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ザマーサレルの最期

最終話となります。

微妙なざまぁですが、ご容赦ください。

Sideザマーサレル


 どうしてこうなった?何がいけなかったんだ?俺は今スピアーダ領主の住むショーケの街の大広場で磔にされている。先ほど、このまま火炙りの刑で殺されることが決定したばかりだ。


「さあ、これでお前への量刑を言い渡した。最後に言い残したことはあるか?」


 そう告げたのはヴィヴィアンの弟であり、現スピアーダ領主であるトレイシーだ。


「なぜ俺がこんな目に遭わないといけない!?しかも関係のないスピアーダ領で処刑される?ふざるけるのもいい加減にしろ!そして今すぐこの身を自由にしろ!」


「まだそんな戯言を宣うか!お前は自分の領地であるビーキルド領を壊滅させ、私の姉であるヴィヴィアンを裏切った!いや、正確にはヴィヴィアンとハンベルト様の仲を引き裂いた!それだけで私の腸は煮えくり返っている!」


 そうか、こいつは元々兄者派だったな。これから火炙りの刑を受けるというのに俺の頭はとても冷静でいた。





 俺の幼少期はずっと兄であるハンベルトの背中を追いかけていた。憧れがあったんだろう。兄者のような男になりたいと思っていた。


 ところが兄者が領主となる教育が始まった途端、全く勉強ができないことが分かった。その代わりに領民と交流を深めることを始めた。


 領民は領主の所有物だ。税金を納め、領主が贅沢できるようにするための駒に過ぎない。そんな駒と交流を深め、仲良くしようとする兄者に嫌気が差した。


 それと同時に兄者と婚約を結び、すでに一緒に住んでいるヴィヴィアンには領地経営の才能があるということが大人達を唸らせていたことから分かった。


 そして兄者達が13歳になり、領地経営の一部を任されるようになるとヴィヴィアンの手腕でどんどん成果が上がっていった。ヴィヴィアンはすごい。でも兄者はただ領民と仲良くしているだけだというのに評価が上がっていく。


 あんな勉強もできない、経営もできない無能が領主になるなんて許されることではない。こうなったら俺が領主になってやる。俺はその野望を叶えるために作戦を立てた。


 父である領主に兄者が全く経営できていないこと、実質ヴィヴィアン一人が経営をやっていることを告げ口するようになった。実際に兄者が領民と交流を深めているところを見せ、ヴィヴィアンが執務室で一人で仕事をしている様を見せた。


 そこからはことがスムーズに進んだ。兄者は馬鹿野郎扱いされるようになり、ヴィヴィアンの手腕はこの俺と一緒であればさらに良くなるはずだと俺を応援する派閥ができるようになった。


 そしてあとは兄者がクーデターを企てているという噂を流し、それを大義名分として兄者を暗殺しようと計画していた矢先、なんとあのヴィヴィアンが接触してきたのだった。


「ねえ、ザマーサレル。あなたハンベルトを暗殺しようと企んでるって聞いたわ。それって本当なの?もし本当ならそれよりももっと面白いことがあるからそれに乗っかってみない?」


「ヴィヴィアン、一つ確認したいが今の発言を考えると君は兄者のことをよく思っていないと考えていいんだな?」


「ええ、そうよ。だから暗殺よりももっと惨めな思いをさせた方がいいと思ってるの。どう?私の話聞いてみない?」


 まさかヴィヴィアンが兄者側ではなく、こちら側につくとは思ってもいなかった。ヴィヴィアンの提案は実に面白かった。確かに暗殺してあっさり殺すより、じわじわと心を抉り続ける痛みを与える方がいいと思った。


 そしてヴィヴィアンは毎晩俺の部屋に来るようになり、俺に愛を囁いた。俺のことを好いてくれるのは好都合だった。兄者を表舞台から引きずり下ろした後、面倒なのがヴィヴィアンなのだ。彼女の領地経営の手腕は高く買われている。兄者がいなくなってもヴィヴィアンが領地経営を担うことになれば俺のやりたい領地経営ができない。


 俺のことを愛しているというのであれば、俺の言うことには従ってくれる。領地経営から手を引くように言えば手を引くだろう。こんなにもあっさりと俺が次期領主として領地を支配できるようになるとは思ってもいなかったが、楽に支配できるならそれに越したことはない。


