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前回の投稿から少し間が空いてしまいましたが、次話を投稿させていただきます。よろしくお願いします

あれからしばらくして、二人は骨になるまで犬の死骸を食いあさった。

しかし彼らは傷が治ったり、犬耳が生えたりなどの変化は見られなかった。


「これは特殊技能の力ってことか。でも食事で傷が治るのはうれしいかも。」


骨になった犬はそのままにして、先ほどの道具袋からテントのようなものがないか探した。

するとそこにはテントこそなかったものの、寝袋のようなものあった。


「しかたない、今夜はこれでしのぐか。と言ってもこんな姿じゃ町には出られないだろうな。どっちか火をおこして。」


そうするとカルサが道具袋から木の枝などを大量に取り出し、マッチのようなもので火をつけた。

この世界にも、マッチがあるとは便利だ。

そのそばに寝袋(仮)を広げて、二人は周囲の警戒に当たらせる。

そして志桜里は先ほど二人に置かせた剣を持ち上げてみた。


「なにこれ、軽!」


その剣は想像以上に軽く、志桜里でも容易に振り回せるほどだった。

一本は道具袋にしまい、一本は抜き身で振り回りしてみる。

初めて扱ったようには見えないその様子に志桜里は、先ほど獲得した剣技のおかげかと確信した。


「剣技を獲得できれば結構楽に扱えるんだ。でも想像以上に動きにくいな・・・この服。」


先ほど着替えた服は女もの、剣を扱うにはスカートが邪魔だ。

しかし、彼らの道具袋にはもっと動きやすい服は男物になってしまう。


「しょうがない、我慢して着るか。」


今度はもう気にせずその場で着替えを始める。

彼女にはもう性別が存在せず、恥ずかしいという感情も薄れてしまっているのだろうか。

着替えを終えた志桜里は腰に剣をさすと、火のまわりに座り込み考える。


「され、これからどうしようか・・。」


この姿では町に出ることも難しい。

たぶんもう少し人間を食べれば、人間の姿になることもできるのだろう。

しかし、このあたりに人間はいないし、かといってマールとカルサを食べたら逆にゾンビに近づく気がする。

人間を襲うしかないのかとも考えたが、ゾンビなりたての私にはそんな勇気はない。


「この森は怖いからたぶん普通の人間は近づかないよね。だったらもう少し奥に家でも作ってそこで暮らそうかな・・・。でも食料はどうしよう。私だけじゃなくてマールとカルサの分もどうにかしなきゃいけないのか。めんどくさいなぁ。」


