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ビール瓶問題

作者: 白夜いくと
掲載日:2026/03/22




 私は飲食の仕事が向いていなかった。


 当時は理由など分からなかった。御膳の配置や茶わん蒸しのスプーンを忘れたり、テーブル番号に誰が座ったかを覚えられなかったり。散々だ。


 よくしてくれたパートのおばちゃんに言われたことは、


「アンタ、不味そうにスプーン置くね」


 だった。

 

 カレーなどの配膳の時に、スプーンの掬う方(表)を下に向けて置いていたのだけど、それだととても不味そうだというのだ。


 特に教わったわけではない。

 私は、スプーンの掬う方に埃が入らないように裏向けたつもりだったが、とても見栄えが悪いと言われた。


 これについては正解が分からない。

 けれど、仕事で覚えたことだから今は掬う方(表)を上に向けて配膳するようになった。


 仕事は出来ないなりに、雑巾の絞り方や挨拶の仕方、その他ほんの少しの知識が増えた。


 私ができない奴だと分かると、スタッフ一丸となって協力サポートしてくれた……無駄にしてしまったことは今でも深く反省している。


 ……、

 …………。


 とんでもない客が来ることも知った。

 例えば、茶わん蒸しの気泡が気持ち悪いから取り替えてくれとか、米粒が机の上に張り付いてそのまま帰る客とか。


 潔癖すぎたり、無頓着過ぎたり。


 例に挙げたのはまだまだ理解できる範囲の客だった。


 あと、とても悩んだのが正論の対立に巻き込まれたことだ。


 2人の御局がいた。


 片や、


「ビール瓶が厨房にあるのが邪魔や、非常階段に置いといてきて!」


 片や、


「非常階段に物なんて置いたらいけまへん!」


 ビール瓶が邪魔なのは確かだった。躓く人が多くいたからだ。厨房に置いていくと、ビール瓶がどんどん溜まる。特に夕方は凄かった。

 

 配膳用ワゴンに引っかかって盛り付けが崩れる又は鍋の汁が溢れるなんてことも多々あった。


 しかし、だからと言って非常階段に物を置いて良いわけがない。何かあった時、逃げ遅れたら大変だから。


 その理屈も十二分に分かっていた。だから困った。いまだに答が出ない。


 仕事は臨機応変に、されどマニュアル通りに正確に。とても難しいなと思う。スタッフや客のいろんな気持ちを汲み取りつつ働く。私はそれが苦手だった。


 こんな調子なので、ほとんどの仕事が向いていないと思われる。でも、まかないは嬉しかった。慣れる前に辞めてしまったけれど、飲食は、もう一度挑戦する機会があれば、やってみたいと思っている。


 その時の私の社会的信頼がどれだけあるかが分からないけれど。


 将来、どんな仕事をしているかな……。


誤字報告ありがとうございます!

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