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第三話 遭遇

三日目の朝がきた。

僕は目をこすりながら体を起こす。

横にはかまどがあるが、火はまだ消えていなかった。

それを確認して、新しい木を入れる。

火は徐々に大きくなってきた。

これで大丈夫だ。


僕はパチパチと音を立てて燃え続ける火を見ながら深呼吸をした。

森の空気は澄んでおり、深く吸うと気持ちがいい。

心が洗われるようだ。

ふと見上げると青一色の空が広がっていた。

雲一つない青空を見ていると前向きな気持ちになれる。

そうして、感傷的な気持ちになりながら僕は川辺に向かった。

どうやら昨日作った葉の器は耐久性が低いようだ。

また新しいのを作り直してから、改めて飲み水を作る。


少し経つとぐつぐつと沸騰し始めた。

僕はやけどに気を付けながら口に運ぶ。

朝一番の水は熱かったがとても美味しい。

「ぷはぁ~」

情けない声が出てしまうほどに、心は落ち着いていた。

水と同時に残り三つとなった果物を食べる。

疲労はたまっているが、それ以外は昨日よりも調子がいい。

心の余裕ができたからだろうか。


そうして朝の食事を終えた僕は寝床の上で今日することを考え始めた。

太陽を見てみるとまだ、昼間では時間がありそうだ。

ならば今日の目標はこうしよう。


1.森を抜ける

2.食べ物を見つける


森を抜けるのは簡単そうだ。

このまま川が流れる方向に向かって歩いていけばいいからだ。

なら、昨日のように果物がなっている木を探しながら歩いていこう。

食べ物については川の魚を捕まえるということも考えたが、道具がないと厳しそうという理由で諦めた。

手づかみができればいいのだが、川に入った結果、体を冷やして風邪をひくなんてことになるかもしれない。

体調は、森を抜けるうえで考えるべき要素だろう。

僕は考えをまとめた後、火の持ち運び作業に取り掛かった。

あんなに苦労して得た火をやすやすと手放すつもりはない。

そう思って一番に考えたのは松明(たいまつ)だ。

手始めに森の中で木を探し始める。

そうして持ってきた木を一本づつかまどに入れていく。

これで簡単に燃えてしまったらその木は松明に使えない。

なるべく燃えにくい木が適しているのだ。

そうして何本か燃やしたところで、燃えづらい木を発見した。

僕はその木を見つけたところに行き、何本か持っていく。

これで松明の準備は完了だ。


改めて松明用の木を荷物と一緒にまとめて一つにする。

これで出発準備は完了。

僕は川の流れに沿って歩き始めた。


そうして歩き続ける事、半日。

太陽を見るとだいぶ傾いている。

あと少しで、日が暮れるだろう。

ここらで今日の寝床の準備をしよう。

僕は昨日と同じように川のそばの開けた場所を探す。

昨日ほど大きくはないが川辺で寝ることができそうだ。

そのまま、かまどを作り、森の中で木を調達する。

持っていた松明の火を移せばすぐにかまどの完成だ。

昨日とは大違いだ。

僕はかまどで水を作りながら空を見上げる。

空は徐々に暗くなってきており、今は夕方くらいだ。

思えばこうして落ち着けるのは初めてかもしれない。

一日目、二日目と怒涛(どとう)の一日だったせいか、今日がとても物足りなく感じる。

このままでいいのかという不安をいつも抱えてはいるが言うなればその程度だ。

まあ、間違いなく今日のような日が続く方がいいに決まっているのだが。

そんなことを思いながら荷物から果物を取り出し、食べる。

水も、袋に入れて持ち運べるため、直近の問題は食べ物の確保だ。

今日一日川辺を歩いてきたが、果物がなっている木は見つからなかった。

もしかしたら川辺には育たないのかもしれない。

そうなるとこのまま川辺を歩いていたら、やがては食べ物がなくなる。

やはり、果物だけに頼るのは無理があるか。

そう考えて、川の中に目をやる。

魚が二匹、悠然と泳いでいる。

何とかして捕まえることはできないだろうか。


時間もあるし、釣りに挑戦してみるか。

試しに、森の中からしなりのある木を持ってきて、先端に縄を結ぶ。

縄には果物を砕いて固定したものを餌として結んでおいた。

これで釣れるとは思ってはいないが、物は試しだ。

そうして川辺に座り込み、川に糸を垂らしてから数分後・・・。

あっさりと釣れた。

悩んでいた自分が馬鹿に思えてくるほど簡単に。

釣れた魚が何かは分からないが、美味しそうだ。

僕は早速、魚をかまどで焼いてみた。


だんだんと日が沈み、夜が満ちてきたころ、魚は丁度良い加減で焼けた。

期待と興奮をよせて、かぶりつく。

「美味しい」

身が引き締まっていて美味しい。

味付けしなくてもよいと思えるほどだった。

魚と一緒に水も飲む。

ごくごくと飲んだ水は体を潤し、お腹にたまる。

これがとても美味しい。

一日中歩き続けた体に染み渡る。

そうして食事を終えた後、僕は夜空を見ながら、寝床につく。

思えば、こうして夜空を見上げたのも初めてだ。

きれいな星空を眺めながら、僕は眠りについた。


グルゥゥ・・・

何かの鳴き声で僕は反射的に目を覚ました。

冷汗が体を伝う。

暗闇に何かいる。

まだ暗闇に慣れていない目を必死に凝らして周りをうかがう。

そうしていると川辺に生物がいることに気づいた。

暗闇で色は分からないが、牙はとても大きく、体長も僕の倍はあるだろう。

そして、『何か』は、僕を獲物を捕らえた目をしていた。


次の瞬間、僕めがけて『何か』は突進してきた。

半ば無意識に、体を起こし、横に転がる。

ドガァァァ!!!

『何か』が僕の横を猛スピードで駆け抜けていく。

そして再び、こちらに突進してきた。

僕は体を起こし、回避しようとする。

だが、体勢が悪く、すぐには立ち上がれない。

『だめだ!間に合わない!』

そう思った瞬間、僕の目の前にもう一つの影が現れた。

『何か』と『影』が交錯する。

そうして倒れたのは『何か』だった。

呆然としていると、『影』が近づいてきた。


「何でこんなところに人がいるのよ」


そう言った『影』に月の光が当たる。

僕の前に立っていたのは耳の長い、女性だった。




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