鯉の仕返し
ある日の深夜、光は池の鯉を見ていた。この池は実家の隣にある旅館の庭園にあり、創業時から人々に親しまれている。紅白の柄が非常に美しく、人々を魅了している。
「きれいだなー」
光は見とれていた。見ていて、とてもかわいいな。人が近づいてくると、エサがもらえると思ってやって来て、口をパクパクする仕草がいい。それを見ていると、エサを与えたくなる。この旅館では鯉のエサである麩を販売していて、宿泊しない人でも買えるそうだ。
と、光は池の端にあるものを見つけた。水をせき止めている木の板だ。こんなものがあるのか。光は少し興味を持った。
ふと、光は思った。この池の水を抜いたら、どうなるだろう。鯉がびっくりするんだろうか? ちょっと試してみたいな。
「そうだ、池の水をみんな抜いてやろう!」
もう夜も遅い。旅館は静かで、宿泊者や従業員はみんな寝ている。池の近くにある大広間は明かりがついているが、誰もいない。
「誰もいないな・・・」
光は板を上げて、池の水を抜き取った。水位が下がり、鯉が驚く。
「へへへ・・・」
その様子を、光は面白そうに見ている。本当はしてはいけない事なのに。光は時計を見た。もう遅い。帰る時間だ。もう寝よう。
「さて、帰ろう」
光は家に向かって歩き出した。その間も池の水は減り続け、ついになくなった。そして、池の鯉はみんな死んだ。
光は夜の道を歩いていた。この辺りはのどかな田園風景が広がっていて、鈴虫の鳴き声がよく聞こえる。とても静かな夜だ。
と、光は何かの気配を感じ、振り向いた。だが、そこには誰もいない。おかしいな。誰かに付きまとわれている雰囲気だ。ここ最近、誘拐事件が多発している。誘拐事件の犯人だろうか? 早く帰ろう。
帰宅した光は、すぐに寝入った。今日は部活でとても疲れた。明日も学校に部活に大変だ。しっかりと寝て、明日に備えよう。
光はぐっすりと寝ていた。だが、大きな音で目を覚ました。こんな深夜に、いったい何だろう。事件だろうか? それ以外の何かだろうか?
「えっ!?」
光は起きて、カーテンに向かった。カーテンの向こうは赤く光っている。火事だろうか? もし、家で火事ならば、早く逃げなければならない。
「何だろう」
光はカーテンを開けた。そこには、赤い龍がいる。えっ、どうして赤い龍がいるの? この世にはいないはずなのに。絵やゲームでしか見た事がないのに。
「ギャオー!」
赤い龍は叫びながら、何かを探していた。何を探しているんだろうか? 光は首をかしげた。
「えっ、龍? どうして?」
と、赤い龍は光と目が合った。光を見て、赤い龍は光を睨みつけた。赤い龍は光に因縁があるようだ。一体何だろう。光は思った。
「グルルル・・・」
赤い龍は体当たりして、窓ガラスを割った。光はうずくまった。どうしてこんな目に遭わなければならないんだろう。何にも悪い事をしていないのに。
「キャーーーーーー!」
赤い龍は炎を吐き、部屋で暴れ始めた。赤い龍は強そうで、とても自分では歯が立たないだろう。光は恐怖で何もできない。
「助けて!」
瞬く間に、赤い龍は部屋中を火の海にした。こんな事で死ぬのは嫌だ。お父さん、お母さん、助けて。だが、両親は助けに来ない。赤い龍が襲い掛かってきた事に気が付いていないようだ。
「ガオー!」
ふと、光は今さっきの事を思い出した。まさか、あの池の水を抜いたのが原因かな? それで赤い龍が怒ったのかな?
「ま、まさか・・・」
光は目を覚ました。そこにはいつも通りの部屋の風景が広がっていた。どうやら、夢のようだ。
「夢か・・・」
光はほっとした。今日もまた平和な1日が始まる。今日も1日、学校に部活に頑張ろう。
と、光はあるものを見つけた。赤い龍のぬいぐるみだ。買った覚えがないし、昨日寝る時にはなかった。
「あれっ!?」
光は立ち上がった時、何か違和感を覚えた。なんと、パジャマが半分焼けただれているのだ。あれっ、あの火災は夢だったのに、どうして燃えているんだろう。光は首をかしげた。
その頃、旅館もいつもの朝を迎えた。旅館の庭園の池は、なぜか元通りになっていた。鯉も元通りだ。まるで何事もなかったかのようだ。
そこに、1人の女がやって来た。この旅館の女将だ。その女将は、鯉が好きで、毎日池の鯉を見ている。
「鯉さん、今日もきれいだね」
今日も鯉は口を大きく開けている。まるで女将と対話しているようだ。
突然、女将は何かを感じた。鯉が一瞬、赤い龍に見えたのだ。女将は首をかしげた。だが、女将はすぐに何事もなかったかのように立ち去った。