episode No.4 侍医と2歳児
眩しい光が顔にあたりチカチカする、
髪の毛を綺麗に結った白衣の女性がカーテンを開けていた。
「あら、ミレイ皇女殿下お加減いかがですか。」
「み、ミレイ?」
「はい、ミレイ皇女殿下ですよね?」
わたくしがミレイ…?と少し考え込む。
「はい、オザリナ・ミレイ・マーズユレイ・カタリーナ殿下では無いのでしょうか?」
確かにそんな名前だった気がしないでもない。
「間に合って良かったです。これちょっと食べてみて貰えますか?」
ベットの横に座りブドウを1粒差し出し屈託なく笑う女性、この間母上を診ていた侍医だった筈。なんでブドウ…?と思いながらも言われた通りに口に含む。
んくっと少し齧っただけで苦しくなった。
「危なかった~!妖精になっちゃう所だった、ダメですからね。うすーくなってましたからね?うすーく。」
「えっ?!」
侍医がいうには妖精族と妖精は別種であるけれど同一種でもある。大地からの恵みを飲まず食わずでマナだけを吸い続けると妖精になってしまうらしい。大人の妖精族は数百年数千年と時間がかかるらしいが産まれてまもない妖精族は数日で妖精になってしまうとのこと。
「つまり妖精族は体をもってて、妖精は概念ってこと?」
「それもちょっと~違うんですよ。あー難しいな~。マナで生きるか、大地の恵みで生きるかの違いですかね?」
ふと考え込むこの人は何故こんなに…?
「ちょっと、ちょっと待ってなんで貴方皇室の侍医でしょう?なんでそんな妖精に詳しいの?」
「それはなぁあんと、侍医のサガミは妖精族ですからね〜!サガミとお呼びくださいませ。 」
あははと一礼する美人。皆にはハーフって事にしてるから秘密にして下さいといった。
妖精族ということは母上の仲間で良いんだろうか。あの部屋で過ごしている時この方は母上をみていたし。
「…母上とお知り合いの方?」
「いや知り合いって言いますかそうですね、話さなきゃですねー…。」
そして母上について語ってくれた。
母は妖精の王の娘であるが、元々好奇心旺盛で人好きだった為、人里に現れては人と戯れ大地の恵みを口にしていた。
何千年とマナだけで生きていた妖精王の一族は大地の恵みを口にしても澱みにはならず抜けていく。まだ数百年にも満たない母は恵みが澱みとなり妖精族に近ずいてしまった上に妖精族の里で妖精族の男性と恋に落ち子供を身ごもり完全に妖精族となった。
「後はお察しの通りですよ。」
「えっ待って分からない!続けて。」
わたくしは短い手をバタバタさせながら言う。
「貴方様は妖精族って事です。しかも妖精王のお孫様なのよね!あっ失礼しました。ただその後、妖精族の里で暮らし始めてから姫は攫われました。あの里は人間と交流を持っていましたので…。それでですね、あの男は貴方様を娘と勘違いしている状態ということです。まぁここまでは良かったのですが…今回は本当に人間との子を身ごもってしまい妖精族にも、妖精にもなれない存在になってしまいました。身ごもるということは人間の澱みがどうやっても抜けませんから、妖精族や妖精は同格以外を好みませんので…。」
里へ戻れないと泣いた母上の気持ちがやっとわかった気がした。母上は家族や愛する人の所へはもう戻れない。あの日の絶望を浮かべた顔が忘れられない。
「あの〜。」
シリアスな気分のわたくしに
サガミはモジモジとこちらを伺う様に見た。
「貴方様は輪廻転生されてきたということで宜しいでしょうか?」
母上と約束はしていた。でも、あのときのわたくしはわたくしを忘れつつあったわたしであり妖精には稀にあると言っていた様に思うし…。
「そうね、ただの人間の小娘だどね。」
「そうですよね~。こんな2歳児きもちわる…じゃなくていませんものね。」
あははっと又失礼な笑いを浮かべた。
「そうでしたか〜。人間の娘だったんですね。初めて視た時からついてましたしなんか変だなーって精霊の祝福が2つも。では、大地の実りを食べて早く回復なさって下さいね〜。」
と手をヒラヒラさせながらドアを閉めていった。




