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カスタムソルジャー  作者: バームクーヘン
第3章 雷帝降臨
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第21話 神速の名を持つ忍者

ヤマトは鍵を外してホテルの部屋に入る。そして、ベッドに飛び込んでボフンと音を立てる。

ベッドの柔らかい感触が全身を包む。

今日一日の疲れがドッと来たのか、ベッドからしがみついて離れない。


アスカはベッドに腰掛けるとヤマトの頭を撫で始めた。


「明日の試合、相手はハイバラになるでしょうね」


「ハイバラさん……」


ヤマトはその名を呟き、記憶を辿る。

エクレールの仲間に和服を着た男がいたことを思い出した。


「ハイバラさんって、どんなファイトをするの?」


ヤマトが尋ねると、アスカはヤマトのぷにぷにした頬を突っつきながら答えた。


「ハイバラは忍者型のスピードタイプのカスタムソルジャーを使うわ」


「じゃあスピードに付いていけるようにしないと………あの」


「ん?」


アスカはヤマトの頬をべたべたと触っていたが、ヤマトの抗議の目を受けて手を止めた。


「何で触るんですか?」


「だって……」


アスカはヤマトを起き上がらせると、ギュッと抱きしめた。



「何だか触ってないと落ち着かなくって」


「もう………」


アスカはふて腐れるヤマトをベッドに押し倒すと更に強く密着した。

ヤマトは文句を言おうとも思ったが、とにかく休みたかったため黙っておくことにした。





翌日、いよいよスペシャルマッチが開始する。

ヤマトとアスカは会場に向かっていた。


「今日、三人のトップメンバーを倒すことが出来たら姉さんと戦うことが出来るわ」


「最初は、ハイバラさんだね」


ヤマトはファイトの内容をイメージする。

Gサイトを使えばこれからするファイトの内容が見えるはずだが、全く内容が頭に浮かばない。


どういうことなのかアスカに尋ねる。



「多分、貴方のGサイトよりハイバラのGサイトの方が強いんでしょう」


「そんな………」


ヤマトは未知なる実力の相手に恐怖を覚え、動揺を隠せなかった。

すると、アスカはヤマトの頬に手を添えておでこをコツンと合わせた。



「大丈夫……貴方は私に勝ったじゃない。貴方のGサイトは私より弱いけど、あの瞬間、貴方は私と同じ力を発揮していた」


顔を離すも、その目はヤマトをジッと見つめ続ける。


「だから大丈夫。貴方は戦う度に強くなってる。今はどうであっても必ず勝てる」


「………ありがとう」


ヤマトはアスカに感謝した。

アスカの言葉はなによりも励みになるし、その目で見つめられると期待を裏切れなくなる。



「良いところを邪魔して悪いが、少し構わないか?」


低い男の声が聞こえ、二人は身構える。

ハイバラがコツコツと下駄の音を立てながら歩いて来る。


「翼ヤマト……本当ならエクレール様と戦わせたいのだが、私に負けるようならばあのお方の前に立たせる訳にはいかぬ」


「僕は、勝ちます」


「ほお?」


ハイバラはヤマトの力強い目を見るとフッと笑い、選手専用通路の扉から会場に入って行った。


「………行きましょう」


アスカと共に、ヤマトは会場へ向かった。






「どういうこと?」


アスカは係員に問い詰めた。


「これは挑戦者の戦いですから、セコンドの方はお下がりになるようにとのことです」


「……姉さんの差し金ね」


アスカは呆れて後ろに下がり、ヤマトに事情を話した。


「どうやら姉さんは貴方一人の力を試したいらしいわ。その方がGサイトの成長が直に感じやすいから」


アスカは申し訳ない気持ちで一杯になり、ヤマトの頭をそっと撫でた。


「ごめんなさい。役に立てなくて」


「ううん。アスカはハイバラさんのこと教えてくれたし、それに僕はアスカが側にいるだけで嬉しいよ」


ヤマトにそう言われると、アスカは名残惜しげにその場を後にした。



ガラス製の自動ドアを通り、大きなソファーにドッと座り込む。

Gキューブに向かうヤマトをジーッと眺めていたが、後ろに人の気配を感じて振り向いた。


そこにはキリュウがマルゴイやチェール、更にはアムやカジオ達を連れて来ていた。



「どうしてここに?」


「チャンピオンに命令、というか頼まれてな。お前が退屈しないようにってな」


「ああ、そう」


アスカはエクレールの傍若無人ぶりに呆れた。

チェールが苦々しげに話し出した。


「私、あの人嫌いだわ。何か私達が自分の言うこと聞いて当然って顔してて」


「ごめんなさいね、あの人Gサイトが全てだと思ってるから」


