序章
あなたは知っているだろうか。
地球とまったく同じ環境下にある地球の影となる世界を。その世界には地球に生物の分だけの生物たちが存在し、それは同じ魂を共有しているのだとしたら、あなたはどう思いますか。いや、本来ならば知ることのない情報であり、誰もが信じられるはずがないだろう。だが、これらはすべてが真実であり事実なのだ。
今から約八年ほど前、たった二人の幼い子供たちは偶然と成り行きから異世界へと導かれた。そこで子供たちは現実を見る。地球とは異なる存在でありながら、深く繋がりのある世界ステイシア。異界の存在である子供たちには、その世界の者には持つことのない不思議な力が宿った。一人は自ら光るとされる魔石の幻の光を見ることができる力。一人はあらゆる動植物の『声』を聞き、対話する力。
子供たちはその力を使い、さまざまな困難を乗り越え、異世界ステイシアの危機を救ったという。しかし、ステイシアの者たちはその事実を知らないのだ。ステイシアに滅びの危機があったことも、そして救われたことも。この事実は一部の者にしか知らない出来事で、ひた隠しにされたものだったのだという。
あなたは、そんな子供たちを可哀想だと思いますか。それとも、そういうものだと簡潔してしまいますか。
しかし、まだこの話は終わっていない。そう、すべての真実は未だに誰にも知られず、闇に葬られようとしている。なぜ子供たちが異世界に来ることになったのか。なぜ異世界に来る者が必要だったのか。なぜ、子供たちでなければならなかったのか。真実は未だに知られていないのだ。そして今、再び二人の運命の歯車がゆっくりと動き出す……。