第七話 薬草採取②
あの後さんざんステラさんに笑われた後、タリアに関して説明してくれた。
タリアはサリアと似ているがポーションの原料のように何かに使えるということはないらしい。
食べられはするがさほど美味しくもないとのこと。
結局、僕が見つけたタリアは使いどころのないものだったということだ。
その後、もう一度サリア探しを再開した。
僕は周りに目を配ることでしかサリアを探せないため、気を張って探していると
突然立ち止まったステラさんに気づかずぶつかってしまった。
「どうかしたんですか?」
「ちょっと魔力の流れが変わったわ」
「変わったってことは・・・どうゆうことなんです?」
「要するにだんだん濃くなってきてるってこと」
「じゃあ・・・」
「近いわね」
ステラさんはそのまま感覚を研ぎ澄ますように目を閉じた後、「こっちか」と言って歩き出した。
僕もステラさんの後をついていく。
同時にここが最後のチャンスだと思った。
ここで先に見つけられなければ勝負は僕の負けだ。
やがてきれいな水が溜まっている池に出た。
川から流れてきた水がここにたまっているようだ。
「ここ、相当濃いわ」
ステラさんは真剣なまなざしで言う。
僕もその空気にあてられて、体が引き締まる。
そのままステラさんは周りを観察し始めたので、僕も同じようにした。
ここだ。ここで先に見つけないと。
だが、なかなか見つからない。
意外と草木が生い茂っていて探しにくいのもあって、わざわざかき分けながら探さなければならない。
やがて「ここにはなさそうね」と言ってステラさんは池のほとりを歩き始めた。
僕も同じように歩き始め、やがて気になって池を覗き込んだ。
見れば見るほど透き通ったきれいな池だ。
底まではっきりと見えており、背の低い植物が生えている。
魚も群れを成して優雅に泳いでいる。
飽きることなく見続けていると「さっさときなさい!置いていくわよ」と怒られてしまった。
駆け足で近寄ってステラさんに聞く。
「ここにはないんですね」
「なかったわね。まだ、あっちの方も濃いから探してみましょ」
「分かりました」
あまりにきれいなものなので名残惜しいが仕方がない。
そのまま僕らは池を横目に歩き続けるとステラさんが再び立ち止まった。
今度はぶつかることはなかった。
「見て、これ」
そう言ってステラさんが指を差す方を見ると、目の前で地面がなくなっていた。
「地面がないですね」
「覗いてみて、崖よ、これ」
「あ、ほんとうですね」
僕らは落ちないように気を付けながらそーっと覗き込む。
あのまま歩いていたら間違いなく落ちていただろう。
地面は見えているがかなりの高さだ。
僕が落ちたら死んでしまう。
「どうします?引き返しますか?」
「いや、そんなことしないわ。あそこみて」
今度は崖の中腹あたりをステラさんが指差す。
そこにはソリアとみられるものが何本かたくましく生えていた。
「あれ!ソリアですか!?」
「そ。あれがソリア」
「でも・・・どうやってとるんですか」
「そこよね・・・」
角度が急なため、ここからおりることも難しいだろう。
見つけたはいいが持って帰れなければ意味がない。
「なにか方法はないんですか?」
「ないこともないけど・・・」
歯切れ悪くステラさんが答える。
「このまま飛び降りてソリアを取った瞬間に風魔法で飛んでくるっていう方法」
「それ、失敗したらどうなるんですか?」
「地面にたたきつけられて死亡」
「絶対だめですよ」
「そうね。私も死にたくないし」
そんな不確実な方法は取れない。
「魔法で空を飛ぶとかできないんですか?」
「そこまでの魔法は使えないわね。飛行魔法なんて使えるやついるのかしら」
魔法で何とかなるかと思ったがそうもいかないようだ。
「土魔法で足場を作るっていう方法もあるけど・・・」
「この風では難しいですね」
崖には強い風が横から吹き付けており、その方法だと、風の影響を直で受ける。
足を滑らせて転落することになりそうだ。
ただ・・・固定することができればこの方法でも行けるかもしれない。
さっきの方法よりも現実的か・・・。
そう考えて気が付いた。
そうだ。あれを使えば。
僕は背負っていた荷物を下ろし、鞄を固定するために着けていた縄を解く。
「これを使えば行けそうじゃないですか?」
「それで体を固定すれば・・・。うん。悪くないかも」
そう言ってステラさんは縄の強度を確認し始める。
「いろいろなことに使っていたのでボロボロかもしれませんが・・・」
「いや。これくらいなら十分使えるわ。長さもあるし。やるじゃない。ナナシ」
不意にステラさんに褒められたことでどぎまぎしてしまう。
「じゃあ私がこの縄を付けておりるから、ナナシは上で縄を張っていてくれない?」
「分かりました」
僕は縄の端を持って近くの大きな木に巻き付ける。
しっかり結び、ほどけないことを確認するともう一端をステラさんの体に結んだ。
「じゃあちゃんと見ててよね」
そう言って自身に結ばれた縄の強度を確認して徐々におり始めた。
「気を付けてください」
ステラさんは土魔法で足場を作りながら少しずつ降りていく。
僕も縄が切れたりしないように注意しながらステラさんを見る。
やがて半分ほど降りたところで一度ステラさんが立ち止まり叫ぶ。
「ここから風がさらに強くなるから縄ちゃんと見といてー!!」
「分かりましたー!!」
僕はなるべく縄が張った状態でいられるように手に巻き付けて調整していく。
それからステラさんは身をかがめ、なるべく風を受けないようにしながらさらに慎重に降りていく。
そしてついに、ソリアの真横まで到達できた。
ステラさんは片手に縄を持ちながら、そーと手を近づけ、ソリアを手にした。
それを確認した僕はぐっと縄を握る手に力を込めた。
「これからあがってくわー!!」
今度は先ほど作った足場を利用して少しづつあがってくる。
慎重に。慎重に。慎重に。
そうして無事に戻ってくることができた。
「やりましたね!!」
「やった~!!ほんと助かったわ。ありがと、ナナシ」
二人で喜びのハイタッチを交わす。
そして取ってきたソリアをステラさんが見せてくれた。
確かにタリアと違う。
ほとんど見た目は変わらないが、花弁は一枚だ。
やり切った達成感に浸っていると、あることが頭に浮かんだ。
「そういえば、勝負は僕の負けですね」
実際、ステラさんが先にソリアを見つけたのだから、ステラさんの勝ちだ。
「そうね。まぁでもナナシにも手伝ってもらったし・・・引き分けで!!」
「え!?引き分けですか?」
「そ。見つけたのは私だけど、二人でとったんだからいいでしょ!!」
「まぁステラさんがそれでいいなら・・・」
「じゃあそういうことで」
そう言って満面の笑みを浮かべて笑うステラさんはまるで宝石でも見るかのように
ソリアを太陽にかざした。




