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「とりあえず、君たちの名前を教えて。」


「あうあ」


「あーう」


「そうだった・・ふつうは話せないんだった・・・」


あれから少し場所を変えて、森の中で座り込んでいた。

名前を聞こうと思ったけど、彼らは基本的に母音しか話せないらしく、とても聞き取れるような言葉ではなかった。


「じゃあその武器を地面においてくれる?」


そういうと彼らは返事もなく、腰につけた剣を地面に置いた。


「君たちは一体何者?ていうかさっきの男の子が騎士様って言ってたってことは、騎士団が存在するほどの大きな町があるってこと?」


ブツブツと少ない知識をフル活用して考えているとゾンビになった二人が透明な板のようなものを渡してきた。


「なにこれ?」


そこにはまるでゲームのステータスのような数値が並んでいた。


名前 カルサ

種族 人間

性別 男

所属 ラルイ町

職業 ナムール王国騎士団団員

年齢 20


名前 マール

種族 人間

性別 男

所属 ラルイ町

職業 ナムール王国騎士団団員

年齢 21

スキル 剣技


「これ・・私が何者かって聞いたから?」


そう言って二人を見ると首を縦に振った。

会話以外の方法でなら何とかなりそうだ。


「へぇ君がカルサでそっちの君がマールか。なんでマールはスキルってのがあってカルサにはないんだろう?やっぱりこういうのはトレーニングしないと取得できないもんなのか?それとも生まれつき・・?あー!もうわかんないことばっかり!」


