第23話 かがやけるひのために
「ヤマトおめでとう!」
カジオが拍手でヤマトを迎えた。
キリュウがヤマトに近付き、肩をポンと叩いた。
「流石だな。お前にはいつも驚かされる」
「ありがとうございます」
ヤマトはキリュウに礼を言うと辺りを見渡した。
「あの、アスカは?」
「ああ、あいつならまだ……」
来ていない。と言おうとした所、奥の自動ドアが急に開いた。
一同がドアを見ると、アスカがケースを持ってやって来ていた。
アスカはヤマトの側に寄る。
「勝てたみたいね。おめでとう」
「うん。それで、ブラスター・ウイングなんだけど」
ヤマトがブラスター・ウイングを取り出した。
とりあえず異常がないかメンテナンスしなければならない。
「ええ、分かってるわ。あと……ビームジャベリンも貸して貰えないかしら」
「ビームジャベリン?どうして」
ヤマトは首を傾げた。
機体の整備ならともかくどうしてビームジャベリンまで。確かに一応メンテナンスするつもりだったが取り立ててアスカが気にする必要も無いはずだが………
そうヤマトが思っていると、アスカはニッと笑った。
「ま、ちょっとした小細工よ」
『さあ!いよいよスペシャルマッチも最終戦!これに翼ヤマト選手が勝利すると、チャンピオン戦に駒を進めます!!』
司会のアナウンスが響き渡り、観客の期待も大きくなる。
いよいよ始まる戦いに皆関心を隠せないようだ。
『では登場して貰いましょう!まずは挑戦者、翼ヤマト選手だあぁ!』
歓声と共にヤマトが会場に入る。
一歩一歩確実に、エクレールとの戦いへと近付いている。
しかし、今は目の前の敵のことを考えなければ。
ヤマトは深呼吸して呼吸を整えると、ゆっくりと前を見据えた。
『そしてそれを迎え撃つのが、絶対のスナイパー、ジェネ選手だあああぁ、』
ジェネがアナウンスと共に入場し、階段をひょいひょいと登ってGキューブの前に立つ。
ヤマトと向き合うと、ジェネはヤマトに話しかけた。
「いやゴメンね〜ウチの大将がさー。ホント困った人だよねー」
「………貴方は、あの人を止めようとはしなかったんですか?」
ジェネはバツが悪そうな顔をして頬をポリポリと描く。
「いや、あの人には逆らえなくてさー。その……まぁ仕方ないさ」
「……どんな理由があっても、僕はカスタムソルジャーは好きな人が努力して勝っていくものだと思っています。だから………Gサイトの力だけが勝利の条件になるようなエクレールさんの思想を認められません」
ヤマトの決意を聞くと、ジェネはクスリと笑う。
「じゃ、本気の俺を倒して貰おうか」
二人は自分の機体を取り出し、フィールドに出撃させる。
「ブラスター・ウイング!」
「アシュラジョナサン!」
二体の機体が同時に現代都市ジオラマに降り立つ。
もう時刻は夜だが、フィールドは明るい昼そのものだ。
ジェネの機体のアシュラジョナサンは、鮫の頭に獣の体をした奇妙な機体だ。
その手には大型のスナイパーライフルが握られている。
ブラスター・ウイングがファイト開始と同時にアシュラジョナサンに接近する。
「一気に決めさせてもらいます!」
ブラスター・ウイングはアシュラジョナサンの頭目掛けてビームジャベリンを突き出す。ビームジャベリンがアシュラジョナサンの頭を貫く………………のだが、その瞬間アシュラジョナサンの体が透けて消えてしまった。
「っ、何処に!?」
