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366日の愛の花束  作者: 辛已奈美(かのうみなみ)
2月
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2月7日 ギンバイカ

「ギンバイカの花言葉は、『愛』と、『愛のささやき』だったよね。この花を渡したら、少しは昔のように、戻ることができるかな。」


真白なギンバイカの花束を抱え、彩香は呟いた。明日、恋人である志郎との一周年記念日だ。彼が大好きなギンバイカを、早朝に自ら摘んできた。露に濡れた花びらは、まるで志郎の澄んだ瞳のようだ。


しかし、彩香の胸には小さな不安が芽生えていた。最近、志郎の態度が少し冷たくなった気がするのだ。仕事が忙しいとは言っていたが、連絡もほとんどとれなくなった。デートもなかなか予定通りにいかず、当日になって仕事があると断られたり、デートの途中で、急な予定ができたと言って帰ったりだ。


記念日当日、志郎はとても疲れた様子で現れた。「ごめん、彩香。今日は、少しだけ、ゆっくりさせてくれないか。とても疲れていて。」と、彼の目はいつもと違う、どこか虚ろな輝きを放っていた。確かに、とても疲れていそうだという気持ちと、久しぶりに会うことができてうれしい気持ちと、いつもいろいろ理由をつけて、デートを楽しむことができないのに、わざわざ『今日は』とする必要がないと感じるなど、心はかなり複雑であった。


彩香は、用意していたギンバイカの花束を差し出した。なんと表現していいかわからない顔で、無言で受け取った志郎は、花束をそっと胸元に当てた。その瞬間、志郎の胸ポケットから一枚の女性の写真が落ちた。見覚えのない、美しい女性だった。志郎の家族には会ったことがあるので、家族ではないことは断言できた。彩香は息を呑んだ。


ギンバイカの白い花びらは、志郎の胸元で、鮮やかな朱色に染まったように見えた。彩香の涙が、白い花びらに落ちた。清らかで繊細だったはずの愛は、残酷な現実の赤に染まり、崩れ落ちた。ほとんど連絡が取れなくなったこと、家族ではない美しい女性の写真を胸ポケットに入れていたこと、デートがあまりできなくなったこと。全部が一つにつながったような気がしたのだ。


胸ポケットの写真について、必死に言い訳する志郎の言葉は、彩香の耳には、何も届かずに、遠くへ、遠くへ消えていった。残されたのは、ギンバイカの甘い、そして苦い香りだけだった。











2月7日

誕生花:ギンバイカ

花言葉:愛

    愛のささやき

科・属:フトモモ科・ギンバイカ属

和名・別名:マートル

      銀梅花






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