アスカは軽く謝罪する。

キリュウはアスカに尋ねた。


「ついでだ。そのGサイトとやら……ヤマトの不思議な力について教えて貰おう」


「いいけど……」


アスカは天井に設置されたモニターを見上げながら話し出す。




ヤマトはGキューブの前に立ち、反対側に立つハイバラと向かい合った。

ハイバラはヤマトを見るとフッと笑う。


「では始めよう。おぬしの力、見せて貰おう!」


「行きます!」


二人は自分の機体を発進させる。



「ブラスター・ウイング!」

影忍(かげしのび)!」


二体のカスタムソルジャーが夜景ジオラマに降り立つ。

夜景ジオラマは夜の都市をイメージしたフィールドだ。


ファイトが始まった瞬間、影忍が一瞬でブラスター・ウイングに接近して数回切り付け、その刀で弾き飛ばした。

ブラスター・ウイングは空中でバランスを取るとビームライフルで牽制しながら着地する。


「早い……」


ヤマトは影忍のスピードに驚く。

聞いてはいたが、それでもかなりのスピードだ。


「さぁ、休まず行くぞ!」


影忍が再度ブラスター・ウイングに接近する。

フェイントを交えながらの接近にビームを当てれず、ブラスター・ウイングは一旦空中に退く。


しかし、影忍は一瞬でブラスター・ウイングの背後に移動し、ブラスター・ウイングを切り付けた。

ブラスター・ウイングは地面に叩き付けられる。


「どうした、そんなものか?」


ハイバラはヤマトの実力がこんなものなのかと疑う。

影忍は更に追い撃ちを掛ける。


が、ブラスター・ウイングは繰り出される刀を何度も受け止め、ビームジャベリンを押し出して影忍のバランスを崩して肩からタックルして影忍を突き飛ばした。


「何!?」


ハイバラは自分の動きが見切られたことに驚く。

ヤマトは、そんなハイバラに告げた。



「もう、貴方のスピードは見切りました」


その瞳は虹色に輝いていた。

ハイバラもGサイトを使い、クククと笑う。


「いいぞ。全力で来い!」


影忍はまた刀を構えてブラスター・ウイングに接近する。

ブラスター・ウイングは高速で繰り出される斬撃を素早くかわし、足払いで影忍を転倒させる。

影忍はすぐさま跳んで距離を取ろうとしたが、ブラスター・ウイングも飛び立ち空中で影忍の目の前に追いつく。


ビームジャベリンで影忍を切り付け、地面に叩き付ける。

そして、高速飛行形態に変形するとバルカンを撃ちながら影忍に突っ込む。

影忍はバルカンを喰らって動けず、ブラスター・ウイングとぶつかって吹っ飛ばされる。


ブラスター・ウイングは変形を解くとビームライフルで狙撃する。

影忍はかわそうとするが避け切れず、命中してしまう。



「これは……」


ハイバラは絶句した。

先程からGサイトを使っているにも関わらず攻撃がかわせない。

まさか、この短い戦闘で既に自分と互角かそれ以上の力を手に入れたのか。とハイバラは考えた。

ハイバラはクククッと笑い出した。


「面白い……やはり貴様は面白いな翼ヤマト!」


《スターブースト》


影忍のスターブーストが発動する。

その姿が輝く……かと思われた瞬間、影忍の姿が透明になって消えた。


「え!?」


ヤマトは突然の事態に驚く。

ハイバラは不敵に笑みを浮かべる。


「これが影忍のスターブーストだ!」


その瞬間、ブラスター・ウイングが傷付き始めた。

見えない影忍にどんどん切り刻まれていく。

ボディに傷が入り、傷が増えていく。


「くっ」


ヤマトはとにかく離れようとブラスター・ウイングを飛行させる。


「甘いわ!」


ハイバラの声と同時にブラスター・ウイングがふらつき出す。


「これは…」


ヤマトはブラスター・ウイングの変形を解いて着地させる。

どうやら手裏剣を投げているようだ。


「さぁ、どうする?」


「っ、スターブースト!」


《スターブースト》



ブラスター・ウイングの周囲を水色の粒子が覆い、ボディが鮮やかに輝く。


次の瞬間、ブラスター・ウイングは高速で飛行を始めた。

あまりに速過ぎるため、影忍は攻撃出来ずにジッと待ち構える。


「………………そこだ!」


ヤマトは瞳を虹色に輝かせ、ブラスター・ウイングを操作する。

ブラスター・ウイングがビームジャベリンを振るうと何かを切り付けたのか、見えない何かが火花を散らしながら地面を転がった。


「何!?」


ハイバラは慌てて影忍を後退させる。

しかし、ブラスター・ウイングは見えないはずの影忍を追いかけ、先回りする。

そして、ビームジャベリンを怒涛の勢いで突き出し、影忍を何度も何度も突き刺して勢いよく突き飛ばした。

ハイバラは唇を噛み締める。


(こやつ、透明になって身を隠した影忍を完全に見きっている)


