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【完結】君と眺めた星空の記憶をこの胸に

掲載日:2026/02/28




随分長いこと忘れていたわ……………。



これは10歳の時、母の田舎に連れて行ってもらった時の記憶

────懐かしい 大切な思い出





私、木原由美子は22歳。

あの日、私はとても貴重な体験をした。

そしてーそれが私の初恋だった






12年前────




ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン……………

太陽がギラギラと照り付けるその日、母の手に引かれて私は母の育った田舎へと電車で向かっていた。

母の腕には産まれて半年の弟がいる。夏休みを利用しての規帰省だったのでただでさえ汗ばんでいるのに弟を抱っこしている母はもっと汗をかいているだろう。


田舎の電車は一日の運行数が少ないというのと、利用者数もあまりないからか、一両編成だった。そのため、利用者の時間が重なったのか、座れずに私達は立ったまま乗っていた。


そんな私達の前に一人の男の子が現れた。どう見ても私と同じくらいの年頃だ。



「あの…っ、よかったら僕の座ってる席へどうぞ。」


男の子は照れながらそう言って席を譲ってくれた。



「ありがとうね。」


母が男の子にお礼を言ってから私に


「じゃあ由美子、座らせてもらいなさい。」


そう言って母は私に席を譲ろうとした。男の子は赤ん坊を抱えた母にこそ席を譲ろうとしていたのだろう。私も不安定な電車の中、弟を抱っこした母が心配だったので


「だめだよ、お母さん。ゆうくんと一緒にお母さんが座って。」


私がそう言うと申し出てくれた男の子もニッコリと笑って私達から離れて行った。私は男の子にお礼も言えないままだった。そして同時にあの子のように今度は自分も困ってる人がいたら譲ってあげたいと思った。




その後無事おばあちゃんの家に着いた私達。おばあちゃんは「よく来たね。」と言って私達を気持ちよく迎えてくれた。


「ここにはどれくらいいるんだい?」


おばあちゃんが尋ねた。私は手のひらをパッと開いて


「5日だよ!」


と答えると、おばあちゃんは「そうかい、それは良かった。」よ言って目尻を下げて笑ってくれた。私は心が温かくなった。



みんなで居間でくつろいでいる時だった。


「おばーちゃん!」


という元気な男の子の声が聞こえたのでおばあちゃんは玄関に向かった。

何か話をしている。しばらくするとおばあちゃんがその子を連れて居間にやってきた。


「ちょうど娘たちが帰って来てるんだ。あんたと同じ年の孫だっているんだ。仲良くしてやっておくれ。」


そういいながらおばあちゃんに連れられて来た子に私達は注目した!





「────あ!」




私も母もビックリしていた。そして彼も…。


そう、あの電車の中で出会った男の子だ。お母さんは咄嗟に彼に向かって


「さっきはどうもありがとうね。お陰で助かったわ。」


そうお礼を言った。

彼はやっぱり照れていた。そして私も


「さっきはありがとう!」


とお礼を述べた。彼は照れたままだった。そしておばあちゃんが


「さあさ、座りな。」


そう言ってスイカを皆に出してくれた。

そして彼を紹介してくれた。どうやら近所の子供でおばあちゃんが時々面倒を見ていて仲良くなったんだということだった。彼もおばあちゃんにとても懐いていた。


私も彼も無言でスイカを頬張っていた。お母さんとおばあちゃんは沢山話をしていた。

私はちょっぴり気まずかった。それはきっと彼もそうだったのだろう。

テレビの音とおばあちゃんとおかあさんの話し声、ゆうくんのキャッキャ、キャッキャと笑う声、そして外ではセミが煩く鳴いていた…。


ながい時間が過ぎて辺りがそろそろ薄暗くなってきた。

私と彼がどうしたらいいのかわからずっとボーっとテレビを見ていた。するとおばあちゃんが


「なあ、雄介。由美子に星を見に連れてってやってくれないか?」


そう言い出した。私はビックリした。まだ挨拶以外何も話すらしていないのに二人っきりでどうやって過ごせというのかと思ったからだ。それは彼も同じだったようで一瞬黙っていたがお世話になっているおばあちゃんのためだったのだろう、


