砂糖菓子のような甘さで
久々に書いたのがこの作品です。
他を更新しようとして、これが出来ました。
楽しんで頂けたら幸いです!
Kissシーンいれてみました。
「お腹が空きました。」
「どうしろと?」
ある晴れた昼頃のこと。
幼馴染である、悠が訪ねて来ての第一声。
自慢ではないが、家事なんてできない私は手にしていたペンの動きを止めた。
「普通は可愛い彼女とかに作ってもらうんだけどさ~。彼女今日バイトでさぁ~」
だから何故ここに来るのか、なんてことは聞かない。いつもの事だから。
「そうか、振られたんだな。…ッフ。」
そう、奴がここに来るのは大抵が振られたからである事が多い。
そして、その愚痴を聞くのが私の役目らしい。
そんなお役目ごめん。と言いたいところだが、ここはお昼ご飯が掛かっている。
さっき言ったように、私は家事ができない。
部屋なんて散らかり放題…放置万歳!
なんてやっていたら、悠が文句を言いながらも片付けを始める。
それが、ある意味日課になってしまっていた。
つまり、ご飯も悠が作るわけで…。
「笑う事ないだろう!だいたいお前のせいなんだぜ?」
「何が、私のせいだというのだ!!」
腕組みをしながら、悠は私をジッと見る。
私も負けじと悠を見る。
目を逸らしたほうが負けだ。
「誰かさんのメシを作るために颯爽と帰る俺に、あいつら(付き合ってきた子達)『私とその子どっちが大切なの!!』って!」
「…それはぁ~」
目をそらしてしまった。
私の負けだ。
いや、そんな事はどうでもいい。
なんせ私の生活が掛かっているのだ!!
両親ともに海外でなんたらしているためのせいだが。そもそも、私は付いて行こうとしたんだ! それをこいつが!!
………こいつが原因じゃねぇの?
思い出してみよう。
あの日の事を………。
「香那ちゃん、一緒にアメリカ行く?」
いきなりそんな事を言われたら、子どもでも不信がるだろう。
だから私は、こう言った。
「夜逃げするの?」
「アメリカまで夜逃げなんて壮大だねぇ~」
「あら、パパそんな事いったら、香那ちゃんがみんなに言いふらしちゃうわよ?パパが悪い事したので、夜逃げしますって。うふふ。」
相変わらずこの家は賑やかである事を実感しながら、夜逃げではないことを確認した。
「もうちょっと待って、ユゥに聞かなくちゃ。」
「何!!パパより男をとるのか!?」
「??だってユゥ私がいないと何もできないんだもん。」
「あらぁー。香那ちゃんのお部屋とか片付けてくれるの悠くんじゅぁなかったっけ?」
「男を部屋にあげているのか!!パパは許しませんよ!」
「それじゃぁいってきまーす」
パパとママの会話を無視して私はユゥのところに行く。
ユゥはこの時間なら公園いるはずだ。
まぁ、きっと女の子に囲まれているんだろうけど。
公園に着く。
女の子に囲まれているユゥを発見する。
とりあえず、離れたところで眺める。
暇になってきた、帰ろうか。
よし、帰ろうと約10分そこらで自分がなにしに来たのかも忘れて帰ろうとする私にユゥが気づいたらしい。
「カナちゃん!!」
振り返り、自分が何しに来たのかを思い出す。
でも、女の子に囲まれているユゥを見ると言いたくなくなった。
このまま言わずに引っ越したらユゥは怒るかな?
