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iDENTITY RAISOND’ETRE 第二部 ~聖櫃の行方~   作者: 来阿頼亜
第5章 理想と幻想のカタストロフィー?
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第1話 DRAGON・KNOWS・The world's(Ⅱ)

 特異点であるアタシが今するべき事。ベルカを追い、聖櫃(アーク)を奪還して、永久心臓の真偽を確かめ記事にまとめ上げる……うん、一つじゃ無かったわね。

 荒廃した街の中で無事にその命を繋ぎとめた人達には申し訳ないけれど、いつまでもここにいても仕方がない。先を目指すことにしたアタシ達は空飛ぶゴンドラを乗り捨て、アンドロメダ銀河役所の宇宙船に同伴する事になった。


「課長サン、いいの?」

「構いません。どのみち我々と貴女達の目的は同じでしょうから」

「同じ?」

「クイーン・ベルカ海賊団に対して捕縛命令が出ている。詳細を語る事は出来ないが、まぁ、そう言う事です」

「捕縛って……んー、まぁ、それもしゃーないか。海賊だもんね。でも、捕縛する前にアタシ達にベルカの身柄を預けてくんない? 用事が済んだら直ぐに引き渡すから」

「新聞屋風情が調子に乗るな。勘違いしている様だから言っておくが、決定権はこちらにある事を忘れるな!」


 相変わらずアタシ達を毛嫌いしているポールは上から目線でアタシ達を見下す物言いだが、アタシも大人のレディなものだから華麗に受け流そうと試みる。


「別に勘違いなんてしてないわよ。それに、新聞屋じゃなくてジャーナリストなの、アタシ達は。そこんトコちゃーんと御理解頂けますかしら、お役所サマ? ごめんあさーせ」

「その減らず口がいつまで叩けるか見物だな」

「減らず口はお互い様じゃない? アタシ達の武器であるペンの鋭い先端は、アンタ達が持ってる権力って名の薄っぺらーい盾なんか簡単に突き破るわよぉ?」

「この……」

「もういいだろうポール、お前の負けだ。このお嬢さんに口で勝とうなんて無理な話だ」


 あっさりと引き下がったのでちょび拍子抜けした感じだけど、さすがに課長ともなると話が分かるものだ。納得いかない様子のポールは、こちらを睨みつけながら渋々とシャトルの操縦席へと姿を消していった。


「部下の無礼を許してやって下さい。我々とてジャーナリストであるあなた方を敵に回す事は本意ではありません。しかしながら、民間人でもあるあなた方の手を借りる事も本意ではありません。特にポールは使命感の強い男ですから、その事を快く思っていないのでしょう」


 銀河の人々を守る立場にある彼等からすれば、アタシ達は守るべき対象なのだ。それが例え嫌なヤツであろうと。つくづく難儀な職業よね、お役所って。


「何だか面倒臭いヤツね。で、レイア、このまま一気に至聖宮まで行くんでしょ?」

「そうねぇ……みんなはどう思う?」


 アタシの一存で決める訳にはいかず、全員の意見を聞いてみる事にした。ミリューやジェフはともかく、シン達パルティクラールのメンバーなら何か妙案があるかも知れない。

 正直な所を言うならば、アタシは迷っているのだ。いや、迷っていると言うよりは何かを恐れているのかも知れない。

 ベルカを追う事が聖櫃(アーク)に繋がる事は間違いない。だけど、そこに辿り着いてしまってはいけないような予感がしてならないのだ。非科学的な得体の知れない何かがアタシに危険を知らせている。足を踏み入れてはいけない危険区域(デンジャーゾーン)、だけど、それでも行かなくちゃならない未開(フロン)(ティア)。背中を押してくれる誰かの言葉……アタシはソレを望んでいるのかも知れない。


「それなんだが、先程ボナンザからのメールを受け取ってね。これを見てくれ」


 その声はアタシの背中を押してくれるのか甚だ疑問だったけど、モバイル・プロジェクターを起動させながら話すシンが壁にメールの内容を投影させた。そこには文章と共に一人の男性の画像が添付されていた。少し変わった形状のカメラを携え、右目を隠した黒髪のイケメンに見覚えのないアタシとクリスは共に腕を組んで首を斜め四十五度に傾げるが、ケイトとタケルの反応は違っていた。


「シンさん、何で『 彼』が……?」

「何でピカちゃんが『 彼』を探せ、なんて言うの?」


 文面には『 ケイを探して』とだけ書かれていた。


「理由は分からないけど、ケイがここに来ているみたいだね……」

「そんな事有り得ないよっ! だってケイは……」

「タケル、君の言いたい事は解る。だけど、ボナンザの情報はいつだって正確無比だ」


 シンの言葉にケイトとタケルは無理矢理にでも納得せざるを得なかった。それは二人の表情が物語っている。二人が納得していない理由は分からないが、この映像の『 ケイ』とかいう男が何かしらの鍵を握っているのだろう。

 ケイ……その名前には全くもって覚えはないのだが、何故か懐かしく思えるのは気のせいだろうか。


「んで、このケイってのは何者なワケ?」

「僕達と同じ、パルティクラールのメンバーだよ」


 映像を親指で指しながら言うクリスの問いに返した答えは予想通りだった。だが、先程のケイトとタケルのリアクションを見る限り、問題はそれだけで片付けられる事態ではなさそうに思える。


「それくらいはさすがにワタシでも容易に想像できるわ、バカにしないでよね。そうじゃなくって……そのケイってのもピカちゃんみたいに裏の世界の住人なのかって事よ」


 おそらくコイツ……シンは裏の世界に精通している。コイツは敏腕美人ジャーナリスト(誰も言わないから自分で言うけど)であるアタシが知り得ない情報を掴んでくるくらいなのだから。


「ケイはボク達と同じジャーナリストだよ。ま、彼はフリー・カメラマンを自称していたけどね。昔、編集長とも仕事をした事があるんだよ」

「あの昼行燈と? 何だかロクでもない感がハンパないわね」

「そーゆーアンタも十分ろくでなしよ、クリス。まぁ、アタシも人の事は言えないけどね。んで、コイツはどこに居るの? 探さなきゃなんないんでしょ?」


 ピカちゃんからのミッションに意味があるのか無いのか……手掛かりが無い以上、それに乗っかるしかない。しかし、返ってきた答えはアタシ達に絶望を感じさせるには十分すぎる言葉だった。


「ケイは……二年前から行方不明なんだ。ある事件を追っている最中に突然連絡が途絶えてしまってね。おそらくは……」


 そう言ってシンは双子の様子を窺った。二人は視線を地に落としたまま微動だにしなかった。

 行方不明とシンは言ったが、それだけで済む話でも無さそうに思えたアタシは更に突っ込んで聞いてみる事にした。


「ただの行方不明って訳じゃ無いんでしょ? アンタ……頭良いくせして隠し事が下手なのよね。そのケイって人、もしかして……」

「ケイは死んでないっ!」


 アタシの言葉を否定したケイトが言葉尻を遮った。しかし、その言葉はケイ氏が何らかのトラブルに巻き込まれた事を確信させるには十分だった。

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