「………………わかった。」


と返事をした。



〝────え、いいんだ…。〟


私は更にビックリしたが彼はスッツと立ち上がって



「由美子、行こう!」


そう言って私に手を伸ばしてきた。



〝名前…呼び捨てだ…。〟


だけど私はつられて無意識にその手を取っていた。




そのあとのことはよく覚えていない。



だって



あのあと見た景色があまりにも壮大で素敵だったから…。






「うわぁ~~~~~~~っ!凄いっ!何これ!こんなに星が沢山っ!!」




私の目の前に壮大に広がるどこまでも続く星空に私は感動した。





私が思った以上に反応したのがよかったのだろうか。雄介は



「だろ?この良さをわかってくれるって奴がいて嬉しい!」



そう言って笑っていた。



「え~~~~?こんなに綺麗なのに何も思わない人がいるの?」




私は何だか勢いで普通に喋れるようになっていた。



「ああ。たまに都会からやってくるんだが、お前みたいな反応するやつは少ないんだ。大体が〝こんな田舎〟って馬鹿にしやがる…。」



「ふぅ~~ん、勿体ないね。私、ここには何回か来てるけど、のんびり出来て好きだよ?だけどこの星空は今回初めてだよ!」



「あ、あぁ…、そうなんだ。」



雄介はその時の私が言った言葉の中の【好き】という言葉に妙に反応していたようだった。



「なあ、お前、いつまでここにいられるんだ?」



「5日間だよ。」


「じゃあさ、毎日遊ぼうぜ?夜は、そうだな。この星空を見よう!」


「うん!」



私はいつも退屈していたので遊び友達が出来た事が嬉しかった。それからは雄介も毎日顔を出してはほとんど一緒に過ごした。お母さんもおばあちゃんも二人で「いい友達が出来てよかったね。」と言った。


雄介と過ごす日々は今までとは違った刺激のある日々だった。昼間は川へ泳ぎに行ったり、初めて魚を釣ったり、せっかく釣った魚をバケツをひっくり返してしまった事とか、夜は蛍を見に行ったりして過ごしたりした事とか、これは中々経験出来ないことだった。




毎日があっという間に過ぎていった。





「とうとう明日帰るのか……………。」


雄介は残念そうにそう言った。



「うん、早いね。」


私もこの楽しかった日々がもうすぐ終わるのだと思うと寂しくなった。



「なあ、また来るよな?」


「多分…。」



「じゃあさ、その時もまた一緒に遊ぼうぜ?」



「うん!」




そして二人で並んでどこまでも続く星空をずっと眺めていた。


「あ…!流れ星だっ!ねえ、雄介、何願った?」


私は雄介の方を見た。



「………………。」



〝……………どうして黙ってるの?どうしてそんな真剣な顔をしてるの?〟


私がそう思った時、雄介の顔が近付いてきて私の唇にそっとキスをした。私は何が起こったのかわからなくてビックリしていたら


「俺、由美子のこと好きだ。大人になったら俺と結婚してくれ。」


いきなり告白された!!




