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カスタムソルジャー  作者: バームクーヘン
第1章 槍騎士覚醒
7/25

第7話 都大会、開幕

ヤマトとキリュウの対決から一ヶ月が経った。


あれからヤマトはカジオやゴン太郎達と一緒に特訓したり、市外のCSセンターに行ったりして強くなろうとしていた。


申し込みも何とか間に合い、今日がその大会の日だった。


朝食を食べていると、姉がヤマトに話し掛けて来た。


「そういやアンタ、今年のトーキョー都大会に出るんだって?」


「うん」


「そうか・・・自信はあるのか?」


父親が尋ねると、ヤマトは躊躇いながら答えた。



「えっと、多分」


「もう・・・この子は引っ込み思案だから、心配だわ」


「まあまあ、ヤマトが大人しいのはこの子が優しい証拠だよ」


心配する母親を父が宥める。

ヤマトは自分のことを話されるのが苦手なので体を縮こませる。



「ほら、さっさと出ないと遅刻するわよ!」


姉に促され、ヤマトは慌てて家を出る。

念のため荷物を確認し、ドアを開ける。


「行ってきまーす!」





「おっ、来たなヤマト!」


ゴン太郎が手を振ってヤマトを呼ぶ。

ヤマトは皆の元へ駆け寄った。


「アムは今年も出ないんだね」


「あんまり大会には興味ないのよね」


アムはそう答えると、会場の入口を見る。


「さぁ、中に入りましょう!」


ヤマト達は会場に向かった。

カジオとゴン太郎は久しぶりの大会に舞い上がり、ヤマトは初めての大会に緊張する。



そんなヤマト達の後ろに、黒いパーカーの少女がいた。

少女はヤマトの一挙一動を観察し、気付かれないように後を追った。




開会式が終わり、いよいよ大会が始まった。

何十台ものGキューブが地面から現れ、指定された選手からファイトを始める。


ヤマト達もそれぞれの戦いに専念する。


まず一回戦。

ヤマトやゴン太郎は勝ち進んだが、カジオは真っ先に負けてしまった。


続く二回戦。

今度はネジスケとパナスケ、そしてラフレが敗退してしまった。


そして三回戦では・・・



「行け!スペリオルアクション!」


スペリオルアクション《ダブルボール》


ヤマトの対戦相手のガンマがハンドガンからオレンジ色のエネルギー弾が二つ発射される。


「必殺アクション!」


スペリオルアクション《ストームスピア》


サンソルジャーの放ったストームスピアが、二つのエネルギー弾を貫通してガンマに直撃した。


ガンマは地面を転げ回り、ダウンフェイズになる。


「ああ・・・」


対戦相手の少年は、ガックシと肩を落とす。

ヤマトは安堵の表情を浮かべた。


全国大会への切符を手に入れるのは都大会優勝者のみ。

そのためには、全てのファイトに勝たなければならない。


「僕なんかがいきなり優勝出来るなんてないだろうけど・・・」


それでも、強くなれると言ってくれたキリュウの為に。そして、弱虫の自分を変えるために。



「もっともっと、強くならないと」


もっともっと、もっと強く。

更なる勝利を、ヤマトは求めた。




「もう次で十回戦かぁ」


ヤマトは試合会場に続く通路でトーナメント表を見ていた。


今日の試合も残り少なくなり、明日の決勝戦を除けばほとんどのファイトが終わったことになる。


「僕なんかがここまで勝ち抜いて来たなんて・・・何だか、嘘みたい」


「でも、事実よ」



突然、ヤマトの独り言に誰かが答えた。

ヤマトは驚いて振り向く。

そこには、黒いパーカーを被った少女がいた。


ヤマトは少女に尋ねる。


「あの、誰、ですか?」


「貴方は強い。それをもっと誇りに思うべきよ」


ヤマトの問いには答えず、少女はヤマトの前に立つ。


少女は女の子にしては中々高い背をしているため、ヤマトの傍にいると尚更身長差が強調される。


ヤマトは少女を見上げた。

顔はよく見えないが、燃えるような深紅の瞳がヤマトの目に深く刻まれる。

どうしてこんなに気になるのか、ヤマトには分からなかった。



次の瞬間、少女の瞳が一瞬虹色に輝いたように見えた。

そして、ヤマトもほんの一瞬、自分の瞳が輝くのを感じた。


「!?」


ヤマトは思わず目を押さえた。

落ち着いて目を開くと、目に異常は無い。



「やっぱり・・・」


少女は小さな声で呟く。

ヤマトは「え?」と聞き返した。


少女は何も答えず、ただ一瞬フッと笑うと通路を歩き始めた。