もしかしたら、忘れて女の子たちと遊びははじめるんだろうか。
「はぁはぁ。カナちゃん?」
走って来て息を切らして私の名前を心配そうに呼ぶユゥを見て意地悪な考えを消した。
「ユゥ。私ね、引っ越すんだぁ~アメリカに!!」
元気良く言う私と対象にユゥの顔がだんだんと歪んでくる。
あ、泣くかも。
でも、ユゥは泣かなかった。
「いつ?何で?」
「いつかは分からないけど、パパとママの仕事のためだよ。」
「何で、カナちゃんまで行かなくちゃいけないの?」
「なんでって。私一人で暮らしていけないからだよ!」
「でも、一人で暮らしてる子いるじゃん!!タキくんとか!!」
「タキくんは料理とかできるでしょー!!」
「カナちゃんのご飯は僕が作るから大丈夫だよ!ね!!」
「いや、ネ!って言われても。」
「パパたちに聞かないと。」
「僕も行く!!」
「ユゥはその子たちと遊んでなさい!」
「行く行く行く!!」
ドバーッと言い合いをしてしまったせいか、周りからの視線が痛い。
そして、ユゥから引っ張られる腕がいたい。
家に着く。
ドアを開けられる。
パパとママに会う。
ユゥが発言。
パパと対抗。
ママは笑う。
パパが負けた。
ユゥが飛び上がって喜んで…
回想終了。
「私のせいじゃないじゃん!」
「何でそんなことが言えるかな。」
「昔のユゥは可愛かったのに、今の悠は可愛くない。」
「なっ!!」
昔と今を比べたらいけないことはわかっているけど、でもなぁー。
「変わりすぎだよね。」
「お前は変わってないけどな。」
変わってなくて悪かったなぁーと言おうとしてふと、意地悪を思いついた。
「仕方がない。私がアメリカに行けば悠は自由の身になれるみたいだし、行ってくるかな?」
「………え?」
「喜べ!これで自由なんだぞ!」
「でもさ、いきなり行っても叔父さんや叔母さんがどこいるかわかんないんだろう?それにいきなりいったら迷惑なんじゃぁ~」
「彼らは言った。いつでもおいでと。ついでに、住所も取得してるから。学校のほうも何とかするって言ってたし。」
ヒラヒラと住所が書いてある紙をなびかせる。
「!!!!あ、えっと。カナちゃん!と、友達に会えなくなっちゃうよ!」
「別にいーよ。友達には言ってるし。お土産よろしくって言われたし。」
「カナちゃんその紙かして!」
「は?」
何かを言う前に悠に紙を取られ、じーっと見たかと思ったら…。
ビリビリ。
破りやがった。
ちょっ!
「よし、これでカナちゃんいけないね!」
嬉しそうに笑う悠が怖く見てる時がくるとは。
「悠…さっきからカナちゃんって呼んでるの気がついてる?ってかさ、昔に戻ってるような気がする。」
「もう良いよ。強がったらどっか行こうとするし、だいたい彼女なんていないから。」
「じゃぁ、彼女たちは?」
「勝手によってくる人たち。」
「……。」
もう私は何も言わないことにした。
でも悠はそれを許してはくれないらしい。
「行かないでよ。」
無言を誤魔化すように破り捨てられた紙を拾おうとすると、悠が腕を掴んだ。
「私が行かなくとも、悠が何処かに行くんじゃないのか?」
「僕はどこにもいかないよ。手のかかる女の子のそばにいてあげないと、その子が死んじゃうからさ。」
「手のかかる…死んじゃう…私はうさぎか!!」
「そういえば、小さい頃うさぎになりたいって言ってたよね!」
「いつの話だ!!」
「それで?返事は?」
これは、もう逃げられないぞ。
でも…言い逃げ万歳!
「うさぎは寂しいと死ぬんだぞ!」
そう言って、私は部屋へと逃げた。
バンッ!ガチャ。
恥ずかしくて顔から火がでそうだった。
悠に彼女がいなかった。
いなかったんだぁ!
そのことが、嬉しくてまた悠が何処にも行かないと言ってもくれた。
その言葉にこんなにも、嬉しくなるなんていったいこれは何なのだろう?
トトトト。
階段を軽やかに上がってくる音がする。
悠以外にいないのだが、今は来てほしくなかった。
顔が見られないのだ。
「カナちゃん?ご飯できたよ?」
ついさっきのことが嘘のような言い方だった。
だからついついドアを開けるところだった。
危ない。
「カナちゃん。食べてくれないの?」
「男がそんな声を出すな!」
ショボーンとしている姿がドア越しでも分かる。
「良かった。口聞いてくれないかと思ったよ。」
「…話し方変わりすぎ。昔に戻り過ぎ。学校の友達に驚かれるんじゃないの?」
「そんなことないよ。あんな言葉遣いカナちゃんの前だけでしていただけだもん。」
「そうか。」
「そうだよ?あ、あと害虫駆除。」
「え?なに?害虫がいたの?!」
「カナちゃん虫嫌いだもんねぇ~だから駆除してあげたよ?」
「あ、ありがとう。」
初めて知った。
学校に害虫がいたなんて…。
考えただけでも恐ろしい。
…あれ?
