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カスタムソルジャー  作者: バームクーヘン
第1章 槍騎士覚醒
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第6話 漆黒の騎士

「・・・・・」


CSセンターでのファイトから三日、ヤマトはカジオとゴン太郎、そしてネジスケとパナスケと一緒に河川敷で待ち合わせをしていた。


アムの兄、キリュウの予定がようやく空いたらしい。

そして、ヤマトと戦ってくれるという。



「しかし、今だに信じられんな・・・まさか、アムの兄があのキリュウさんだとは」


「日本一ですー」

「世界ではベスト8ー」


ゴン太郎が呟くと、ネジスケとパナスケが補足する。


そう、アムの兄であるキリュウは日本一のカスタムファイターであり世界大会でもベスト8に食い込む腕を持っている。


「でもそんなキリュウさんと知り合いなんて、ヤマトが羨ましいよ」


カジオがヤマトに話し掛ける。


「昔は、キリュウさんも普通だったからね・・・でも、今じゃ僕も憧れてるよ」


ヤマトは昔の事を思い出していた。

自分は今以上に泣き虫で臆病で、よくアムに泣かされたものだ。


キリュウはそんなアムを叱ったり、たまには一緒になってヤマトをからかったり・・・ヤマトにとって、憧れの兄貴分だった。




その時、アムが駆け寄って来た。

斜面を下って皆の傍まで走って来る。


「ごめーん、遅れちゃった」


「お前が遅れてどうする」


ゴン太郎がアムに文句を言うと、アムは視線を逸らす。



「それより、ほら、兄さんが来たわよ」


そう言ってある方向を指差した。

見ると、確かにそこから人が歩いて来ている。


「あ、あれ・・・」

「間違いないよー」


ネジスケとパナスケが期待で胸を踊らせる。



男は背の高い身長に長い黄金の髪を真っ直ぐ伸ばしている。

キリッとした目と整った顔は見るもの全ての目を引く魅力を秘めている。


「・・・久しぶりだな、ヤマト」


しかし、その声は凛々しくもあるが同時に穏やかな優しさも醸し出していた。


ヤマトはキリュウの中身が全く変わっていないことに安心した。



「お久しぶりです、キリュウさん」


「ああ、久しぶりだ。俺はお前がカスタムソルジャーを始めたという話を聞いてから、ずっと戦うのを楽しみにしていたよ」


「えっ?」


ヤマトは耳を疑った。キリュウさんが僕と戦うのを楽しみに?