 そして予定通り兄者を追放し、ヴィヴィアンを妻として迎え、次期領主となった俺は好き放題に領地を支配した。


 この10数年は本当に贅沢の限りを尽くした。ヴィヴィアンを妻として迎えたが、それはあくまでヴィヴィアンをコントロールするため。俺には本命の女がいたのでそいつと愛人関係を結んで常に傍に置いていた。


 ヴィヴィアンは愛人に文句を言うどころか、見ていないことにしてくれていることも非常に俺に取っては都合が良かった。本当に全てが上手くいっていたというのに、その全てを奪ったのが竜人だった。


 人外の存在は元々領地経営の勉強をしている時に知ったが、冒険者がいれば問題ないと学んだ。だから竜人なんて大したことではないと高を括っていたのが間違いだった。実際ヴィヴィアンからも国に救助要請を出した方がいいと言われたが俺にはそこまでのレベルではないと思って断っていた。


 その結果がホロビーの街以外壊滅という最悪の形だ。しかもそれを救ったのが兄者なのだから余計に質が悪い。領地の民は元々兄者と交流を深めていたから兄者を慕っていた者が多かった。だから竜人を倒したことでさらに兄者の評価が英雄と呼ばれるまでに高まってしまった。





「ザマーサレル、お前がちゃんとハンベルト様のように領民の声を聞き、領民の心に寄り添って領地を経営していれば、今回の竜人の対応の悪さにも目を瞑ってくれただろう。しかし!お前は領民に耳を傾けず重税を課し、あろうことかハンベルト様と同様に慕われていたヴィヴィアンよりも愛人を優先した。とっくの昔に領民のお前への評価は最低のものだったのだ!」


 竜人討伐後、兄者は俺に会うこともなくホロビーの街を去った。さらに兄者が滞在中にヴィヴィアンから離縁状を叩きつけられ離縁となり、ヴィヴィアンは兄者と共に行ってしまった。


 それに合わせてビーキルド領の領民は全員がスピアーダ領へと移っていってしまった。そう、俺は領民に見限られたのだ。


 領民はスピアーダ領でトレイシーに訴えかけ、トレイシーが国王に上奏したことで国がビーキルド領をスピアーダ領に併合するように命じた。これにより俺は領主としての立場を失い、これまでの行いを裁かれ今に至るというわけだ。


 竜人さえ現れなければこんなことにならなかった。寿命を全うするまで贅沢な生活ができたのだ。俺は何も悪くない!竜人が悪いんだ!


「全く反省してない顔だな。本当に救いようのない奴だ。さあ、こんな奴はさっさと始末した方がいい。火を放て!」


 火が放たれ、熱が俺の体を蝕む。激痛に苛まれながら俺は意識が途絶えた。





 ホロビーの街を出発してグローリアの拠点に戻ってきた俺達は、ヴィヴィアンとナターシャを鍛えながら冒険者業を順調にこなしていた。そんな時に一通の手紙が届いた。ヴィヴィアンの弟であるトレイシーからだった。


 手紙の内容はビーキルド領がスピアーダ領と併合され、ザマーサレルが処刑されたというものだった。


「どうしたのハンベルト?」


「ああ、ビーキルド領がなくなり、ザマーサレルが処刑されたってさっき届いた手紙に書いてあった」


「そう……。本来ならば私も罰を受けるべきだった。ビーキルド領の人々に対しても、あなたに対しても」


「俺が聞いた話だとお前はザマーサレルに蔑ろにされていて、領地経営もさせてもらえなかったって聞いたぞ?ビーキルド領の人々に対して罪悪感は持たなくもいいんじゃないか?実際お前のこと慕っていたみたいだし」


「そうかしら。そう言ってもらえるなら心が救われるわ」


「でも俺には罪悪感は持ってもらいたいけどな!」


「そ、それは……」


「はははっ!冗談だよ、冗談!もう過ぎたことだ。S級の俺はそんな小さいことを気にする奴じゃないんだ!」


「もう!ハンベルトの意地悪!」


「すまねえ。愛してるよ、ヴィヴィアン」


「わ、私もよ、ハンベルト」


 顔を真っ赤にしたヴィヴィアンが俺の胸へ飛び込んでくる。ヴィヴィアンを抱きしめながら心に誓う。絶対にこいつをどんな脅威からも守ってやるってな。

お読みいただきありがとうございました。

特段これと言って中身のない話となりましたが、急にこんな感じのを書いてみたくなり書いてみました。


感想をいただけると幸いです。

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