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カスタムソルジャー  作者: バームクーヘン
第3章 雷帝降臨
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第19話 世界一を目指して

ロビーは大混雑しているようだ。

外からでも分かる程、その混み具合は異常だった。


「何だか凄いね…」


「それだけ世界大会には関心が集まってるってことよ。私達は裏口から行きましょう」


ヤマトはアスカの言う通りに、選手専用の入口から入って行く。



控室に入ると、早速ブラスター・ウイングの調整に取り掛かった。


「いよいよ、世界大会だね」


分かってはいたが、どうしても緊張してしまう。

アスカは突然、ヤマトを後ろからそっと抱きしめた。


「……本当にごめんなさい。貴方を、私と姉さんの問題に巻き込んで」


「いいよ。世界大会に出るのが僕の夢だったし……だから、僕の我が儘を一つだけ聞いて欲しい」


「別にいいけど……」


ヤマトはアスカと向き合うと、要望を口にした。




ヤマトはGキューブの前に立つ。

目の前には雑誌で見たことのある、イタリア代表選手が立っている。


イタリア代表……ジョセフはヤマトを一瞥すると嘲笑った。

こんなチビに負けるはずがない、と。


ヤマトは控室でのことを思い出していた。


『お願いなんだけど……今年の大会って、変則ルールなんでしょ?』


『ええ。まず普通にトーナメントをして一位を決める……すると、今度はトップメンバーとの勝負が始まるの。具体的には姉さんの仲間ね……その三人を倒して、初めてチャンピオンへの挑戦権を得るの』