そこで私がめんどくさいとしか思わなかった時点で結構な影響が精神面に出ていたのだろう。


そこで一晩すごした私は二人とともに森の奥に進んでみることにした。

そこを進むと、まがまがしい雰囲気も少しは収まってきた。


「ここらへんじゃ動物もでないし、かといって食べれそうな植物もない。さーてどうしたものやら。」


そこらにあるのはいかにも毒がありますよと言わんばかりの植物ばかり。

今の私が食べたら一体どうなるのか試してみたくなったが、絶対にいい影響はでないのでやめておいた。

そのまま進み、少し開けた場所にでた。

周りは背の高い木々が生え近くには水場もある。


「よし。ここにしようかな。」


そこに家を建てることに決めた志桜里は、さっそく自分のスキル「創」でそこに家を創ってみることにした。

どんな家にしようかと目を閉じ考え始めたとき、そいつは現れた。


目を閉じて考えていると、急に横から大きな声が聞こえた。

そいつは鋭い眼をしたオオカミだった。

自分の知っているオオカミよりも何倍も大きい体をしたそれに、私は口を開けて驚くしかなかった。

そしてすぐに腰にさしてある剣をおもいだした。

決してそいつからは目を離さず、剣を抜き、よくわからないまま体の前に構える。

そいつは私たちをゆっくりとみていた。

まるで誰から食ってやろうかと品定めするみたいに。

不思議と恐怖はなかった。

昨日戦ったとき、剣で刺された痛みを感じなかったから今回も大丈夫だろう、また何か食べれば傷は治ると考えていた。


しかしそれは一瞬の出来事だった。

そいつは瞬きをする間にカルサにかみついた。

一瞬でカルサの体は半分になった。

もう半分はあのオオカミの口の中に消えていった。


「うそ・・・。」


そいつは今度は私のほうをむくと、私のほうに大口をあけて走ってきた。


「い・・や。いやああぁああぁ!」


死ぬ恐怖に、志桜里は思わず持っていた剣を体の前に突き出した。

想像以上にオオカミは自分に近づいてきていて、口はすぐ目の前まであった。

幸運にも私が突き出した剣はオオカミの口の中に刺さり、その勢いで深く突き刺さった。

オオカミは私を巻き込み地面に倒れた。

それでも剣を離さなかった志桜里は、すこしでも深く刺さるようにとさらに剣に力を入れた。

オオカミが死んだのはそれからしばらくたってからだった。

途中で反撃しようと暴れたときは、どうしようかと思ったが、マールの力を借りてどうにか抑え込み、やっとの思いで息の根を止めることができた。


「はぁ はぁ はぁ はぁ」


そいつが死んでもまだ動くのではないかと不安だった。

しばらく見つめて、そいつがもう動かないのを確認すると、思わず座り込んでしまった。


「めっちゃ強かった・・・。しかもカルサが・・・。」


カルサが倒れている場所に行くと、彼はまだ死んでいなかった。

苦しそうにうめいているように見えた。


「ごめんな・・。」


仲間にして1日もたっていなかったが彼が死んでしまったのはすごく悲しいことだった。

このままにしておいても、彼は私のように回復はしない。

ならばここで殺しておいたほうがいいのではないか、そう思った。


覚悟を決めて、包丁を創りだすと彼の首に突き立てた。

途中で何か硬いものに当たる感触があった。

彼は一瞬目を見開くとそのまま死んでいった。



先ほど殺したオオカミのところに行くと、毛も気にせずその肉にかぶりついた。

カルサを殺さなければならなくなったことが悔しくて食べることで解消しようとしていたのかもしれない。

気が付けば半分ほどをマールと一緒に食べていた。

少し落ち着いた志桜里はカルサをどうすべきか悩んだ。


「このまま放っておいたら、こいつみたいな獣が集まりそうだし・・。でもここに埋めた上に家を創るってのもなぁ。」


こういうところで非情な面が出てくる。

さっきまで悔やんで、悲しんでいたのにもう他人のような感覚なっている自分の変化に恐ろしくなった。

結局志桜里はマールに頼んで遠くに運び、埋めてきてもらうことにした。

その間、志桜里は先ほど半分ほど食い散らかしたオオカミの影響がどう自分に出ているのか確認することにした。

手鏡で自分を確認すると、先ほどより犬耳が大きくなっていた。

そして志桜里の髪が真っ白になっていた。

さっきのオオカミの体毛は灰色だったから、白になるのはおかしい。

でも、自分が食べたものは先ほどのオオカミのみ。


「なんでだろう・・?っていうか犬耳があるのに人間の耳もあるしなんか変な感じ。」


それ以外に目立った変化はなかった。

その次に志桜里はステータスを開き確認した。


名前 天川 志桜里

種族 食人

性別 不明

所属 なし

職業 なし

年齢 不明

スキル 創 剣技 瞬発

特殊技能 種族変化


「さっきの奴は瞬発ってスキルを持ってたわけね。人間以外もスキルを持てるんだ。」


そうこうしているうちにマールが返ってきた。

そして二人で先ほど倒したオオカミを解体して、肉の塊にすると道具袋の中に入っていた布で適当に包み道具袋に放り込んでおいた。

そして近くにあった川から水を汲んできて、地面についた血を落とすとようやく家を創れる状態まで持ってきた。


「確かにここは水場も近くて、木の背丈も高いから日陰になるし、平らだから過ごしやすい。あんな大きい獣でも快適に過ごせるってわけだ。」


ここはたぶんさっきのオオカミの寝床か何かだったんだろう。


「イメージするのは・・木の家かな。部屋の内装とかはどうなるんだろう。」

とりあえず森の中にありそうな丸太でできた家をイメージする。


理由は普通の家だと外壁をイメージするのが難しいが、木の家なら丸太をイメージすればいけそう、という考えからだった。


「木の家、木の家、木の家、木の家。」


しばらく唱えていえると体から大量のエネルギーが抜けていく感覚に襲われた。

目を開けるとそこにはイメージした通りの家があった。

ドアを開けて中に入ると、中を区切るものはなく、ただ広い空間が広がっているだけだった。


「床はできても中の仕切りはできないのか・・・。まあ今のところそこは必要ないか。」

その日はベッドを創りマールを中に入れると、そのまま眠ってしまった。


ありがとうございます!

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