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366日の愛の花束  作者: 辛已奈美(かのうみなみ)
2月
50/60

2月17日 ボケ

春の陽射しが、まだ冷たい土を温め始める頃。雪解けの川沿いに咲く木瓜の、鮮やかな紅色が、遥から見ていた幸太郎の心を掴んだ。


幸太郎は、この村では珍しい、東京から来た建築家であった。都会に出るなどして、人が住まなくなった、古民家の再生を請け負い、ひっそりと暮らしていた。都会の喧騒とは無縁の、静かで穏やかな日々だった。だが、心には、満たされない何かがあった。


そんなある日、木瓜の傍らで、一人の女性に出会った。彼女は、百合子。村で代々続く木瓜農家の娘で、幸太郎の古民家再生プロジェクトに、最初は反対していた人だった。新しい人が来ることはうれしいが、だれかれ構わず来てしまう不安や、今風の家にしてしまうと、この村の伝統が壊れる恐れなどが理由であった。


しかし、幸太郎の熱意と、古民家を再生しても昔ながらの伝統的な形や文化はそのままであること、繊細な手仕事などに触れるうちに、百合子の心は少しずつ変わっていった。彼女は、幸太郎に村の歴史や、木瓜の育て方、そして先祖代々受け継がれてきた木瓜への想いを語り始めた。


百合子は、村の伝統を守り続けるグループのリーダーとして生きてきた。村には何の特色もないと考え、昔ながらの暮らしをする珍しいところという文化が消えると、村自体がなくなってしまうような、漠然とした不安を抱えていたのだ。そのため、最初は幸太郎を警戒していた。しかし、幸太郎の誠実さ、そして古民家に息づく新しい命への情熱、この村の文化を尊重する気持ちは、百合子の頑な心を溶かしていく。また、幸太郎が再生した古民家は、昔ながらの伝統的なところはすべて守りながら、より生活しやすくなっていた。その家に住みたいと文化を尊重して移住する人が出てきたことで村が消える不安も薄れてきた。


幸太郎は、百合子から木瓜の剪定を教わり、共に汗を流す中で、村の温かさに触れた。都会では得られなかった、人と人との繋がり、そして、自然と一体となる喜びを感じることができたのだ。


木瓜の赤い花びらが、春の風に舞い上がる頃、幸太郎は百合子に想いを伝えた。木瓜の甘い香りに包まれ、二人はゆっくりと、互いの心を確かめ合った。都会から来た建築家と、村の伝統を守る娘。異なる世界から来た二人は、木瓜の花のように、鮮やかに、そして力強く、新しい未来を築き始めていた。











2月17日

誕生花:ボケ

花言葉:先駆者

    妖精の輝き

科・属:バラ科・ボケ属

和名・別名:木瓜






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