そして、ヤマトに話し掛ける。


「優勝、出来るといいわね」


「あ、りがとうございます」


ヤマトは少女の後ろ姿を眺めた。

ヤマトの脳裏から、少女の深紅の瞳が消えることは無かった。




準決勝の時が来た。

ヤマトはGキューブの前に立つ。


向こう側にはゴン太郎が立っていた。

ヤマトを見てフッと笑う。


「準決勝でお前とか・・・・・お前に負けて以来、実はリベンジしたいと考えていた」


「うん。僕も・・・ゴン太郎とは、中々真剣勝負の機会が無かったしね」


「こう言うと負け惜しみに聞こえるだろうが、俺はあの時手を抜いていた」


「分かってる。油断してたもんね」


二人は一ヶ月前のことを思い出して自然と笑みをこぼす。

話が終わると、二人は真剣な顔で自分のロボを取り出す。


「行くぞ、ガガコング!」

「サンソルジャー!」


ジャングルジオラマに降り立ったサンソルジャーは、真っ直ぐにガガコングに向かった。

ガガコングは突き出される槍をかわし、軽い身のこなしで木をひょいひょいと登っていく。


「逃がさない!」


サンソルジャーもジャンプを駆使して木の枝にたどり着く。

何本かの木を隔てた先にガガコングがいた。


ガガコングは腰につけた大型バズーカを取り出し、照準をサンソルジャーに合わせる。


「新兵器を身につけた俺様達に勝てるかな?」


そう言って、ガガコングはバズーカを発射し始めた。


サンソルジャーは枝へ枝へ逃げて回避する。

砲弾が当たった枝は爆発で消し飛んでいる。


砲弾をかい潜り、ついにガガコングに接近する。


「おらああああああ」


しかしガガコングはバズーカを思いっ切り振り、サンソルジャーを叩き飛ばす。

サンソルジャーは地面に叩き付けられる。



「オラオラ!休ませないぜ!!」


ガガコングは枝の上を移動しながら発砲する。

サンソルジャーは何とか木の陰に隠れる。


しかし、ここにもすぐやって来るだろう。


(どうしよう。枝の上じゃないとガガコングとはまともに戦えない。でも、あの不安定な足場じゃ・・・)


あの限られた足場では、ガガコングを翻弄して戦うことができない。

それでは、ガガコングのパワーに押し負けてしまうだろう。


「見つけたぞ!」


「しまった!」


ヤマトが考えている間に、ガガコングは既に上の枝に立っていた。



「終わりだあああああ!!」


スペリオルアクション《パワーボム》


強力なエネルギー弾が何発もサンソルジャーを襲う。

盾で防ぎきることは出来ないだろう。


「ここまで・・・もっと、もっと強くならなきゃいけないのに!」


ヤマトが叫んだ瞬間、ヤマトのPCDが輝き出した。



《スターブースト》


エネルギー弾が着弾し、サンソルジャーの周囲が爆煙に包まれる。


「やったか・・・?」


ゴン太郎が呟いた瞬間、煙の中から何かが飛び出して来た。

咄嗟に構えたバズーカに槍が突き刺さり、バズーカは爆発した。


ゴン太郎は飛び出した者の姿に驚いた。



「黄金の・・・・・サンソルジャー?」


サンソルジャーの全身は、眩しい程の金色に輝いていた。


「これがサンソルジャーの、スターブースト」


ヤマトもその姿に驚く。

そして、今なら勝てることを悟る。


「ゴン太郎、行くよ!」


「フッ、来い!」


武器を失ったガガコングは素手でサンソルジャーに挑む。


繰り出された拳を一瞬でかわして背後に回り込み、槍で突き飛ばす。

突き飛ばされた先に回り込み、槍で叩き落とし、地面に叩き付けられて浮き上がったガガコングを盾でアッパーする。

浮き上がったガガコングの正面までジャンプで移動し、槍を突き刺す。


ガガコングのボディに穴が空き、サンソルジャーは槍を振ってガガコングを木に投げ飛ばした。

木に叩き付けられたガガコングはグッタリし、全身から光を弾かせた。



「ダウンフェイズ、か」


ゴン太郎はガガコングを回収し、ヤマトに話し掛けた。


「まさか、あの土壇場でスターブーストに目覚めるとはな」


「うん、僕も何が何だか・・・」


戸惑うヤマトの肩を、ゴン太郎がポンポンと叩く。


「明日の決勝、頑張れよ」


「うん!」


ヤマトは笑顔で答え、ゴン太郎と握手を交わした。




「・・・・・」


黒いパーカーの少女は客席からこの様子を伺っていた。


「まだ決まったわけじゃない・・・・・でも、もしかしたら」

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