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第二話 散策

二日目の朝がきた。

僕はゆっくりと洞の中で身を起こす。

昨日は何もできなかった。

今日はどうしようか。

僕は昨日のことを思い出す。

涙が枯れるほど泣いていたおかげで気持ちはすっきりしていた。

諦めのような気持ちが、やれるだけやってやろうという気持ちに変わっている。

不思議と、昨日感じた不安は薄くなっていた。


さて、これからが重要だ。

一日目は水も、火も手に入らなかったが、それでも得たものはある。

それは周りの地形だ。

森の中を散策して分かったが、僕がいる周りには、川がない。

これではここに滞在していると、ずっと水が確保できない。

雨が降るまで待つという選択肢もあるがそれでは不確定すぎる。

なるべく、恒常的(こうじょうてき)に水を確保できるようにしたい。

それならば、ここから移動した方がいいだろう。


そんなことを考えていると不意におなかがグゥと音を立てた。

昨日は果物を一つ食べてしまった。

残り二つとなった果物を見ながら、僕は一つを手に取り、かじりついた。

じゅわっと果汁が口に広がる。

これで水分補給と食事が少しはできただろう。

だがそれも残り一つだ。

これからは食べ物も探さなければならない。

なら僕が今日やることはこうだろう。


1.水を探すこと(川を探す)

2.食べ物を探すこと(果物を中心に探す)

3.寝床を探すこと(川の近くだとよい)

4.火を起こすこと


頭で整理しながら僕は昨日の夜のことを考えていた。

昨日の夜は恐れていたような冷え込みはなかった。

比較的暖かく、僕のように雑魚寝(ざこね)をしていても問題ない気温だ。

なら、暖をとるために火を起こすことは考えなくてもいいだろう。

なら、火を起こすことはさほど重要でもないように思える。

もちろん、水や食べ物を見つけたときに火があると殺菌できるため、あるに越したことはない。

だがそれも、水や食べ物を見つけてからだ。

よし。今日はこれで行こう。

僕は再度、気合を入れて洞の中を出た。


僕の鞄は破れており使い物にならないため大きな布でまとめて包み、口を縄で結ぶことで持ち運べるようにした。

これで出発する準備はできた。

僕は自分の持ち物と、状態を確認する。

大きなけがはなし、持ち物もなくしていない。

疲労感はあるが、大した問題じゃない。

問題はなさそうだ。

さて、僕はこれからどう進もうか。

周りを見渡しながら考える。

すると、太陽が目に入った。

太陽を使えば、進んでいる方角が分かる。

今は朝だから、太陽は少し高いところにあるが、そちらに進んでいけば、直進できるはずだ。

僕は太陽の方向に歩き始めた。


森の中を歩いていくと様々な発見があった。

まずは生物だ。

翼をもった小さい鳥が群れを成して木の上にとまっているのを見つけた。

さらには兎のような生物も見つけた。

見つけたときにはすぐに逃げられてしまったため、捕まえることはできなかった。

だが、いずれは捕獲することで食料とできるかもしれない。

さらには果物のようなものができている木も見つけた。

取ろうと近寄ったときに、目が異様に飛び出た猿のような生物がこちらを見ていたため手出しはできなかったが、周りに落ちていた果物を拾うことはできた。

これで持っていた果物と合わせると四つになった。

食べられるかは分からないが、あいつが食べていたため、毒はないと思う。

一応、食料調達はできた。


道中、そのようなことがありながら、時々太陽の位置を確認し、進んでいく。

草木をかき分け、一歩一歩慎重に歩いているとどこからか、音がすることに気づいた。

僕は意識を耳に集中させる。

すると、ザー、ザーと途切れ途切れで音が聞こえてきた。

川だ!

僕は音のする方向に向かって進んでいく。

心なしか早足になっている気がする。

そうしてどんどん音が大きくなり、やがて川に到達した。

あまり大きくはないが魚影(ぎょえい)が見える。

「やった!!!川があった!!!」

僕は嬉しくなってつい叫んでしまった。

慌てて周りを確認するが何か近寄ってくる気配はない。

改めて川を観察する。

意外と透き通っているがこのまま飲むのは危険だ。

太陽を確認すると、ちょうど真上に位置していた。

つまり今は、正午くらいということだ。

これだけ早く見つけられてのは運がいい。

まだ時間はある。

次は寝床を探そう。

僕は川の下流にむかって歩き始めた。

そうして少し歩いた先に、ちょっとした河原があった。

ここらで寝るようにしよう。

僕は、さっそく寝床の製作に取り掛かる。

なるべく平らな場所を見つけて、石などを取り除き整地する。

そして森から手ごろな大きさの木を何本か持ってきて、囲いを作る。

地面に布を敷いて、寝床の完成だ。

耐久力もなく、心もとないが、これくらいしか今の僕にはできない。

それに寝床よりも火に時間を使いたかったというのもある。

火を起こすにはそれなりの時間が必要だ。

僕は早速、火おこしに取り掛かった。


まずは火種を移すための枯葉を用意する。

そして、石を円状に積み上げてかまどを作る。

かまどに使う木も持ってくる。

なるべく乾燥していて、小さめの木を多めに持ってきた。

あとはナイフの代わりになるものが必要だ。

僕は河原を歩いてできるだけ鋭利な石を持ってきた。

これで準備はいいだろう。

僕は板状の木に穴をあけて木の棒をまっすぐ立てた。

棒を両手で挟んで力いっぱい回していく。

まっすぐな棒ではないし、木の皮の部分があるため回すたびに手のひらが痛いが、我慢して一気に回す。

できるだけ力を伝えるように姿勢を変えながら、ひたすら回していく。


日も傾き始め、徐々に暗くなってくるころ、ようやく火種ができた。

僕は急いで枯葉に移し、少しづつ息を吹きかけていく。

慎重に、慎重に、慎重に。

そうしていくと徐々に火が枯葉に燃え移り、徐々に大きくなってきた。

僕はそれをかまどに移し、さらに大きな木に燃え移らせていく。

ようやく、火が起こせた。

かまどで燃える火を見つめながら、頬を伝う汗を手で拭う。

やった。これで成功だ。

僕は風で火が消えないようにかまどを改良しながら、ほっと息を吐く。

何とか、ここまでできた。

かなり順調じゃないだろうか。

今日の朝には何もなかったのに、何とか火も水も食料も手に入れた。

安心感が違う。

僕は周りの木から大きめの葉をもぎ取り、組み合わせて器のようなものを作った。

それの中に川の水を入れて火で沸騰させる。

どうやらこの葉は燃えにくいようだ。

そうして待っていると、ぐつぐつと音を立てて水が沸騰した。

これで、飲める。

僕はやけどに気を付けながら葉の器を手に取り、グイっと飲んだ。

「ぷはぁぁーー」

喉の渇きを一瞬で満たしていく。

苦労したこともあって、ものすごく美味しかった。

僕はそのまま果物も口に入れる。

うん。おいしい。

無我夢中で口に入れていく。

そうして一息つくと眠気が襲ってきた。

このまま寝てしまおう。

僕は火が消えないように、木をかまどに足してから寝床で横になる。

そうして目をつむると瞬く間に眠りに落ちた。

安堵の表情を浮かべながら。




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