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十二宝玉物語  作者: 紫苑
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はじまり そして であい

あれは、ある冬の晴れた日のことだった。

ホウと呼ばれる赤い髪の青年は、自分の主のいる城に呼ばれていた。

「何でしょう、主君」

「芳。お前にはこれから、十二の宝玉を集めてきてもらいたい」

「十二の宝玉、ですか・・・?」

芳は、小首を傾げた。

「うむ。芳は、ワシの趣味を知っておるな?」

「はい。たしか、綺麗な石を集めるのが趣味であったと」

「そうじゃ。これから集めてもらう十二の宝玉も、それはそれは綺麗なものじゃ」

「その十二の宝玉とは、どこにあるのですか?」

主は咳払いをすると、話し始めた。

「十二の宝玉は、月の十二城と呼ばれる城に家宝として厳重に守られているものじゃ」

「月の十二城、とは?」

「おまえは何も知らんのじゃな・・・」

主は、少しあきれた様子だった。

「月の十二城とは、城の名前に各月の名前が入っている城のことじゃ。例えば、ここから北にいったところにある『ムツキ城』がそれにあたる」

「月の名前が入っている城に、その宝玉があるのですね?」

「ああ、そうじゃ。全てを集めたら、ワシのところに持ってきてくれ」

「わかりました」

「おっと。言い忘れておった。お前はワシによく尽くしてくれたからのう。休暇も含めて、ゆっくりと旅をしながら集めてきてくれてよいぞ」

「ありがとうございます。では、行ってまいります」

主に頭を下げ、芳は城を後にした。


芳は幼いころに両親を亡くし、それからは一人で生きてきた。両親の残した家に住み、農業も料理も掃除も自分でこなした。泥棒に入られないように、自分を鍛えることもした。そしていつしか、芳は刀を持たず、拳で人を殺められるようになった。

その力で、今の主の家来になったのだが

「北はどっちだ?」

芳は学がない。幼いころから生きることに必死だったため、普通の民衆よりも頭が悪かった。

「さすがに主君に聞きに行くのもな・・・。しかたない、少し歩いて会った者に声をかけてみるか」

そして、芳は歩き始めた。

南に進んでいたことに気が付くのは、それから何刻もたったあとであった。




――――――――――




「やっと、ムツキ城のある町についたけど・・・。ムツキ城はどこにあるんだ?」

そう芳が呟くと、

「ん?あんたムツキ城探してるの?」

薄い水色の髪をした少女が話しかけてきた。

「・・・君は、誰だい?」

「私は玉葉ギョクハ。私もムツキ城に用があるのよ」

「そうなのか!じゃあ、連れて行ってもらえないか?」

「いいけど・・・。今、夜よ?多分、門を開けてもらえないから、旅籠に泊まりましょ」

「いやあ、悪いなあ」

「何を言ってるのよ?あんた自分で部屋借りなさい」

「え、えぇ~?俺、金持ってないんだけど・・・」

「なら、そこらへんで寝なさい。私はお金があるから、上のいい部屋で寝させてもらうわ」

「そ、そんな・・・」

玉葉は、「じゃあね~」と言うと、手を振りながら旅籠に入っていった。

「くそ~・・・。玉葉とかいったかな?少しくらいおごってくれてもいいじゃないか・・・」

そう呟き、芳は仕方なく、寝れる場所を探し始めた。

しかし、今は冬。いくら鍛えていて頭の悪い芳でも、外で寝れるわけはなかった。

橋の下でも寝れるか試し、厠でも寝れるか試してみたが、どこも寝れはしなかった。

それから少しして、芳はある場所を思いつき、

「ここなら寝れるな」

そう呟くと、芳は眠りについた。


翌日、玉葉の大声で目が覚めたのは、また次回にしよう。

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