ブラスター・ウイングは辺りを見渡すもカメラには何も映らない。
ヤマトはGサイトを使ってアシュラジョナサンの居場所を探るものの力に阻まれて見つからない。
「探さないでよ、怖いねー」
ジェネはニヤニヤ笑いながらヤマトを挑発する。
ヤマトは顔をしかめて必死にアシュラジョナサンを探す。
その瞬間、ブラスター・ウイングの体に三発のエネルギー弾が撃ち込まれた。
ブラスター・ウイングは地面に倒れる。
「一体どうやって……」
ヤマトは困惑していた。
同時にあんな別々の角度から狙撃することなど出来るはずがない。
また銃弾が飛んで来る。
今度は全てのエネルギー弾をビームジャベリンで弾く。
「やるね。もうカラクリに気付いたんじゃないの?」
「………」
ヤマトは押し黙る。
確かにもうどんな方法で同時に別の場所から狙撃しているのかは見当が付いた。
ジェネは隠すだけ無駄と悟ったのか、アシュラジョナサンを前に出す。
そこには………
「な、何だありゃ!?」
カジオは思わず跳び上がった。
アシュラジョナサンは、三体に分身していたのだ。
「必殺アクション……ではなさそうだな」
キリュウが呟く。
確かに必殺アクションを使ったような様子はなかった。
アスカが唇に指を添えて考える。
「多分、機体のスキルね。以前TC社に機体の同時操作を想定した試作品が作られてた時期があったから」
ヤマトはブラスター・ウイングの操作をしながら打開策を練る。
(ハイバラさんの時と同じで、機体を個別に操作するのは出来てなさそうだ。やっぱりそんなのは難しいだろうから)
一体を操作している間は他の二体を操作することが出来ない。
だからこそ単調化するとしても三体が同じ動きをするようにしているのだ。
「なら、避けられないことは無い!」
ブラスター・ウイングは縦横無尽に空中を翔け回り、三体のアシュラジョナサンを切り刻んでいく。
「いやいや、普通避けられないって」
ジェネは驚いたものの半分呆れていた。
確かに同時に動き出すアシュラジョナサンの動きは単調になりがちだが、こちらはGサイトを使っているのだ。
絶対に避けられず、確実に相手を仕留める攻撃をしているはずだ。
(でも、当たんないんだよなぁ)
ジェネは心底呆れ果てた。
しかし、同時に自分の心が踊っているのを感じていた。
「やっと楽しくなってきたよ!」
次の瞬間、アシュラジョナサンはスナイパーライフルを投げ捨て、ナイフを取り出した。
「え!?」
ヤマトが驚いた一瞬の隙を突き、アシュラジョナサンが次々とブラスター・ウイングを切り刻む。
そのスピードは今までとは段違いで、とてもスナイパーの動きとは思えない。
「まさか」
「そ。アシュラジョナサンはホントは近接タイプなんだよねー」
遠距離タイプだと見せ掛けていただけで、本当は近接タイプだったのだ。
ジェネはニヤニヤとヤマトを笑う。
「ま、騙し騙されってことで」
アシュラジョナサンがまたブラスター・ウイングに襲い掛かる。
ブラスター・ウイングはビームジャベリンで応戦するも、三体の動きについていけず、どんどん傷が増えていく。
今のアシュラジョナサンは個別に動いている。
正しくは、そう見える。
(Gサイトの力で分身の動きを加速、あるいは遅延させているんだ。そのせいで同時に動くはずの三体の動きにズレが生じて別々に動いているように見えるんだ)
(もしかして、これの仕掛けもばれてる?)
