
チラッと横目で後ろを見ると、
イナリはその太くて短めの眉を八の字にしていた。
*