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366日の愛の花束  作者: 辛已奈美(かのうみなみ)
2月
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2月23日 コブシ

春の陽射しが、まだ冷たい空気を温め始めた頃。高校三年生の麻友は、通学路にある老木のコブシの木に、毎朝寄り添っていた。そのコブシの木は、彼女にとって、忘れられない恋の証だった。


毎朝コブシの木に寄り添うたびに、麻友の心は微かに切なく締め付けられた。木のそばに立つと、翔一との記憶が鮮やかに蘇り、彼の温かな手の感触や、心の奥底から溢れ出した幸福感が鮮明に思い出される。彼女の心には、まだその日々が色褪せることなく息づいていた。


一年前に、麻友は同じクラスの翔一と恋に落ちた。翔一は、絵を描くのが得意で、いつもスケッチブックを携えていた。ある日、麻友は翔一がコブシの木の下で、熱心にコブシの花を描いているのを見つけた。純白の花びらと、力強い枝ぶりのコントラスト。翔一の描くコブシは、麻友の心にも春の芽を吹き込んだ。


その時の麻友の心は、未知の感情に揺さぶられた。彼の真剣な表情、手にこもる力強さ、そして花の美しさに魅了され、自分の中に新たな感情が芽生えたことに気づいた。麻友の胸は、初めての恋の予感に弾んだ。


二人は、そのコブシの木の下で、初めてのキスをした。淡いピンク色の花びらが、二人の頬に触れた。しかし、夏休みに翔一は、美術系の専門学校へ進学するため、東京へ引っ越してしまった。最後にあったときに、「また、ここで、一緒に春を迎えよう。」と翔一は言った。


その瞬間、麻友の心には、喜びと寂しさが交錯した。初めてのキスは、まるで夢のように甘美で、その瞬間が永遠に続くことを願った。しかし、別れの言葉を聞いたとき、現実の重さが彼女の心にのしかかった。「また会える」と信じたい気持ちと、翔一が遠くに行ってしまう現実の間で揺れ動いた。


それから一年半。麻友は、コブシの木に毎日訪れ、翔一を想っていた。冬を越え、再び花を咲かせたコブシの木は、まるで翔一の帰りを待っているかのようだった。


麻友は、毎日のようにコブシの木に話しかけ、心の中の孤独を癒していた。彼女は自分自身に問いかけながら、翔一との再会を夢見ていた。「彼は今、何をしているのだろうか?私のことを覚えているのだろうか?」そんな思いが彼女の心を支配した。


卒業式の朝、麻友はいつものようにコブシの木の下にいた。すると、背後から聞き慣れた声がした。「麻友…」。振り返ると、そこには、少し大人びた表情の翔一が立っていた。一年ぶりの再会に、麻友は涙が止まらなかった。


麻友の心は、再び温かさと喜びに満たされた。翔一の声を聞いた瞬間、一年分の孤独と寂しさが一気に解き放たれ、涙が溢れ出した。翔一の顔を見たとき、麻友は彼に対する想いが変わらないことを確信した。


「麻友、待っていてくれてありがとう」と翔一は、少し照れくさそうに微笑み、小さなスケッチブックを差し出した。そこには、麻友とコブシの木が、美しく描かれていた。麻友は、コブシの花びらが舞う中、翔一の手を握った。再び、春の芽が二人の心に芽生えたのだった。


そのスケッチブックを手に取った瞬間、麻友は言葉にできない感動を覚えた。翔一が描いた絵には、彼の想いと共に、彼女への深い愛情が込められていた。コブシの花びらが舞う中、麻友と翔一の心は再び一つになり、春の芽が再び二人の心に芽生えた。











2月23日

誕生花:コブシ

花言葉:友情

    歓迎

科・属:モクレン科・モクレン属

和名・別名:辛夷






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