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iDENTITY RAISOND’ETRE 第二部 ~聖櫃の行方~   作者: 来阿頼亜
第3章 ディオスクロイは世界を救う?
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第1話 Gender・Chivalrous・THIRF(Ⅳ)

 クリスの被害妄想は記憶のブラックホールの彼方へと投げ捨てよう。

 ミスターを筆頭として編集長とシン、そしてピカちゃんとキールとメイン……じゃなかった、ケイトとタケルの姉弟もパルティクラールの一員だという事実を突き付けられたアタシとクリスは、これから何を信じればいいのか解らなくなってしまった。おそらく……あくまでもおそらくだが、クリスがそれを一番に感じている事だろう。信頼しているかどうかは知らないが、パートナーに隠し事をされていたのだ。今後の仕事に支障をきたさなければ良いのだが。


「クリス……隠し事をされた事に関してはアタシも同情するわ。アタシだってアストに同じような事をされたらたまったモンじゃないし。つーか、同僚はおろか上司にまで隠し事されてたっつーのはアタシも同じ立場だし。んで、この落とし前はどうつけてくれんの?」


 シンは相も変わらず平静を崩さず、口角を上げた口元はこちらを挑発しているかのようにさえ見える。瓶底メガネの奥にある目はおそらくニタニタと笑っているに違いない。腹立つわー。


「どうもこうも……ボクは全てを話したよ。ボク達を信用するかしないかは君達次第だ。でも、今はボク達を信用して貰うしかない、いや、信用して欲しい。少なくともボク達は君達の敵じゃない」


 肝心な事を話さないコイツの一言一句が信用ならない。こうなりゃ核心を突くしかないか。


「敵じゃないってんなら、パルティクラールっていう組織が何のために作られた組織なのか話して貰えるかしら?」

「残念ながらそれはボクにも分からない。なにせあのミスターが作り上げた組織だからね。ただ……一つだけ言えるのは、パルティクラールはJ・D・Uに対抗すべく立ち上げられた組織だと言う事だ」


 その言葉を聞いた瞬間、アタシの体温は幾らか上昇しただろう。体内の血が加速度を増して駆け巡り、心臓の鼓動が(うるさ)いくらいにビートを刻んでいった。

 J・D・U────ジョン・ドゥ・アンノウン────あの男達の顔が脳裏を()ぎる。DOOM、そして……フェイ。半年前のあの忌まわしき記憶が蘇る。


「眩暈がしそうね……」


 これ以上足を踏み込んではいけない、そうアタシの中のエマージェンシーコールが警鐘を鳴らしている。だけど、それ以上にアタシの中の知的好奇心がその歩みを止めようとしない。自分自身に半ば呆れ、自嘲気味に溜息を吐く。


「……悪い癖ね。シン、パルティクラールへの加入条件は?」

「ちょ、レイア!?」

「悪いわね、クリス。アタシは知りたいの。アタシはアタシが知らない事があるのが嫌なの」


 いくら長い付き合いだからと言っても、アタシのワガママに付き合わせるのは気が引けるというものだ。しかし、長い付き合いだからこそ解ってしまう事もある。


「そうじゃなくて。アンタまでワタシを仲間外れにするつもり? アンタがやるってんならワタシもやるわよ?」


 持つべきものは悪友……か。こうなったからにはトコトン付き合って貰おう。それこそ、銀河の果てまでね。


「つーか、仲間外れとかそういう問題じゃないっつーの。アタシはアタシの心が命ずるままに生きたいだけ。でも、クリス……アンタが居てくれるんなら心強いわ。それとシン。その組織のメンバーは他に誰がいるの?」


 ミスターとの繋がりがあるのはアタシ達だけじゃない事は、ケイトとタケル、そしてピカちゃんがそのメンバーだという事で明白だ。ミスターの人脈の広さがどの程度なのかは不明だが、あの編集長と面識があるのだからかなり広いと推測できる。

 ジャーナリスト集団と謳っておきながらジャーナリスト限定でもない、という事は────いや、まさかね。考え過ぎだわ。


「ボク達以外のメンバーについては実はボクもよく知らないんだ。殆どがミスターの人選によるものだからね。だから、パルティクラールへの加入条件も知らないんだ」

「じゃあ、シンはどうやって加入したワケ?」

「メールが来たんだよ。ミスターから直々にね」


 昼行灯はどうやら編集長だけでは無いようだ。

 ミスター……アタシはどうにもミスターの事が信用ならない。そもそも顔も知らない相手をどう信用しろってのよ。しかしながら、ミスターがもたらす情報はほぼ正確であり、信用せざるを得ない……ジャーナリストとしては。だけど一個人としては、話は別でありアタシの中ではミスターは要注意人物リスト入りなのだ。だけど、今はそれすらも頼らなければならない。聖櫃(アーク)を……アストを取り返すためなら、今はなりふり構ってなんかいられない。


「分かったわ。パルティクラールへの加入は一旦保留するわ。でも、その組織を知ってしまったからには知らぬ存ぜぬは通用しないし、楽観視も出来ない。その事だけは覚えておいて」

「肝に銘じておくよ」


 パルティクラール……信用するには危うい謎の組織ではあるが、今はシン達を信用するしかない。アタシはクリスに目配せして合図を送った。サインをキャッチしたクリスもアタシに目配せを返してくる。やっぱ、持つべきものは悪友だわ。


「さて、と。それじゃ、シン。そろそろ行きましょ? アイツらを追うための手は打ってあるんでしょ? 宇宙船? 飛行船? それともエアカー? エアバイクは勘弁してよ?」

「ゴンドラだ」

「……は?」


 聞き間違えたかしら。空を駆ける海賊船を追うために……ゴンドラ? あ、ドラゴンの事?


「ちょっと、シンってば、なに業界用語使ってんのよ? ゴンドラってつまりドラゴンの事でしょ? なになに~? ドラゴンの背に乗って追いかけるってどんなファンタジーよ、それ~?」


 肘でツンツンとシンの肩を(つつ)くが、シンはおろかケイトとタケルは表情を崩さない。


「レイアさん、ゴンドラです」

「ドラゴンではありません。そもそも、そんな非科学的なものが存在する訳無いじゃないですか」


 レビ、パイちゃん、思いっきり貴方達の存在を否定されてるわよ。

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