2月9日 ストック
凛とした紫色のストックの花束を抱え、穂乃花はカフェの窓際に座った。外は、冷たい雨が降っていた。待ち合わせは、午後三時。すでに五分過ぎている。彼は、今日の待ち合わせのカフェには、来ないかもしれない。そう確信しつつも、諦めきれずに、穂乃花はスマホを握りしめ、何度も画面を確認する。
彼、航太とは大学のサークルで出会った。少し遅れて、サークルに参加した彼女に、代表の代わりに、いろいろ教えたのがきっかけであった。優しくて、いつも笑顔で、周囲の様子をよく見ていて、穂乃花はすぐに彼の虜になった。付き合って半年。順調な日々だったはずなのに、最近は連絡が途絶えることが増え、彼の態度もどこかよそよそしくなっていた。
「僕たち、別れよう。」
その言葉が、彼の口から発せられるのを、穂乃花は想像しては、胸が締め付けられる思いだった。航太は、彼女にとって初めての恋だった。初めてのキス、初めてのデート、初めての全てが、彼との思い出で彩られていた。
三時十五分。彼はまだ来ないので、穂乃花は、半分諦めかけていた。30分になっても来ない場合は帰ろう、そう心に決めた。その時、カフェのドアが開き、雨に濡れた航太の姿が見えた。穂乃花は、思わず立ち上がろうとしたが、足が震えてうまく動かない。
「ごめん、遅れた。」
航太は、申し訳なさそうな顔で言った。そして、穂乃花の目の前に、紫のストックの花束を差し出した。
「これは、もしかしてストック?どうして?」
穂乃花は、少し震える声で尋ねた。ストックの花言葉は「豊かな愛」。航太は、穂乃花の瞳を見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「僕は、ずっと、君と一緒にいたい。だから、君に、この花を贈ることにした。花言葉を好きな君なら、言葉でいうよりも、花で伝えるほうが、より伝わると思ったんだ。この気持ちを受け取ってくれるならば、この花束を受け取ってほしい。」
穂乃果は、その花束をそっと受け取った。雨は止んで、カフェの窓から、夕焼けが綺麗に見えた。穂乃花の頬には、涙が流れていた。それは、悲しみの涙ではなく、幸せの涙だった。航太の言葉と、紫のストックの花束が、彼女の心を温かく満たした。初めての恋は、まだ終わらない。
2月9日
誕生花:ストック
花言葉:愛の絆
豊かな愛
科・属:アブラナ科・アラセイトウ属
和名・別名:アラセイトウ




