episode No.5 壊れたこころ
2つか…。
あの男が父でないのならば
わたくしの本当の父のものなのだろうか?
それはそれで嬉しい。
ベットから降り隣りの部屋からいつもの部屋に戻ると、いつもいるはずの母上の姿が見当たらなかった。
ベットにもいない、いつも腰掛けている鉄格子のまあるい窓にもいない。
ただ魔法陣の効果は消えておらず、鎖もある。
「母上!」
バスルームを開けると日も明るいのにバスタブにぼんやりと服を着たままの母上が浸かっていた。
「あら?どうしたの?リーナ。」
どう考えてもおかしい、
顔や唇が真っ青になっている。
急いでバスタブに手を入れてみる。
「冷たいっ!水ではないですか!早く上がって下さい!」
「何をいってるの?母上はね土の精霊なのよ?水との相性はいい方なの。」
母上はもう…なんて言えない。
わたくしはまだ2歳で母上を無理やりなんてことも出来ない。
「それにね、リーナ私たちは簡単に死なないでしょ?でも人の子って簡単に死ぬんですって冷やさないでと言われたわ。この人の子が死ねば私は里に帰るの。」
その言葉と子供の様に笑う母上を見てわたくしは唖然としてしまった。
きっと身ごもった子が死んでも母上は里に帰れない。あの侍医は言った大地の恵みの澱み、人間の澱み、母上は知っていたはずだ
あの男に捕まった時点でもう…。
「うううっ…。」
床に座りこみ顔を覆う、涙が止まらない
私はなんて非力なんだろう。
「リーナどうしたの?泣いてるの?」
何事もないようにひょいと私の腕をつかむ死人の様に冷えた手。
駄目こんな所で泣いてはいけない、笑わないと。
「お、お腹いたいだけです。冷えました温まりたいです。」
「あらら大変ごめんね。」
ニッコリ笑って、母上は温かいお湯を出し、何を思ったのかわたくしを服のままバスタブにいれた。
「はっ母上わたくし服を脱ぎます。母上も脱いだ方が良いと思います。」
「ごめんなさい、忘れていたわ。」
濡れた服は2歳児には重く中々脱げない。
冷えた手が悴んで震えてしまう。
けれど母上に手伝ってとも言えない。
一生懸命ぬいで入ろうとした時だった。
母上のお腹には何かで殴ったような沢山の青あざ、何かを刺して沢山沢山血が滲んでいた。
「やぁあああっ!」
バシャバシャと慌ててバスルームから出た。
誰か、誰か母上を助けて。
お願い、お願い!
何度も何度も扉を思いっきりノックする。
こんな小さな身体じゃなんにも届かない。
「誰か母上を助けてっ!…お願い。お願いします!」
扉の外から人の声がする、今しかない。
「すいません!母上をたすてください!お願いします誰か!」
いつもの様に扉は開くと思ったが、
何だか違う急な圧を感じる。
「扉から離れろ!」
ビリリと響く声に後ずさり、
扉から走って離れた瞬間の事だった。
ドカンという爆発音とともに扉が破壊された。
「あぁいけませんいけません…。」
アワアワしている猫耳おじさんと意地悪そうな少年の姿があった。




