「もし君がセカイを壊すというなら、僕は……」
セカイを壊しかねない二人ののんびり話だよ!!
「もし君がセカイを壊すというなら、僕は……」
如月キョウは一瞬考え込んで、溌剌と告げた。
「一緒に壊すという選択肢もあるし、或いは壊す世界はいっぱいあったほうが楽しそうだから、作るという選択肢もあるよね」
「へ?」
私は随分、思い切った告白をしたつもりだった。
目の前にあるのはセカイハカイスイッチ。一つボタンを押せば、セカイが吹き飛ぶというシロモノだった。
そして、これを使って世界を壊そうと言ったのだ。
せめて、幼馴染の彼にくらい、言って驚かせてから終わりにしようと思ったのに。
「ふつう、こういうときは慌てるものじゃない?」
そのつもりで話だしたのに、あんまりにも驚かないからむしろ私がびっくりした。
どうしようかなってなんだ。当たり前のように受け入れるんじゃない。
「いや、まぁ、うん。そのスイッチを作り始めた頃からそうなんだろうなぁって思ってたし」
「え、ずっと見てたの?」
「そりゃあまぁ。急に連れてこられたし。でも流石に作る場所は選んだほうがいいと思うよ?」
「そうかなぁ、結構な警備体制のある場所だと思うんだけど」と言って私は辺りを見渡す。
「うん。それはそうだね、どっちかというと不法占拠の真っ最中だよね、ここ」
「でもこのスイッチに似合う場所だと思わない?」
「そうだねぇ……なんでホワイトハウスを不法占拠してるのかはさておいてそうだねぇ……なんか、驚くには一通り驚き終わっちゃったよ」
「そういえば、不法占拠じゃなくて貸してくれたんだよ? 大統領」
ぶい、と指をキメる。
我ながらなんだかいいVサインでうれしい。
「そうだよね、貸してくれてたよね。なんなんだろうね……?」
「代わりに執務やっといて〜って話だったけど、それはそれで終わったし。あとは暇だなーって思ったらこうなっていたわけだよ」
「君が適当にサインしてた紙はなんだったんだろうね」
「さぁ……まぁいいんじゃない?」
まぁいいかって顔を見合わせて、彼は告げた。
「暇だとしても、どうしてそういうスイッチを作ろうと思ったの?」
「……スイ◯チ2が当たらなかったから」
「当たらないとできちゃったんだ」
「他のスイッチで遊ぼうと思ったら、できちゃったの」
「それで、それを押すの?」
彼が心なしか真剣に問いかけてくる。
なんだか驚いてくれないのがざんねんで、私は言った。
「さっきまで押す気満々だったんだけど、君がびっくりしないから嫌になっちゃって」
「そっかぁ、それは良かった。今から頑張ってセカイフクセイスイッチとか作らなきゃいけないかなぁと思ってたけど、そこは問題ないようで良かったよ」
「そのかわりに、他の人を驚かせたいなって」
「いいかもね? 誰を驚かすの?」
「大統領!! さっきも鍵渡すときに大統領が言ってたよ?『世界はもっとスリリングなくらいでいい』って言ってたし、サプライズに飢えてると思うんだ」
というわけで、といいながら、私はスイッチに取り付けるカバーを取り出した。
ででん。
「これは、そこの核ミサイルのスイッチとそっくりに作ったカバーです」
「……わお。うーん、しまっとこうか」
「というわけで、これを置いて帰ろうと思うよ」
「話を聞かなくなっちゃったな、困ったな」
「ついでにサインしてから帰ろっかな」
わたしはふんふん机にサインをして、ぶい、とポーズを決めて、帰路に着く。
それから二人は仲良く、手を繋いで帰りましたとさ。
めでたしめでたし。
鍵を返したりなんなりで一悶着あったのは別の話だし、変なサインを見て「このサインを書いた国を滅ぼしマース」と大統領が言ったのも別の話。うっかりしっかりセカイハカイスイッチの方を押してしまったのも別の話であれば、幼馴染の彼がちゃっかりセカイフクセイスイッチヲとしたのもきっと、別の話。
それから、馬鹿みたいに大きい沼のそばで全世界の人が偶然全員雷に打たれて亡くなってしまったけれどすぐそばのバカデカ沼から全世界のひとびとそっくりのものがでてきて、はたからみれば元の人となんの違いもわからないとき、それはもとの雷に打たれた人たちと同じなのかどうなのかという話が巻き起こったり巻き起こらなかったりしたけど、きっとそれだって別の話……
むしろ別の話の方が気になりつつある作者だよ!!




