第4話 星の可能性
「え、CSセンター?」
ヤマトが聞き返すと、ゴン太郎が頷いた。
「ああ、お前も知っているだろう?誰でも使用できるカスタムソルジャー専用のステーション、CSセンターだ」
CSセンターとは言わば市民体育館のようなもので、誰でもそこでカスタムバトルが出来る施設だ。
カジオやアムもよく通っているらしい。
「お前も毎日河川敷で俺達とファイトしてばかりじゃ飽きるだろう」
ヤマトがサンソルジャーを手にして一週間が経った。
あれ以来、ゴン太郎達は頻繁にヤマト達とファイトをするようになった。
どうしようか悩んでいると、話を聞いていたカジオが割り込んで来た。
「いいね!梅雨も明けた事だし、気晴らしにパーッといこうよ!」
「そうね、いいんじゃない?」
アムも賛成し、三人の視線がヤマトに集まる。
ヤマトは緊張しながら答えた。
「じ、じゃあ、行こうかな」
そして放課後、ヤマト達四人はCSセンターにやって来た。
自動ドアを通って中に入る。
「空いてそうなのは・・・第4会場か」
案内図とロビーの人の行き交いを見て、ゴン太郎は空いてそうな場所を選ぶ。
ドアを開けて、中に入る。
「うわあ・・・・・」
そこには十何台もあるGキューブと、ファイトをする人達がいた。
ヤマトは初めて見る景色に感銘し、辺りを見渡す。
「さ、早く始めよう!」
カジオが空いているGキューブを指差し、ヤマト達はそこへ向かう。
「じゃあ、まずは俺からだ」
「ようし、行くぞ!」
カジオとゴン太郎が向かい合い、ファイトの準備を始める。
そしてファイトが始まろうとした瞬間、
「オーッホッホッホッ」
女の甲高い笑い声が聞こえた。
ヤマト達の視線がそちらに移る。
「うう・・・」
女の子が泣きながらGキューブの前から走り去って行く。
その手には女の子のロボの残骸が握られていた。
対戦相手の少女は満足げにほくそ笑んだ。
「あれは、鳴風私立中のラフレじゃねえか」
「ええ、本当に!?」
ゴン太郎の発言にカジオが驚く。
ヤマトはゴン太郎に尋ねた。
「誰なの?」
「この町の町長の孫娘で、金持ちのお嬢さんだ。トーキョー地区大会で何度か戦ったことがある」
ラフレはウェーブの掛かった長い金髪を掻き分け、優雅に笑う。
そして、何気なく辺りを見渡す。
その時、ラフレの視界にヤマトが映り込んだ。
ラフレは衝撃を受け、固まった。
即座にヤマト達を指差す。
「貴方達、こっちに来なさい!」
「お、お嬢様に呼ばれた!」
カジオは興奮し、息が荒くなる。
ゴン太郎がカジオを押さえつつ四人をラフレのいるGキューブに向かった。
改めてラフレはヤマトを見つめる。
低い身長に、よく女の子に間違えられる童顔。
ラフレは歓喜の溜め息を漏らす。
「かわいい・・・・・貴方、身長は?」
「・・・130台です」
ヤマトはラフレのかわいい物を見る目に落ち込みながら答える。
「135って素直に言えば良いのに」
「コンプレックスなんだから言わない方がいいよ」
「お前、そんな低かったのか!?」
アム達の言葉がグサグサと突き刺さる。ヤマトは思わず涙目になる。
「私、貴方が気に入りましたわ。ねえ、私とお付き合いしない?」
ラフレが目をキラキラ輝かせながら提案する。
ヤマトが困惑していると、アムがムッとしてヤマトの前に出る。
「そういうの、ヤマトが困ってるからやめてほしいんだけど」
「誰、貴女」
アムはラフレを睨み返す。
「そうだよ、お嬢様がヤマトと付き合うなんて間違ってる!だから僕とお付き合いしてください!!」
「お前は黙ってろ」
ゴン太郎はカジオをゲンコツで黙らせる。
そして、ラフレに提案した。
「なあお嬢、せっかくCSセンターにいるんだ。折角だからその件はカスタムバトルで決めないか?」
「ちょっと、何を勝手に」
アムは抗議すると、ゴン太郎はニッと笑って答える。
「問題無い。確かに金に物を言わせたお嬢のカスタムソルジャーは強いが・・・・・ヤマトの敵じゃないな!」
「フフッ面白いですわね。どうかしら、ヤマトさん?」
ラフレが尋ねると、ヤマトは戸惑いながら答えた。
「えっと、その、カスタムバトルが出来るなら・・・戦います」
ラフレはヤマトの返事を聞くと、不敵に笑う。
「ねえゴン太郎、貴方<スターブースト>を知っているかしら?」
ゴン太郎は一瞬キョトンとしたが、頷いた。
「ああ、聞いたことがある。一部の者だけが使えるロボの一時的なパワーアップ・・・スターブースト」
「え、あれって本当だったの?」
カジオが尋ねるとゴン太郎は肯定する。
「まぁ、世界大会に出るような奴らのは技なのかスターブーストなのか分かりづらい、ってのはあるがな」
「私、とうとうスターブーストを使えるようになりましたの」
「え、えええええ!?」
カジオは驚愕のあまり跳び上がる。
ゴン太郎とアムも唖然とする。
周りにいた野次馬達にも、動揺が走る。
ラフレは、驚いた顔のヤマトを見て不敵に微笑んだ。