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366日の愛の花束  作者: 辛已奈美(かのうみなみ)
1月
9/60

1月8日 モクレン

春の陽射しの中、大学の中庭で育てられている、凛と立つモクレンの木の下で、私たちは出会った。彼の名は蓮、私の名前は咲良。「僕もあなたも、どちらも花の名前をしているね。僕はレンと読むけど、ハスという漢字を書く。あなたは春の満開の花を咲かせるサクラが名前だ。」と彼は笑った。 モクレンの花びらは、まるで彼の瞳のように、深く濃い紫。春の風に揺られ、ひらひらと舞い落ちる花びらは、儚くて美しい、私たちの恋の始まりを予感させた。


蓮は、寡黙で、しかし、優しい眼差しを持つ青年だった。言葉少なに語る彼の想いは、満開のモクレンのように、静かに、しかし力強く、私の心を満たしていった。学部が違ったので同じ授業を受けることはなかったが、私たちは毎日、中庭にあるモクレンの木の下で会った。一緒に弁当を食べ、彼の描いたスケッチブックを眺め、沈黙を共有した。すぐそばにいるのが居心地よく、そこに会話はいらなかったのだ。言葉にならない感情が、春の空気、モクレンの香りと共に、二人の間を満たしていく。


モクレンの花が全部散ってしまったある日、昼休みに彼は私に小さな紫色のモクレンの髪飾りを作ってくれた。彼の温もりを湛えたその髪飾りをつけ、私は彼をおもわず抱きしめた。


初めてのキスは、再びモクレンの花が満開になったころ、どちらからともなくした。モクレンの甘い香りに包まれて、深く、そして柔らかく、私の心に刻みこまれた。


しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。蓮が、大学を卒業し、故郷へ戻る日が迫っていた。大学進学のためにこっちに来ただけで、就職は蓮の地元でする予定になっていたのだ。遠く離れた故郷で、彼を待っている家族がいるし、過疎化している地域を盛り上げるための手段を考えるためにこの大学に来たのだ。


大学の卒業式の翌日、蓮がこっちにいる最後の日、モクレンの木の下で、私たちは言葉なく抱き合った。散り始めたモクレンの花びらは、私たちの涙のように、風に舞っていた。 彼の瞳は、別れを惜しむように、深く紫に輝いていた。再会の約束は、来春のモクレンの開花と共に、私たちの心に自然と芽生えた。来年、この木の下で、私たちはまた、再会できるのだろうか。











1月8日

誕生花:モクレン

花言葉:自然への愛

    持続性

科・属: モクレン科・モクレン属

和名・別名:木蓮 

      木蘭

      紫木蓮

      シモクレン






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