ジェネは不安になる。
ブラスター・ウイングがアシュラジョナサンの攻撃を完璧にかわしつつあるのだ。
種が分かった所で直ぐに避けれるはずは無いのだが………
(まるであの人みたいだ。どんな策をもってしても、倒せない力)
ジェネの脳裏に浮かぶのは、本能的に恐怖を抱いてしまうあの力。
エクレール・テロメアだ。
ブラスター・ウイングは襲い来るアシュラジョナサンのナイフを次々とビームジャベリンで受け流し、力を篭めた一閃で纏めて薙ぎ払う。
アシュラジョナサンが起き上がる前にビームライフルで狙撃し、転倒させる。
「何かヤバそうなんで、決めさせて貰うよ!」
スペリオルアクション《荒波のリヴァイアサン》
三体のアシュラジョナサンが合体し、一匹の巨大な鮫となる。
巨大な津波を背負いながらブラスター・ウイングに襲い掛かる。
「必殺アクション!」
スペリオルアクション《シューティングサン》
ブラスター・ウイングのビームライフルの銃口にオレンジ色のエネルギーが充填し、発射される。
しかし、オレンジ色のエネルギー弾はアシュラジョナサンに飲み込まれてしまう。
「効かないよ!」
ジェネは余裕癪癪といった感じでヤマトを嘲笑う。
だが、ヤマトはフッと微笑んだ。
「そうでも無いんでしょ?」
ブラスター・ウイングはアシュラジョナサンに真正面から突っ込み、その口の中へと入っていった。
「何してんのおおおお!?」
カジオは床を転げ回った。
皆も唖然としてしまう。
が、アスカとキリュウだけはやれやれ、と言った顔をしていた。
「そういうことか」
「ええ。ヤマトもよく気付いたわ」
ジェネは溜息をついてヤマトに話し掛けた。
「まさか、自分から喰われに来るなんてね」
リヴァイアサンは地面にぶつかり、激しい爆発を起こした後に消えていった。
そして再び三体のアシュラジョナサンに戻る。
アシュラジョナサン達の見つめる先には………ブラスター・ウイングが立っていた。
ヤマトはジェネに話し掛ける。
「あの技……攻撃力があるのは津波と牙だけなんでしょう?鮫の中は空洞だから、そこにいれば安心だと思ったんだよ」
「でも、もしかしたら……とは考えなかったの?」
ジェネはヤマトに尋ねる。
ヤマトは瞳を虹色に輝かせながら答えた。
「見えてましたから」
ジェネはやっぱり、と思った。
(こいつは、エクレールさんにそっくりだよ。全然違うけど、そう感じる)
雰囲気も主張も違う二人だが、確かにそう感じる。
こいつには勝てない。ヤマトもエクレールも、そう思わせる雰囲気を出している。
「だからって、負けてあげないけどね!」
アシュラジョナサンは二体の分身を合体させ、鮫の様な姿の剣に変える。
それでブラスター・ウイングに切り掛かる。
ブラスター・ウイングはビームジャベリンで受け止めるも、重さの違いで耐え切れない。
地面に叩き伏せられ、腹部を思い切り斬られる。
地面を転がって吹っ飛んでいく。
「終わりだ!」
アシュラジョナサンはブラスター・ウイングの背後に回り込むて、剣を振り下ろした。
絶体絶命………かと思われた瞬間、ビームジャベリンの片方が射出されてアシュラジョナサンの顔面に突き刺さる。
「は!?」
ジェネは予想外の事態に思わず呆然となる。
その隙を突いて、ブラスター・ウイングは分裂したビームジャベリンを両手クナイのように持つと一気に畳み掛ける。
二つの刃がアシュラジョナサンを切り刻んでいき、アシュラジョナサンが鮫の剣を手放した一瞬を逃さずに蹴り飛ばす。
「そんな改造あり!?」
「今だ、必殺アクション!」
スペリオルアクション《ブレイジングエクスカリバー》
ブラスター・ウイングは両手クナイをクルクル回転させ、炎をフィールド中から集める。
アシュラジョナサンは炎に呑まれて身動きが取れなくなる。
ジェネは諦めたのか肩を降ろした。
ブレイジングエクスカリバーがアシュラジョナサンを切り裂き、アシュラジョナサンは爆散していった。
『きぃまったあああああぁぁぁぁぁ!!!勝者、翼ヤマト!よって、今、チャンピオン戦の開催が決定されましたあぁ!!』
会場がワーッと沸き上がり、たちまち歓声に包まれる。
ブラスター・ウイングがヤマトの肩に乗り、ヤマトは頭を優しく撫でてやる。
そこへジェネが拍手をしながら近寄って来た。
「おめでとー。いや、やっぱ負ける気がしてたんだよ」
