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最後の1枚

掲載日:2026/09/08

 とある居酒屋の座敷席で、4人の男達が酒を飲み交わしていた。

 男達の年齢は、20代、30代、40代、50代とバラバラだった。

 傍から見れば会社や趣味等の集まりのように見えるが、男達は違った。

 そもそもお互いの名前も知らない関係であり、素顔を見たのも今日が初めてだった。

 各々、20代はA太えいた、30代はB作びーさく、40代はC助しーすけ、50代はD武でぶと名乗っていた。

 4人はそれまではとあるSNSで交流し、今日を迎え、そして今こうして居酒屋で飲みかわしている。


「それにしても楽な仕事でしたね」


 A太えいたがビールに口をつけながら言った。

 B作びーさくが、うんうん、と頷きながらお通しの枝豆を食べる。


「人ってあんな簡単に騙せるもんなんだな。こりゃ楽してめっちゃ稼げるわ」


 C助しーすけが焼き鳥を串から外しながら言う。

 串から外された鶏もも肉をD武でぶは、ふもーふもー、と鼻息を荒くしながら食べる。


 この4人、SNSで知り合い結成された詐欺グループだった。

 高齢者の家に電話をかけ、息子や警察、弁護士等を名乗り大金を騙し取ったのだ。

 オレオレ詐欺をイメージすると分かりやすい。


「それにしてもリーダーが来れなかったのは残念ですね。皆揃って祝勝会をしたかったですけど」


 B作びーさくがビールに手を伸ばしながら言う。

 そう、実は詐欺グループのメンバーは4人だけではなかった。5人目のリーダーがいたのだ。

 ただ、リーダーは今回の祝勝会には参加出来ないと連絡を寄越し、そのかわり今4人が飲んでいる居酒屋を手配したのだ。


「まぁ、これからも祝勝会の機会はあるし」


 C助しーすけが枝豆に手を伸ばしながら言った。

 そんな会話を横に、D武でぶは焼き鳥を食べ尽くす勢いで食べている。


「よかったらこれ食ってくれ」


 そう言いながら、突然来た店主が刺身の盛り合わせをテーブルに置く。


「大将、頼んでないけど?」


 A太えいたがそう言うと、店主は店内を見渡してかニッと笑って「全然お客さん来ないからサービスだよ」と言って去っていった。

 店内は男達以外は誰もいなかった。


「ふもー!」


 D武でぶが刺身の盛り合わせに箸を伸ばす。

 あれ、焼き鳥がない! 刺身も食い尽くされるぞ!

 4人は一斉に刺身を食べ始める。


「最後の1枚いただき!」


 A太えいたが残ったマグロを箸で奪い、わさび醤油につけて口に放り込む。


「そういうのは最年長に譲るふも!」


 あんた喋れたの!?

 D武でぶの突然の言葉に、3人は思わずツッコんだ。



 □ □ □



 ──数時間後。

 4人はテーブルに突っ伏していびきをかいていた。

 そこに店主がゆっくり歩いてくる。


「ったく、やっと寝やがった。あんま効きづらいのかこの薬は」


 店主の手には液体が入った小瓶が握られていた。

 店主はC助しーすけの傍に置いてある鞄に手を伸ばし、引き寄せて開ける。

 中には大量の札束が入っていた。今回4人が騙し取った金だった。

 店主は1枚1枚しっかり数え、幾つもの束を作っていく。


「おっと、最後の1枚」


 鞄の奥で丸まっていたお札をしっかり回収する。

 作った札束の数を確認し、鞄に戻して厨房に姿を消す。

 そしてまた戻ってくると、


「さて、コイツら処分して、新しい駒を探すか」


 店主の手に握られている出刃包丁の刃が妖しく光った。

詐欺師撲滅運動。

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― 新着の感想 ―
騙していいのは騙される覚悟があるやつだけ。 自分たちが騙される側だという認知が足りていないばかりに、因果応報の憂き目にあう。それは仕方なしにしても、とても愉快なメンツでとくにD武が面白かっただけにやや…
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