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366日の愛の花束  作者: 辛已奈美(かのうみなみ)
2月
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2月16日 セントポーリア

セントポーリアの花言葉は「小さな愛」。陽だまりに置かれた、紫と白の可憐な花は、まさにその名の通りの美しさだった。咲いているセントポーリアを眺めていたのは、カフェの店主をしている志保だった。彼女は、隣席に座っている常連客、亮太のことを密かに想っていた。


亮太は、いつも同じ席に座り、同じセントポーリア柄のマグカップでコーヒーを飲む。このカフェでは、好きなマグカップを選ぶことができるのだが、亮太は必ず同じカップを使うので、志保は亮太がいつでも使うことができるように、分けて置いていた。亮太は、寡黙で、笑顔は滅多に見ないけれど、志保は彼の温かい眼差しに惹かれていた。毎日、彼が来るのを待ち、彼が去った後には、彼の残したコーヒーの香りを嗅ぎながら、心の中で密かに恋心を育てていた。


ある日、亮太がいつものようにカフェに入ってきたが、様子がおかしい。いつもの静けさがなく、落ち着きがない。志保は、彼が少しだけ落ち込んでいることに気づいた。勇気を振り絞り、いつものようにコーヒーを淹れながら、声をかけた。


「何かありましたか?本日はいつも違い、少し落ち込んでいるように見えます。」


亮太は驚いたように志保を見つめ、そして、ためらいがちに口を開いた。「実は…彼女と別れてしまったんです。」


亮太の言葉に、志保の心臓はドキリと跳ねた。しかし、同時に、彼の悲しみに胸が締め付けられた。彼女自身ではない、誰かの悲しみを、志保は初めて深く感じていた。


「そうですか。」と、志保は静かに言った。それ以外何も言えなかった。言葉にならない感情が、胸の中で渦巻いた。


その日、志保は亮太に、いつもより少し多めに砂糖を入れたコーヒーを淹れた。そして、レジに置かれた、小さなセントポーリアの鉢植えを、そっと亮太に差し出した。「よかったら、お持ち帰りください。」と呟いた。


亮太は、驚きと、何かを悟ったような表情で、その小さな鉢植えを受け取った。その瞬間、志保は、自分の想いを伝える勇気はなくても、彼の心に寄り添うこと、小さな愛を贈ることが出来たことに、静かな喜びを感じた。セントポーリアの花言葉のように、小さな愛が、二人の間に芽生え始めたのだった。











2月16日

誕生花:セントポーリア

花言葉:小さな愛

    親しみ深い

科・属:イワタバコ科・セントポーリア属

和名・別名:アフリカスミレ






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