「は、はぁ」
ヤマトはどう返したらいいのか分からず苦笑いする。
ジェネはそんなヤマトの背中をバンバン叩く。
「ま、アンタならあの人を倒せるかもね。期待してるよん」
ジェネはそれだけ言うとスキップしながら去って行く。
ヤマトは呆然とそれを見送った。
変な人だったが、操作や戦術は確実だった。
人は見かけによらないものだな、と思った。
ヤマトが振り向くと、カジオ達が駆け寄って来ていた。
ヤマトはアスカと見つめ合うと、互いにそっと微笑んだ。
「一体どういうことですか!」
スーツを着た年配の男がエクレールに文句を言っていた。
大会の運営の重鎮で、何やら揉め事のようだ。
「だからチャンピオン戦を夜にして。私、星空が好きなの」
エクレールは欠伸をしながら命令する。
連れの役員達もこの態度に我慢ならなくなる。
「チャンピオンだからってそんな権限はありません!」
「会場にも都合があるんです!貴女の我が儘など通るとでも……」
「聞けって言ってるのよ」
冷たい、低い声が響いた。
エクレールの瞳が虹色に輝き、その波動を受けた役員達全員の動きが止まった。
エクレールの瞳を見つめ、だらしなく口を開いて呆然と立ち尽くす。
「私は夜が好き。だから試合は夜にする。分かった?」
「はい」
「分かりました」
男達は揃ってその場を去り、エクレールの傍には誰もいなくなった。
エクレールは明日のことを考え、歓喜に震えた。
「いよいよ明日、ヤマト君が私に平伏す時が来る!その時こそ、私のGサイトが究極になる!!」
エクレールのGサイトが発動し、部屋の家具が次々と砕け散る。
エクレールの力に反応し、星が輝きを増した気がした。
「うわあ………」
ヤマトは空を見上げて静かに感動した。
満天の星空が輝いている。
アスカはヤマトの隣に移動すると、そっと原っぱに座り込んだ。
「私達は、この星空に祝福されてこの力を得たのよ」
アスカが空を眺めながら話し出した。
ヤマトはどういうことか尋ねた。
「どうして、Gサイトが宇宙と関係あると思うの?」
「………理由は無いの。ただ、何となくそんな気がして……ヤマトは?」
アスカはヤマトがどう思うのか尋ねる。
「信じるよ。確かに何か、そんな気がする」
二人は無言で星を眺める。
何を話しても明日のファイトのことを話にしてしまう気がする。
それでも、ヤマトはアスカに尋ねた。
「アスカはどうやって、Gサイトを発動させたの?」
人類で初めてGサイトに目覚めたアスカが、どのような経緯でそうなったのか知りたいのだろう。
同時に、それは姉との思い出を語ることになる。
「もう七年前になるわね………」
七年前、私とお姉ちゃんは本当に仲が良かった。
最初から仲良かったけど、カスタムソルジャーが販売されてからは私達はずっと遊ぶようになった。
二人で何時間も何日も、ずっとカスタムソルジャーで遊んでた。
その時は私達は普通のファイターで、大して強い訳でもなかったけど、本当に楽しかった。
あの日が来るまでは………
「お父様!お願い!」
「駄目だ!」
エクレールの頼みを父親は頑として断る。
アスカはエクレールの後ろに隠れてエクレールのドレスの裾をギュッと握る。
「どうして!アスカは本当にカスタムソルジャーが大好きなの!だからカスタムソルジャー工学を学ばせてあげてもいいじゃない!!」
「私の後を継ぐのは長男がやってくれる。アスカには他の道を進んでもらわねばならん」
「そんなの…アスカには関係無いじゃない!」
エクレールが引き下がりそうに無いので、父親はある提案をした。
「くっ!」
エクレールは必死にPCDを操作する。
エクレールの機体のドゥルーがゆっくりと起き上がる。
父親が出してきた条件とは、エクレールがカスタムファイトで自分に勝ったらアスカの留学を許すというものだった。
「お姉ちゃん……」
アスカは不安気に涙を浮かべながらエクレールに縋るような視線を向ける。
エクレールはそれに笑顔で応える。
「大丈夫、お姉ちゃん負けないからね」
エクレールはそう言うも、状況は絶望的だった。
エクレールはまだ一度も攻撃を当てられていないのだから。
「終わりだ!」
父親のカスタムソルジャーが迫る。
エクレールはもう駄目か、と思った。
「お姉ちゃん、右だよ」
アスカが突然呟いた。
エクレールは反射的にアスカの言う通りに動く。
