ただ 転んでいるだけ(リボ払い地獄)
✦ ただ転んでいるだけ(リボ払い地獄)
ある朝、男は転んだ。
公園の石畳の上で、何かにつまずいた。
けれど、誰も驚かない。
みんな、同じように転んでいるからだ。
疲労は体を静かにむしばみ、
時間は心を少しずつ削っていく。
スマートフォンの中に未来を閉じ込め、
AIの声に従って呼吸をしている。
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昔、子どもたちは太陽の下で走り回り、
風の音に笑っていた。
いま、画面の光が子どもを育てている。
虫の声を雑音と呼び、
筋肉よりアプリを鍛え、
心よりアルゴリズムを信じる。
太陽の光を浴びないことで、
近視の子どもは30%増加。
光を失った目とともに、
世界を見る力も失われていく。
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遠い国では、
60歳のカブトガニ喰い猿が若返った…、
幹細胞の改造で
40歳代に体力が戻ったという。
科学者は歓声を上げ、
株式市場は
『これでノーベル賞は間違いなし』
と熱狂する。
だが、
その研究は無意味かもしれない。
人間の脳は少しずつ萎縮し、
五感は鈍り、
水の冷たさを忘れてしまったからだ…
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街のベンチには鉄の仕切りが立ち、
疲れた人が横になることも許されない。
行政は言う。
「景観を守るためです。」
けれど本当は、
人を休ませないための仕切りなのだ。
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そして、
国家までもが転び始めた。
円安が続き、株価は爆騰!
人々は笑った。
「高市総理大臣で景気回復だ!」
だがその裏では、
円安ドル安。
日本とアメリカ、
二つの巨体が同じ比率で沈んでいる。
それはまるで、
借金に沈む恋人同士が手を取り合い、
海の底にゆっくり沈んでいく
“通貨の心中劇”…
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100年前、
アメリカではこう囁かれていた。
“Buy now, pay later.”
――「今すぐ買え、
支払いは未来でいい!」
この言葉は時を越え、
文明の呪文になった。
AIも科学も経済も、
今や同じスローガンを唱えている。
❥「今を楽しめ、支払いはあとで。」
だが、
“あとで”はもう
どこにもお金は残っていない。
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世界はリボ払いで延命している。
科学は老いを先送りにし、
経済は破綻を先送りにし、
人間は“心の決済”をどこかに預けたまま暮らしている。
若者もまた、
知らぬ間に転んでいる。
16週間の調査では、
若者の52%が少なくとも一度は転倒…
原因は、めまい・降圧剤・向精神薬、
そして集中力の衰え。
歩幅の小ささは、
筋力と反応力の低下を示している。
脳の伝達速度が鈍り、
体が心より先に倒れてしまうのだ…
スマホを見ながら階段を降りる?
雨の音に気づかず、滑る場所も分からない?
二つのことを同時に処理できない
“デュアルタスク障害”が広がり、
脳の老化は
年齢を問わず進行している。
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アメリカでは10代の57%が
「親よりAIの方が信頼できる」と答えた。
先生よりもAI、
友人よりもAI。
心の拠り所が“データ”に移る時代。
AI信仰の世代は、
感情より効率を信じ、
やがて心を置き去りにする。
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体の70%は水でできている。
だが、いま飲む水の93%からマイクロプラスチックが検出されている。
人工甘味料は神経を鈍らせ、
感覚を曇らせ、感じる力を奪っていく。
日本では、
40代を中心に
毎年約9万人が“行方不明”という…
その中には、
自ら足跡を消す「上白」と呼ばれる人もいる。
過剰な情報と孤独の中で、
若者が静かに消えている…
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❥皆さん、リボ払い、
もう満額になっていませんか?
延ばして、延ばして…
だけど請求書は
どこに行っても追いかけてきますよ…
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❥男は転んだまま、膝の砂を払い、
小さく息を吐いた。
「そうか、私はまだ、倒れている途中なんだ。」
夕暮れの光がベンチの鉄の仕切りをやわらかく照らす。
その光は静かに語りかけていた。
「立てなくてもいい。
まず、
感じなさい」
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そうだよ!
あなたに、
若返りの薬なんていらないでしょ…
必要なのは、
もう一度、
きれいな水に手を伸ばし、
五感を取り戻すこと。
❥ 通貨が沈んでも、
あなたの感じる心は
まだ漂っているじゃないですか…。
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❥「私たちは、
ただ転んでいるだけかもしれない。
けれど、
立ち上がる心までは、
まだ破産していない。」
………
この物語は、
未来を先送りにしてきた社会への静かな問いかけです。
もう一度感じましょう
――自分の呼吸と、
世界の痛みを!