「わ…私は…。」



心臓がドキドキうるさいくらいなっている。私は雄介のこと、どう思ってるのだろう。好きだけどこの好きって雄介と同じ好きなのだろうか…。



私が戸惑っていると雄介はニコッと笑って


「いいよ、返事なんて慌てないよ。次に会った時でも、その次に会った時でも。これから先いくらでも会えるんだし!」


そう言ったから私は静かに頷いて「うん…。」と返事をした。



それから次の日、私達はまた電車に乗って家に帰ることになる。見送りに来てくれていた雄介に


「またね。」


そう言って握手をした。昨日の夜のことがちょっぴり恥ずかしかったけど、それよりももう暫く会えないんだと思うとその方が勝っていたみたいだ。



電車に乗り込んだあと、電車が出発しても雄介は電車を追いかけるようにホームを走っていた。

私は窓から


「雄介、ありがとー!またね!」


と言って手を振った。


雄介も


「由美子、ありがと!またなー!」


そう言って手を振りながらホームの先まで走ってくれた。ずっと、ずっと小さくて見えなくても手を振り続けてくれている気がした。



私は心の中がポッカリと空いたように感じた。それから家に着いて学校も始まって冬休みがやってきてお正月が来て三学期が始まって春休みになって新学期になった。


「ねえ、お母さん。今度いつおばあちゃんのところへ行くの?」


私はお母さんに聞いた。お母さんは一瞬戸惑ったようにも見えたけどすぐに答えてくれた。


「ん?そうね。夏休みに帰ろうかしら。」


「夏休みかぁー。もう一年になっちゃうよ。」


私は早く雄介に会いたいと思った。



そして月日が過ぎてやっと待ちに待った夏休みがやってきた。

昨年と同じように電車でおばあちゃんの家に向かう。


「おばあーちゃん!来たよ!」


元気一杯にそう言うとおばあちゃんは昨年と同じように快く迎えてくれた。


雄介はいつくるかな…。私はドキドキしながら待っていた。だけど2日過ぎても全然来なかった。確か毎日のように訪ねてきてたって言ってたのに…。


私はおばあちゃんに尋ねた。



「ねえ、おばあちゃん。」


私が声をかけるとおばあちゃんは一瞬手ビクッツとして


「なあに?」


と答えた。




「あのさ、雄介は今もよく遊びに来る?」


おばあちゃんは持っていたうちわを落としてしまった。



「もう、どうしたのよ…。はい、うちわ。」


私がおばあちゃんのうちわを拾って渡してあげるとおばあちゃんは明らかにうろたえていた。



「………………?おばあちゃん?どうしたの?」


おばあちゃんは目を伏せた。隣にいるお母さんも口をキュッツとして視線が泳いでいた。



「………………え、何?その反応は何?諭介、引っ越してっちゃったの?」


「……………………………。」



二人とも黙ったまま俯いた。私はその反応に嫌な予感しかなかった。




「どうしたの?ねえ、黙ってたらわかんないよ?!そんなの雄介がいなくなったみたいじゃない!」



私が不安からそう叫ぶように言うと二人はその場で泣き崩れた。




「………………え。」





私はその様子を見て最悪な事を想像してしまった。




「まさか……………!」




お母さんがおばあちゃんに話を切り出した。


「もう無理よ、話ましょう……………。」


するとおばあちゃんが静かに頷いて私に向かって私を真っすぐに見て言った。



「由美子。…よく聞いて。」


私はその様子で話を知りたいけど聞くのが怖くなった。



「………………な…、なによ…。」



声が震えていた。



「雄介は…昨年お前たちが帰ったあと、家に帰る途中で事故に遭ってそのまま…。帰らぬ人になってしまったんだ…。」



「え…、嘘よ。あの日?あのあと?」



私はおばあちゃんから聞いた言葉が信じられなかった。そのあと私はどうしたのか知らない。かなり泣き叫んで暴れたそうだ。そして泣きつかれて眠ったのだとか。

次の日、憔悴したままおばあちゃんに初めて雄介の家に連れて行ってもらった。



仏壇があってそこに雄介の写真が飾られていた。





〝──────────ああ。本当だったんだ…。〟




私はその時、始めてその事実を受け止めた。雄介のお母さんに何だか申し訳ない気持ちになった。あの日、私達の見送りに来なければもしかしたらまだ雄介はここにいたのかもしれないと思うとやりきれない気持ちだった。

だけどお母さんはそんな私の気持ちとは違って


「雄介は最後にあなたと出会えて本当に良かったと思うわ。毎日ずっとあなたとの話をしてくれていたの。きっと幸せだったはずよ。だからあなたは何も気にしないであなたの人生を歩んでほしいの。きっとそれがあの子の願いでもあると思うわ。」


そう言って元気付けてくれた。




それからしばらくは何をする気にもなれず、毎日どう過ごしたかはわからない。ただ必死に忘れようとしていたし、みんなが忘れさせようとしてくれていた。そしておばあちゃんの田舎にはあの日以来行かなくなった。


時々、雄介が告白してくれたあの日の夜の事を思い出しては一人泣き続けていた。だけど流石に高校へ上がる時、もうあれから5年も経てば良き思い出としてもう泣く事は無くなって来た。


その後、みんなは大学へと進学したが私は就職を決意した。その頃にはすっかり立ち直っていた私は職場の先輩と付き合うようになっていた。だけどどこか違和感を持っていた。とてもいい先輩だけど私には本当にこの人の事が好きなのだろうか…。いつもその気持ちがぬぐい切れなかった。




そんなある日、会社の飲み会のあと私は飲み過ぎた自覚はなかったのだけど彼氏が迎えに来てくれていたので駆けだしたのだけど、その時信号は赤だったのに気付いていなかった。



────危ない!戻れ!!


目の前で先輩が何か叫んでいたように思う。



だけど一瞬、何が起こったのかわからなかった。

眩しい光と全身に凄い衝撃を感じたと思ったら何だかふわりと宙を舞ったような気がした。




先輩が私へと駆け寄って来て何かを必死に喋ってる。でも……



────ねえ、先輩…。何を言ってるの?私、それよりも眠いの……………



私は急激に眠くなってきた。もう何を言われても聞こえなくなってきた……………




少し眠ったのだと思う



あぁ…

随分長いこと忘れていたわ……………。



あぁ…今もずっと綺麗な星空ね…

そこにいるのは先輩……………ううん、雄介!


こんな所にいたのね────



私の初恋であり 

今も心の奥底で探していた気持ち……………






ご覧下さりありがとうございます。短編読切ってどれくらいの文字数がベストでしょうか。

さて、今回も現在が舞台です。ちょっと「田舎」「電車」レトロな雰囲気が昭和を思い出すのは私だけでしょうか。最初書き出した時は病気の由美子が死ぬ間際に思い出した、というようにしようと思っていたのに書いてるうちに変わりました。まだまだ下手ですが一つの物語として何かを感じてもらえたなら嬉しいです。

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