結果的に攻撃をかわすことができ、何とか生きながらえる。
「お姉ちゃん………何だか、見えるの。何か見える」
アスカが何を言っているのか分からず、エクレールは混乱する。
アスカの瞳が虹色に輝いているのに気がついたのはその時だった。
「よそ見をするな」
父親のカスタムソルジャーが再び仕掛けて来る。
追い詰められたエクレールは必死に願った。
(嫌だ。負けたくない。負けたくない。負けたくない)
何度も何度も強く祈ったその瞬間
エクレールは、自分の瞳に何かが宿ったのを感じた。
それから、父親の攻撃は一発も当たらなくなった。
反対に、エクレールの攻撃はことごとく命中する。
「これは………」
父親は恐ろしくなった。
エクレールが、その空気が幼い少女のそれではないのだ。まるで死線をいくつも潜ってきた猛者のような……
動揺している父親に、エクレールは死の宣告を告げた。
「さぁ、貴方のその目に刻み込みなさい………ここからが、銀河の始まり!!」
そして私は留学を認められ、カスタムソルジャー工学を学んだ。
幼いながらもその力と技術、そして何よりカスタムソルジャーをもっと知りたいという思いで私は留学生活を過ごした。
あのニュースを聞くまでは
「姉さん、どういうこと」
「何が?」
「とぼけないで!」
留学から数年後、あるニュースが世間を賑わせた。
エクレール・テロメアが世界大会三連覇を成し遂げたと。
「別に私の実力ならおかしくもないでしょ?」
「Gサイトの力なのよ!?相手は使えない力で勝ち続けて何になるの!!」
「そんなの関係無いわ。だって機体の性能差だって不平等といえば不平等でしょ?私の場合はそれがGサイトなだけ」
エクレールは反省のカケラも無い態度だった。
「それに、計画はもう動いてるの」
「計画?」
アスカが尋ねると、エクレールは不敵に笑う。
そして、その内容を告げた。
「私は、いずれ世界大会に出場するファイターをGサイトを持つ者のみとしてみせるわ」
「………え?」
エクレールは立ち上がると、机をバンッと強く叩いた。
「だって、こんなに素晴らしい力なんですもの!強者の称号は、Gサイトを持つ者こそが相応しい!!」
エクレールは両手を広げ、瞳を虹色に輝かせる。
「世界が讃える者全てが私達Gサイト所有者になるのよ!素晴らしいと思わない!?」
「ふざけないで!」
アスカはエクレールを否定した。
エクレールはつまらなそうにアスカを見つめる。
「なら、本当にカスタムソルジャーが好きなだけの人はどうなるの………私達みたいな、力を使うことしか出来ない人達を敬えっていうの!?」
「………だって、他は弱すぎる」
エクレールの言葉にアスカはどうにかなってしまいそうだった。
あれ程カスタムソルジャーが大好きだった姉が、弱くてもカスタムソルジャーが大好きだと言っていたあの姉が弱者を切り捨てると言ったのだ。
「止めてみせる」
「へえ……どうやって?」
エクレールはニヤニヤ笑いながらアスカを流し目で見る。
アスカは自分の機体を取り出して告げた。
「貴女にファイトを申し込む!!」
「それで……」
ヤマトは言葉を詰まらせた。
アスカは寝転んで溜め息をついた。
「私の惨敗だったわ。あそこで私が勝っていれば姉さんは……」
アスカは悔しさで胸が張り裂けそうになった。
上半身を起き上がらせて気分を変えようとする。
「私は、姉さんを止めたい。これ以上野放しにしておくと、一体何をするか分からない」
ヤマトも決意を新たにした。
「僕も、明日は絶対に勝つよ。カスタムソルジャーが好きな人が、頑張ればGサイトなんかなくたって世界に出れるようにしたい」
アスカはヤマトの顔を見ると、自然と微笑んだ。
「貴方みたいなファイターを数年探し続けたけど………貴方に出会えて、本当に良かった」
「自分と同じで、カスタムソルジャーが大好きな人と知り合える………カスタムソルジャーの本当に素晴らしいところは、そこなのかも」
ヤマトはそうハッキリと告げ、アスカと向き合う。
アスカの顔が、徐々にヤマトに近づいて行く。
「ヤマト………」
「アスカ」
「好き」
二人の唇が、そっと触れ合った。
数秒触れたかと思うとすぐに離れ、二人は互いを見つめ合う。
「………」
言葉は無かった。
ただ、アスカはヤマトの体をそっと抱きしめた。