『だから……エクレールさんの仲間と戦うまでは、Gサイトを使わないで戦いたい』


ヤマトはそう嘆願した。

アスカは目を丸くする。


『Gサイトを使う相手にはGサイトを使わないと勝負にならないことは分かってる……だから、せめて普通の選手とは対等に戦いたい。せっかくの僕の夢だから』


駄目かな……と思いながらアスカを見る。

アスカはヤマトの視線に気づくと慌てて首を振った。


『もちろん良いわよ。せっかくの貴方の夢だもの。貴方の思う通りに戦っていいわ』


アスカが許可すると、ヤマトは嬉しさのあまりアスカの手をグッと握り締めた。


『ありがとう!』


『え、えぇ…』


アスカはヤマトの温もりを感じて頬を赤く染める。

ヤマトは期待に満ちた表情で決意を新たにした。




ヤマトはPCDを取り出し、ブラスター・ウイングが肩に乗る。


「行くよ……ブラスター・ウイング!」


「スター、GO!」


二人のロボがフィールドに降り立った。

フィールドは深海ジオラマ。海底を模したフィールドだ。

流石に水は無く、海底の地形をしているだけだ。


ジョセフの使っているカスタムソルジャーは、スター。

ガンマやドゥルーと同じく市販されている機体だ。


「私が独自にカスタムしたスターの力……プアリトルボーイに教えてあげるよ!」


スターは先端が星の形をしたハンマーを構えると、文字通り流れ星のようなスピードでブラスター・ウイングに突っ込んだ。


しかし、ブラスター・ウイングは一瞬で背後に回り込むとビームジャベリンでスターの背中を切り付けた。


「何!?」


ジョセフが驚いている隙に、ブラスター・ウイングは次々とスターを切り付けていく。

スターは反撃にハンマーを振ろうとするが、ブラスター・ウイングがビームジャベリンを手の平に突き刺したので、ハンマーを落としてしまう。


その隙にブラスター・ウイングはスターを思いっ切り蹴っ飛ばした。




「おーやってるやってる」


一人の男が観客席に現れてヤマトのファイトを観戦していた。

茶髪をボサボサさせ、ピアスをいくつも付けたチャラチャラした風貌だ。


その周りに、和服を着た渋い男と人形を抱えた小さな女の子とその兄がやって来る。


彼らこそ、昨日エクレールの側にいたメンバーである。


茶髪の男がジェネ。

和服を着た男がハイバラ。

ピンク髪の小さな女の子がピタ。

その兄の少年がラス。


いずれも世界ランカーの実力者だ。もっとも、ラスはピタのセコンドだが。


ラスが残念そうに呟いた。


「でも、Gサイトを使っていないのならどれ程のGサイトの持ち主なのか分かりませんね」


「ところが、そうじゃないんだよねー」


ジェネの発言に、ラスは首を傾げた。

一体どういうことなのかとハイバラに尋ねる。



「……Gサイトを使えばその実力も伸びる。つまり、実力を見ればそのGサイトの力もおのずと分かるということだ」


「なるほど……」


ラスは納得するとピタの頭を撫でる。

ピタは人形をモフモフしながら呟いた。


「あの人、強いよ」


「だよねー。エクレールさんと戦う資格があるか確かめるってのもあるけど、それぬきでもファイトしたいよねー」


ジェネはウキウキしながらファイトを眺める。





アスカはヤマトの隣でファイトを見守っていた。

本来セコンドは指示をするものだが、現時点ではいらないと思っている。


(せっかくこの子が楽しんでいるんだもの。ヤマトの好きなようにさせたい)


アスカは一人の観客として、ヤマトのファイトを見守る。



既にボロボロになったスターはその手を光り輝かせる。


「ふふ、ハンマーだけが武器じゃないのデスよ!」


スターは素早く連続パンチを繰り出す。

ブラスター・ウイングはパンチを完全に見切り、ビームジャベリンでスターの両腕を切り裂く。


「ホワイ!?」


ブラスター・ウイングは続けてビームジャベリンをスターの胸に突き刺すと膝蹴りでスターを吹き飛ばし、ビームライフルのチャージショットを命中させた。


装甲の薄いスターは耐え切れず、木っ端みじんに爆散した。



「アウチッ!」


ジョセフはスターの残骸を寄せ集めると走り去って行った。

ヤマトは安心して一息つく。


そこに、聞き覚えのある声が聞こえた。


「おーい、ヤマトー!」



声のする方を向くと、カジオ達がいた。

ラフレやアム、ゴン太郎やネジスケ達も一緒にいる。


ヤマトも精一杯手を振って答える。

アムはそんないつもの元気なヤマトを見て、胸を撫で下ろした。


「ヤマト……」


「ヤマトさああああああん!」


ラフレも人一倍大声でヤマトを呼ぶ。




「良かったわね」


アスカはヤマトの肩にポンッと手を置いた。

いつもの友達、いつもの元気。

それが何より大事だと、ヤマトは分かっているだろう。


だからこそ、一時でもそんな関係をギクシャクにしてしまった自分が許せない。

アスカは俯いていたが、ヤマトの声で我に帰る。


「僕、世界大会に出れたのはアスカのおかげだと思ってる。だから何も気負わなくていいよ」


「でも、せっかくの世界大会を私と姉さんのために……」


「それは僕が自分で望んだことだよ。エクレールさんにカスタムソルジャーの本当の楽しさを思い出して欲しいし………それに、」


ヤマトは顔を赤くして躊躇していたが、やがてアスカの顔を笑顔で見つめて言った。



「それが、アスカのためだから。アスカのために、僕は頑張りたい」


「………ぁ、ぇ……」


アスカは顔を真っ赤に染めてパニックに陥った。

混乱するアスカの手を引いて、ヤマトは控室へ向かった。




そんな様子を遠くで眺めていたアムは怒り狂っていた。


「何!?何を喋ってたのあの女!!?」


「どっちかというと、ヤマトの方が長く喋っていたような」


冷静に解説するゴン太郎をアムは睨みつけて黙らせる。

カジオは恐ろしさのあまりアムから離れてネジスケ達としりとりをして気を紛らわせることにした。


「あああ、ヤマトさん。素敵いいいぃぃぃ」


ラフレはさっきの光景を見ていないのか、それとも現実を見ていないのか。

クネクネと身をよがらせてヤマトを思っていた。


兄のシアンは、気を重くして溜息をついた。





「ヒューッ。やるね」


ジェネはヤマトのファイトを評価する。

ピタはもう眠いのか、ウトウトし始めた。


「この大会、楽しみですね」


「………うむ」


ラスはピタが安心して寝れるようあやしていた。


ハイバラは、これからのヤマトの戦いをイメージし、ファイトに備える。

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