普通に会話してるんだが、さっきまでのあれはもう忘れたってこと?
え、ちょっと……。
その程度のことだったのかな?
ある意味でこっちが逆にショボーンとしてしまった。
「?カナちゃん?どうかした?」
「別にどうも…って開けようとするな!」
「チッ。」
「今、舌打ちした?!」
「気のせいじゃない?」
「気のせいだとしても、開けようとしている行為は気のせいじゃないよね!?」
「さぁ?」
ぐぐぐぐ…。
粘る私。
きっと片手で開けようとしている悠。
粘る…例え少しずつドアが開かれて行こうとしていても。
「諦めたら?」
「諦めるかぁーー!」
悠の性格は甘え上手の腹黒だってことは知っている。
でも、中学の入って変わったと思ったのに、戻った。
悲しむべきなのだろうか…。
「カナちゃん…。」
「なに?」
必死にドアを押す私に悠は微笑んでいる気がした。
「好きだよ。」
「………ひ、卑怯だぁーーー!」
私の叫び声と共に、ドアが開いた。
好きだと言われて、誰が力を緩めずにいられるだろうか。
開いたドアから悠が嬉しそうな顔をして入ってきた。
「ほら。」
悠の差しのばされた手にしぶしぶ自分の手を重ねると。
ぐいっと。
そうグイッと、引き上げられ抱きしめられた。
「悠!?」
「もうこれで、僕にもの。」
今の言葉を恥ずかしげもなく言ってのける悠の顔が見れないため自らの顔を悠の胸に押し当てて隠すことにした。
「~~~ッ!よくそんな恥ずかしいことが言えるな!!」
「今まで我慢してたんだ、この位許されるでしょう?」
許す許さないの状態でないほどパニックな私は話題を変えることに専念することにした。
「ごごごごご飯を食べよう!」
「カナちゃんが、パニクってる!面白い~」
ヲイ!
性格がどんどん悪くなってないか!
ムっと睨むと悠はそれを笑って受け止めた。
「そうだね。ご飯食べようか。」
そう言って、身体を放してくれたが、何故か喪失感があった。
もしかして、私のほうが悠に依存しているんじゃぁ…。
悠が先に階段を降りる。
その背中を見て実感する。
私は悠が私を想っている以上に悠のことが好きらしい。
一階に降りすっかり遅くなった昼食を食べることに。
相変わらず悠の料理は美味しい。
これが幼少の頃からこの美味さ何だから驚きだ。
「悠は何でこんなに家事ができるんだ?」
「誰かさんが家事のできる人と結婚するって言ってたから。」
「は?」
「焦ったよ。あの時タキくんが家事得意だったから。このままじゃぁ~って思って花嫁修行した。」
「へ、ヘェ〜。」
嬉しいのだが、顔には出さない。
今更だけど気づかれることが恥ずかしかった。
「悠……私は…。」
「なぁに?」
天使の微笑みで悠が尋ねる。
駄ぁ~~~~もう!
何でこんなに可愛いんだ!
次の瞬間、我ながらに驚くべき行動をとった。
まず、悠の首元の服を火事場の馬鹿力のように引き寄せ、互いの顔を近づけた。
その後は、自分のそれと悠のそれを合わせた。
時間の感覚なんてわかんない。
けれど、キスって甘いんだぁーなどとキスしている最中に思ったが…。
「!!!!!」
悠のそれと自分のそれを離すと思ったとおり悠が凄く驚いた顔をしていた。
どこか顔が赤いのは気のせいだろうか?
いや、そんな事よりも、私自身が驚いているんだ、そんな顔をするな!
今自ら行った行動にな!!
そもそも、こういう時に馬鹿力を出さなくていいと思う。
「カナちゃん、これって…誓いのキスだよね!!」
何故そうなった!?
結婚式でもあるまいし。
いや、しかしキスしたのは私のほうなんだけどね。
「~~~もうそれでいいよ。」
「よっしゃぁー!これで、完璧に僕のものだね!」
そういって、悠はお返しとばかりにキスをしてきた。
はたから見なくても、ラブラブであろう私と悠。
でも、私は気付かない。
もう逃げられないということを。
何より、この結果を招いたのが自分であるということを後になって後悔したりしなかったりする。
初めしてのFirst Kissは砂糖菓子のように甘かったことで後悔はしてないかもだけどね…
感想など、ありましたらどぞ!