ブラスター・ウイングは大きくビームジャベリンを横に振り、影忍を薙ぎ倒す。

すると二体のスターブーストが切れ、影忍の姿が見えるようになる。


「……もう後はありませんよ」


「確かにそうかもしれんな。だが、それは最後の切り札を見てから言って貰おう!」



スペリオルアクション《幻鏡影分身》


必殺技が発動すると、影忍が50体近くに分身した。




「な、何じゃありゃー!」


カジオが飛び上がって驚愕する。

皆がファイトの激しさに集中する中、キリュウとアスカは話を続けていた。


「……それが、ヤマトの力の正体か」


「ええ。発動条件も本来の用途も分からない、銀河からの贈り物」


アスカの話を聞き、キリュウはヤマトとの思い出を振り返る。


「あいつも、数奇な運命に巻き込まれたもんだ」


「お兄ちゃん、そんなこと言ってる場合!?」


アムがキリュウに問い詰める。しかし、キリュウの表情は変わらない。

すると、アスカがアムに告げた。



「大丈夫、ヤマトは勝つわよ」


「それもGサイトとやらの予知か?」


キリュウがからかう様にアスカに尋ねると、アスカは首を横に振った。

アスカはヤマトを見つめながら答える。


「姉さんがGサイトを信じる様なら、私は翼ヤマトという存在を信じている。それだけよ」




50体に分身した影忍がブラスター・ウイングを次々と切り付けていく。

ブラスター・ウイングはなすがままにやられていた。しかし、ある時ビームジャベリンで周囲の影忍を薙ぎ払う。


そして、影忍を薙ぎ払いながら飛行し地面に着地する。

しかしそこは大量の影忍が取り囲んでいた。


「ははは!逃げても無駄だ、この必殺技を破ることは出来ん!」


ハイバラは勝利を確信して高らかに笑う。

しかし、ヤマトはそんなハイバラを見てニッと笑った。

ハイバラはそれに違和感を覚える。


(こやつの顔……これは、勝利を確信した者の顔)


「必殺アクション!」


スペリオルアクション《ライトニンググングニル》


ブラスター・ウイングはビームジャベリンを回転させながら天に掲げる。すると、フィールド中から電気がブラスター・ウイングの元に集まる。


その電気が命中し、分身した影忍全員の動きが止まる。

次の瞬間、分身が次々と消滅していき影忍の本体だけが取り残される。


「何!?」


ハイバラは影忍を動かそうとするが、電気を帯びているせいで全く動けない。



「これで決まりだ!」


ブラスター・ウイングはゆっくりと浮上し、集めた電気を球体として目の前に作り出す。

球体にビームジャベリンを突き刺し、自身が強力な電撃の槍と化して影忍に突っ込む。

凄まじい威力の電撃槍が影忍を襲う。


ブラスター・ウイングは地面をスライディングしながら着地し、グッと踏み止まる。

後ろを振り返ると同時に影忍が爆散した。



『決ぃまったあぁ!このファイトの勝者は、翼ヤマトだあああぁぁぁ!』


会場が沸き上がり、歓声で音が埋め尽くされる。


ハイバラは暫し呆然としていたが、やがてフッと笑い、ヤマトに話し掛けた。


「見事だった。最後の技、避けようがなかった」


「貴方の戦闘タイプを聞いた時から、決め技はあれだと決めてました」


「ハァーッハッハッハッ!!喰えん奴よ!」


ハイバラは先のファイトを思い出していた。

最後の技、ライトニンググングニル。

あのようなフィールド全体を攻撃するような技は影忍のようにスピードが速く、装甲が薄いタイプには天敵だ。


(なるほど、ある意味私は最初からこやつの手の平の上で躍らされていたということか)


ハイバラは改めて翼ヤマトというファイターを見直した。

そして、会場から去りながらヤマトに話し掛けた。



「翼ヤマトよ!私はエクレール様に敵う者などいないと思っているが……楽しみにしているぞ!」


ヤマトは去って行くハイバラに、一礼した。

そして、アスカの元へと走って行った。




「エクレール様、そして皆……すまぬ」


ハイバラはエクレール達がいる控室に行くと、一番に謝罪した。

ジェネはハイバラの肩をポンポンと叩く。


「いやいや、面白かったよ。ワクワクしたしね!」


「ナイスファイトでした」


ラスは拍手でハイバラを讃える。

ピタは兎のぬいぐるみをモフモフしながら喋り出す。


「次は、私」


「ええ。頑張りましょう」


ピタとラスはカスタムソルジャーの手入れを始めた。


ハイバラはエクレールの前に立ち、敗北を謝罪する。


「エクレール様……私は」


「いいわ。敗北もまたGサイト成長の大事なファクターですもの」


エクレールはハイバラを許すと一人物思いに耽る。


「今から楽しみだわ……翼ヤマト、貴方を私の前で屈服させたい。ああ、本当に楽しみだわ」


エクレールはGサイトを発動し、瞳を虹色に輝かせた。

部屋全体に力が及び、全員が緊張で体を固まらせる。


皆には、エクレールの後ろに銀河が広がって見えた。

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