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366日の愛の花束  作者: 辛已奈美(かのうみなみ)
2月
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2月26日 フクジュソウ

早春の陽射しが、まだ雪解けしきらない地面を温めていた。遠くの山々はまだ薄く雪化粧を纏い、空は澄んだ青を描いていた。わずかに暖かさを感じる風が、木々の枝をそっと揺らし、静寂の中に春の予感を運んでくる。


凛とした空気の中、ひっそりと咲く一輪のフクジュソウ。その黄金色の花びらは、まるで春の訪れを告げる灯火のようだ。周囲の草木も目覚める準備をしているかのように、新芽が顔を出している。冬の名残を感じさせる冷たい土の上に、フクジュソウの鮮やかな黄色が一層引き立つ。


その花の前に、一人佇む女性がいた。名は、千秋。彼女は、幼馴染の信二と、この場所で毎年フクジュソウを見る約束をしていた。しかし、信二とはもう一年も会っていない。喧嘩別れをしてしまったのだ。お互い、素直になれずに、大切な言葉を言い残したまま。


千秋は、フクジュソウを摘もうとしたその時、背後から声をかけられた。「今年も、きれいに咲いているね。」


振り向くと、そこにいたのは、まったく予想していなかった信二だった。彼は、少しやつれた様子で、それでも優しい笑顔を見せている。「ごめん。あの時、君の気持ちに気づけなくて…」


千秋は、込み上げてくる涙を堪えきれなかった。心の中では信二に対する感情がぐるぐると渦巻いていた。悲しみ、怒り、そして後悔。数えきれないほどの言葉が喉に詰まり、何も言えなかった。しかし、信二の温かい視線と、手の中に差し出された一輪のフクジュソウが、彼女全てを解き放った。


「私も…ごめんね。ずっと言いたかったんだ。でも、言えなくて…。」


信二の瞳に映る千秋の涙は、二人が抱えた痛みと後悔の重さを物語っていた。「僕もだよ。君が大切だって、本当に伝えたかったんだ。」


言葉は、静かに雪解けの水のように、二人の間に流れ出した。フクジュソウの黄色い光が、二人の仲を繋ぐかのように、柔らかく輝いていた。


長い沈黙の後、信二は静かに言った。「来年も、ここで会おう。」


千秋は、うなずいた。その瞬間、フクジュソウの花びらは、二人の未来を祝福するかのように、春の風に揺れていた。約束の場所、約束の花。フクジュソウは、二人の再生を静かに見守っていた。











2月26日

誕生花:フクジュソウ

花言葉:幸せを招く

    永久の幸福

科・属:キンポウゲ科・フクジュソウ属

和名・別名:福寿草

      元日草

      ガンジツソウ






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