許可。
ミルクを飲ませ終わり、
綾瀬さんの仮眠用ベッドのすぐ側で毛布に包まり
スヤスヤと寝ている子犬達。
ふと私が腰を下ろしている綾瀬さんのベッドを見ると、
綾瀬さんはトロンとした目でウトウトとしていた。
「なんで綾瀬さんまで寝そうになってるんですか。」
呆れた顔をして揺さぶる。
「大丈夫、大丈夫。」
「何が大丈夫なんですか、寝ボケないでくださいよ。」
そんなくだらない会話をしていると、
スマホがピコッと鳴り画面を覗く。
「あ、久子さんからだ。」
きっとさっき送った子犬の件だろう。
「なんだって?」
綾瀬さんがベッドから起き上がり画面を覗き込む。
「おっ!子犬大丈夫ですってッ許可おりました!」
「マジかッ。はぁ〜、一安心だな。」
またヘタリとベッドへ寝転がる綾瀬さん。
「あ、綾瀬さんもしかして小説の原稿やってたんですか?」
ふと綾瀬さんの本職を思い出し聞く。
此処に居たということは仕事をしに来ていたのだろう。
「あー、おぅ、うん。」
曖昧な返事をして誤魔化すようなことを言う綾瀬さん。
「なんですか。」
ジトーっとした目をすると明らさまに目を逸らした。
「もしかして、仕事サボってました?。」
目がスゴく泳ぐ綾瀬さん、図星のようだ。
「子犬は見てますからッ仕事しっかりやってくださいッ!!」
*
「っんぅ...?」
いつの間にか寝てしまっていたのか、
何かを体に掛けられるような感覚を感じ目が覚める。
「あ、起こしちまったか?」
意識がハッキリとしてきて、ようやく状況を理解した。
綾瀬さんは如何やら寝てしまった私に
ブランケットを掛けてくれようとしていたようだった。
視線を机の方に移すと、綾瀬さんの仕事用のパソコンには
長い文章が並んでいた。
しっかりと仕事をしていたようだ。
「今、何時?」
目を擦りながら聞く。
「此処の空は明るいが、
多分あっちは薄暗くなってるんじゃないか?」
立ち上がり頭を掻く綾瀬さん。
「そろそろ帰りますか。」
綾瀬さんと居るも、久子さんを心配させてはいけないと思い、
帰るための仕度をし始めた。
*
「あ。」
綾瀬さんが鳥居を潜る直前にピタリと止まった。
「え、何ですか急に。」
私も止まり綾瀬さんを見上げると綾瀬さんは少し怒ったような表情をしていた。
「そういえば、お前なんで此処来たんだよっ、
前に言ったよなっ?此処は危ないってっ。」
そう説教じみたことを言う綾瀬さん。
「でも...、今の状況からして説得力無いですよ綾瀬さん。
ねっ、ちぃー。」
「ナーン。」
横目でジトリと見ると綾瀬さんは気まずそうに目を逸らした。
「ッ、...子犬がいる間だけだからな。
それと、鳥居を潜る時は俺と一緒の時だけ、分かったかっ?」
「はーい。」
*
無事家に帰るといつもどおり久子さんが出迎えてくれた。
「あらあらっお子さんっ?」
子犬と私達の顔をニコニコと交互に見る久子さん。
「綾瀬さん私もう何も驚きません。」
「あぁ。___ッブシュッ!!」
思わず真顔になったのは私だけではなかった。
*