混乱しているヤマトにキリュウは話し掛ける。


「お前が昔、たまにカスタムソルジャーを動かしているのを見て、筋が良いことを覚えていてな。だから、お前はこれから更に伸びると思っている」


現に、ずっと勝利を収めているんだろう?とキリュウは尋ねた。

ヤマトはコクリと頷く。


「だから今日は・・・・・お前に、敗北を教えに来た」


そう言って自分の機体を取り出した瞬間、キリュウの空気が変わったことをヤマトは感じた。

そして、ヤマトも自分の機体を取り出す。


そして、二人のファイトが始まった。



「サンソルジャー!」

「ブラックナイト!」


白と黒の戦士が遺跡ジオラマという戦場に降り立つ。


ブラックナイトは全身に黒い装甲を纏い、同じく黒い剣と盾を持ったロボだ。


日本一になった時にキリュウがカスタムソルジャー制作会社のテロメアカンパニー(通称TC社)から譲り受けたワンオフ機である。



「ヤマト、行くぞ!」


「はい!」


ブラックナイトは剣を振るう。

サンソルジャーはそれを何回か盾で防ぎ、反撃に槍を突き出す。


ブラックナイトは最小限の動きで槍をかわし、蹴りでサンソルジャーを押し返す。


サンソルジャーは休まず攻撃を仕掛ける。

向かって来る槍を剣で弾き、五回目の突きを姿勢を低くしながらのダッシュで避ける。

ダッシュの勢いを利用した突きでサンソルジャーの胴体を傷付ける。


「まだだ、サンソルジャー!」


ヤマトは果敢に攻めていく。

ブラックナイトは、突き出される槍に盾でタックルするかのような勢いでぶつかる。

サンソルジャーは押し負け、バランスを崩す。


その隙にブラックナイトはサンソルジャーの盾を剣で弾き飛ばした。


「ああっ!?」


ヤマトは声を挙げる。

盾は宙を飛び、ジオラマの木に引っ掛かった。


「ああ、盾が無くなった!」


カジオがヤマトの不利を嘆く。



ヤマトはそれでも諦めず、キリュウに挑む。


サンソルジャーはまた槍を突き出す。

かなりの速度で槍を繰り出しているはずだが、何故か動きが読まれて避けられる。


「カスタムソルジャーにはそれぞれ操作に合った速度というものがある」


キリュウが話を始めた。

ゴン太郎は頷く。


「うむ。パワータイプならゆっくり、バランスなら程よいタイミングで操作。そうした方が、返って手際よく無駄なく動かせる」


「じゃあ、ヤマトはサンソルジャーにピッタリの操作が出来ていないの?」


カジオが呟くと、アムが答える。


「多分、まだサンソルジャーのスペックに着いていけてないのね」



「それでも、僕は・・・」


ヤマトは落ち着いて操作する。


ブラックナイトは飛び掛かるサンソルジャーの槍を剣で受け流し、背後から間髪入れず襲って来る槍をかわすとサンソルジャーを切り付ける。






ヤマト達が対戦しているGキューブから少し離れた木の陰に、黒いパーカーの少女がいた。


ヤマト達の様子を伺い、先程の会話を思い出す。


「違う・・・あれは、」


少女は自分で納得すると、どこかへ去って行った。




「そういえば、お前達はスターブーストの話から連想して俺に行き着いたらしいな」


キリュウが口を開く。


それまでヤマトは果敢に攻め続けたが、キリュウのブラックナイトは常に上を行く。


「はい・・・」


カジオがキリュウの問いに答える。

カジオの返答を聞くと、キリュウはヤマトに視線を移す。


「折角だ、見せてやろう」



《スターブースト》


キリュウのPCDから電子音声が流れ、次の瞬間ブラックナイトの体が暗黒に輝く。


その威圧感、ヤマトのサンソルジャーが気圧される。


「くっ、スペリオルアクション!」


スペリオルアクション《ストームスピア》


サンソルジャーはストームスピアを放ち、ブラックナイトを倒さんとする。

ブラックナイトは盾を構え、大地を踏み締める。


ストームスピアが盾にぶつかり、ザザザザと音と煙を立てながら押される。


ブラックナイトは遺跡にぶつかり、そこからモクモクと煙があがる。



「た、倒した?」


「分からん・・・」


カジオとゴン太郎は息を飲む。

その瞬間、ブラックナイトが煙の中から飛び出して来た。

ダメージはあまりない。



「そ、そんな」


ヤマトは必殺技が通用しなかったことにショックを受ける。


ブラックナイトは高速でサンソルジャーに接近し、直前でサンソルジャーを飛び越える。

剣の持ち手でサンソルジャーを突き飛ばし、バランスの崩れたサンソルジャーを何回も切り付けた。


サンソルジャーは槍で防御をしようとするも、ブラックナイトは槍ごとサンソルジャーを蹴っ飛ばす。



「そろそろ終わりにしようか」


スペリオルアクション《ナイトナイトメア》


ブラックナイトが剣を振るうとサンソルジャーの周りを暗黒の結界が覆い、やがて黒い半球体となる。


「こ、これは・・・」


ヤマトは驚いた。

これではサンソルジャーの様子が見えない。


急いで脱出しなくては、とPCDを操作した瞬間、ブラックナイトが剣を振るい始めた。



すると、剣が振るわれる度に何かが切り裂かれる音がした。


サンソルジャーも操作しているのに出て来ない。


「まさか、ブラックナイトが剣を振れば結界の中に斬撃が起こるのか!?」


「そうだ」


ゴン太郎の推測を、キリュウは肯定する。


そして、ブラックナイトが剣を振りかぶる。

剣に黒いエネルギーが集まり、刃が巨大な黒いエネルギーで形成される。


そして、とどめと言わんばかりに力強く一閃を振るう。


結界が真っ二つに裂かれ、衝撃で辺りに爆風が広がる。



「サンソルジャー!!」


ヤマトは自分の愛機の安否を確かめる。

煙が晴れ、サンソルジャーの姿が見えた。


周囲の木や岩はズタズタに切り裂かれ、サンソルジャーはうつぶせに倒れていた。

既にダウンフェイズしているようだ。


「・・・最後の一撃、わざと外しましたか?」


「手は抜いていない。あの時、既にダウンフェイズしていたからな」


ヤマトは落ち込んだ。

分かってはいたが、ここまで実力に差があるとは・・・


落ち込むヤマトに、キリュウが声を掛ける。


「まだまだ甘い所はあるが・・・俺が思っていた以上に、お前は強いよ」


キリュウの言葉にヤマトはポカンとする。

アムはウンウンと頷き、カジオやゴン太郎達もヤマトを励ます。


「もっと場数を踏むことだ・・・・・そうだ、来月のトーキョー都大会に出るといい」


キリュウはヤマトにある提案をした。


トーキョー都大会とは年に一度の大会で、優勝すれば全国大会に出場することが出来る。


「トーキョー都大会・・・僕、出ます!」


ヤマトはキリュウに約束した。


もっと、もっと強くなるために・・・・・

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