癖で髪の毛を触ろうとして手が血だらけなのに気が付いた。


「そうだった・・・。しかもさっき二人の肉食べちゃったし。やっぱり私ゾンビになっちゃったんだ。」


そう考えると少し落ち込んできた。

でも少し慣れてきた。


「あ!そういえばさっき二人はどこからスコップを出していたの?」


急に疑問が浮かび質問すると、二人は腰にぶら下げていた小さなポーチのようなものを私に差し出した。


「これ!?これにあんなものがはいっているの?」


せいぜい財布が一つ入るくらいの大きさのものに入っているのかと思っていると、カルサがそれに手を入れて先ほど使っていたスコップをとりだした。


「うっそ!完全ファンタジーじゃん・・」


マールから袋を受け取り、手を突っ込むとありえないほど深い穴がそこには広がっていた。

いくら手を伸ばしてもそこには届かず、かといって中に入っているもの当たるわけでもなかった。

これでどうやってスコップを出していたんだ?と思うと急に手にスコップが当たった。

まさかと思い手を出すと、手の中にあのスコップが握られていた。


「これは無限に入るってこと?いやでも、さすがにそれはないだろう・・・。とりあえずこれにはなにが入ってるの?」


マールにそう問いかけると彼はいつの間にか持っていたさっきの透明な板を操作して、私に渡してきた。

そこには、中に入っているもののリストが並んでいた。

食料や服、簡易テントなど、サバイバルができなそうなほどたくさんのものが入っていた。

何も持っていない私にはとてもありがたいものだった。


「いろいろ入っていたのはラッキーだけど、この板どうやって出してるんだ?」


返していないはずなのにいつの間にかマールの手元にあったその板。

カルサもそれを持っていた、というよりかは急に出現したんだけど、ということは誰にもいつでも作れるってことだと思う。たぶん。


「この板の出し方は?」


「うえーあう ああえ」


その口から出てくるのはやっぱり母音だけだけど、今度は聞き取れた。


「ステータス 志桜里」


カルサの言う通り(たぶん)にやってみると私の前に透明の板が出現した。

私が触れるまでそこに浮いていたそれを手に取ると、重さをまるで感じなかった。


「なにこの板。なんか実在してないみたい。」


そこの地面に座ってその板をじっくり見ようと思って手についた血や穴の開いた衣服が急に気になりだした。

さっきまでは混乱していたこともあり全然気にならなかったが、女子として耐えがたい状況ではあった。


「えっとカルサ、水を汲んできてくれない?マールは誰かが近づいてこないか見張っていて。」


そばにいた二人にお願いすると、彼らは一つう頷いてそれぞれ行動を始めた。

私はマールの持っていたポーチ(今後は道具袋と呼ぶことにしよう)から衣服を取り出すと草の陰に隠れ着替えを始めた。


「なぜ彼は女ものの衣服を持っているの?まさかそういう性癖が・・・。」


着ていたセーラー服を脱ぐと奇妙なことに気が付いた。


「あれ?さっき切られた傷がない・・。」


さっき確かについたはずの傷が初めからなかったかのように消えていた。

不思議に思ってさっき拾った手鏡を取り出して自分の顔を見ると、先ほど見たゾンビはそこにはいなく、中学3年生のころよりも少し大人になった天川志桜里の顔があった。


「なんで顔がもとに・・!しかも少し大人になってる。でも左目は相変わらずないし。」


ペタぺタと自分の顔を不思議そうに触ったりして感触を確かめる。

確かに自分の顔がそこにはあった。


着替えをすまし、マールの道具袋から布を取り出して、少しかっこつけて左目に巻いてみた。

元いた場所に戻るとカルサが樽にいれた水を持ってきていた。


「あの袋の中にはそんなものまで入っていたのね・・・。」


その水で手と顔を洗うとその水は血で染まっていた。

セーラー服も洗おうかと思ったけど、血の水で洗っても逆に汚れるだけかと思い、泣く泣く捨てることにした。

振り返るとカルサとマールが血で染まった水をのんでいた


「あ そっか。この二人ゾンビだからか。」


そんな二人はおいておき、自分のステータスを確認することにした。


名前 天川 志桜里

種族 食人

性別 不明

所属 なし

職業 なし

年齢 不明

スキル 創 剣技

特殊技能 種族変化


はっきり言ってクエスチョンマークしか浮かばない。


「食人ってなに・・。それにスキルが「創」って情報少なすぎでしょ。しかもほかの二人にもない特殊技能なんてもんもあるし・・。」


この二人は母音しか発することができないから質問することはできないが、ほかには聞く相手もいないのでどうしようない志桜里はその場で試すことにした。


「まず、スキル。創ってことはたぶん何かを作るってことでしょ?いまほしいもの・・・。飲める水!」


そういうと体から何か出ていき、体の前に集まっていった。

疲労感は全くと言っていいほどない。

作られた水は瓶に入っており、先ほどの板と同じように触れるまでそこに浮いていた。

手に取って水を飲んでみると、確かにおいしい水だった。


「作るっていう解釈はあってたんだね。じゃあ次は私でも使える武器!」


先ほどから身の危険を感じていた志桜里は先ほどと同じように武器が出るようにと願ったが、同じように作り出されることはなかった。


「あれ~?だめか。条件はなんだろ?何もないところから作れるってことはわかってるから、あとは想像力くらい?」


今度は身近にありそうな包丁をイメージし、願ってみるとそこにはよく切れそうな包丁があった。

「イメージ力が大切」と心にメモをする。

その後、口に出すことなくできるのか、出現させる場所を特定することができるのか、など色々実験をしてみた。

結果はほとんどできる、だった。

しかし、やはりイメージが足りないと出現しなかったり、出現させる場所は自分を中心に半径1mの円が限界であるという欠点もあった。

そしてもう一つ、生物を創るとめちゃめちゃ疲れるし、すぐに死ぬ。

一度だけ犬を創ってみたのだが、まるで貧血になったかのような感覚襲われた。

それをどうにか我慢し犬を見ていると、初めは元気だったもののすぐに死んでしまった。


そして今、私は究極におなかがすいている。

これは確実に先ほど生物を創ったせいだと思う。

一番困っているのは、目の前にある犬の死体をおいしそうだと思ってしまっていること。

先ほどの出来事から少々予感はしていたのだが、やはり自分は肉を食べる。

しかも生の。

いままで日本で血を見ることもなく平和に暮らしてきた中学生には酷な話だった。

食べたいけど食べたくない。

はたから見たらおかしいようにしか見えないだろう。


「う~。おなか減った・・・。でもあの肉は食べたくない。でも・・・」


さっきから同じことの繰り返しだった。

そして志桜里は腹をくくった。

意を決して目の前にあった犬の死体を持つと先ほど創った包丁で適当に毛をそぐとそのままかぶりついた。


「はぐ・・・ごくん。」


一度覚悟を決めてしまうとあとは簡単だった。

何口か食べた後、そばで血をすすっていた二人がやってきた。


「君たちも食べるかい?なんだか母親にでもなった気分だな・・。」


そうして残りを二人にあげると、二人は先ほどと同様夢中になって肉をむさぼる。

そして自身の異変に気が付いた。

まず、頭に違和感。


「なんで犬耳?」


手鏡で見ると、まるで犬の耳のようなものが生えていた。


「まるで食べたものに影響されてるみたい・・・。」


しっぽこそまだはえていないが人間を食べれば人間に、犬を食べれば犬に近づく。

そして言葉使いが若干荒れていること。


「さっきのことから考えたら、食べたものに近づく。ってことはさっき食べた二人に近づいてちょっと男子っぽくなったってことか・・・。そしてスキルに剣技があるってことは食べたらスキルもゲット可能ってことね。」



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