最後の1枚
とある居酒屋の座敷席で、4人の男達が酒を飲み交わしていた。
男達の年齢は、20代、30代、40代、50代とバラバラだった。
傍から見れば会社や趣味等の集まりのように見えるが、男達は違った。
そもそもお互いの名前も知らない関係であり、素顔を見たのも今日が初めてだった。
各々、20代はA太、30代はB作、40代はC助、50代はD武と名乗っていた。
4人はそれまではとあるSNSで交流し、今日を迎え、そして今こうして居酒屋で飲みかわしている。
「それにしても楽な仕事でしたね」
A太がビールに口をつけながら言った。
B作が、うんうん、と頷きながらお通しの枝豆を食べる。
「人ってあんな簡単に騙せるもんなんだな。こりゃ楽してめっちゃ稼げるわ」
C助が焼き鳥を串から外しながら言う。
串から外された鶏もも肉をD武は、ふもーふもー、と鼻息を荒くしながら食べる。
この4人、SNSで知り合い結成された詐欺グループだった。
高齢者の家に電話をかけ、息子や警察、弁護士等を名乗り大金を騙し取ったのだ。
オレオレ詐欺をイメージすると分かりやすい。
「それにしてもリーダーが来れなかったのは残念ですね。皆揃って祝勝会をしたかったですけど」
B作がビールに手を伸ばしながら言う。
そう、実は詐欺グループのメンバーは4人だけではなかった。5人目のリーダーがいたのだ。
ただ、リーダーは今回の祝勝会には参加出来ないと連絡を寄越し、そのかわり今4人が飲んでいる居酒屋を手配したのだ。
「まぁ、これからも祝勝会の機会はあるし」
C助が枝豆に手を伸ばしながら言った。
そんな会話を横に、D武は焼き鳥を食べ尽くす勢いで食べている。
「よかったらこれ食ってくれ」
そう言いながら、突然来た店主が刺身の盛り合わせをテーブルに置く。
「大将、頼んでないけど?」
A太がそう言うと、店主は店内を見渡してかニッと笑って「全然お客さん来ないからサービスだよ」と言って去っていった。
店内は男達以外は誰もいなかった。
「ふもー!」
D武が刺身の盛り合わせに箸を伸ばす。
あれ、焼き鳥がない! 刺身も食い尽くされるぞ!
4人は一斉に刺身を食べ始める。
「最後の1枚いただき!」
A太が残ったマグロを箸で奪い、わさび醤油につけて口に放り込む。
「そういうのは最年長に譲るふも!」
あんた喋れたの!?
D武の突然の言葉に、3人は思わずツッコんだ。
□ □ □
──数時間後。
4人はテーブルに突っ伏していびきをかいていた。
そこに店主がゆっくり歩いてくる。
「ったく、やっと寝やがった。あんま効きづらいのかこの薬は」
店主の手には液体が入った小瓶が握られていた。
店主はC助の傍に置いてある鞄に手を伸ばし、引き寄せて開ける。
中には大量の札束が入っていた。今回4人が騙し取った金だった。
店主は1枚1枚しっかり数え、幾つもの束を作っていく。
「おっと、最後の1枚」
鞄の奥で丸まっていたお札をしっかり回収する。
作った札束の数を確認し、鞄に戻して厨房に姿を消す。
そしてまた戻ってくると、
「さて、コイツら処分して、新しい駒を探すか」
店主の手に握られている出刃包丁の刃が妖しく光った。
詐欺師撲滅運動。




