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366日の愛の花束  作者: 辛已奈美(かのうみなみ)
1月
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1月3日 クロッカス

数本のクロッカスが、マンションの庭の陽だまりの中でひっそりと咲いていた。小さな紫色の花は、春の訪れを告げるように、可憐に頭を垂れていた。その傍らには、いつも少年、浩がいた。


浩は、クロッカスが大好きだった。毎朝、高校に登校する前や高校から帰ってきたときにクロッカスを訪ね、そっと土をほぐし、水をやる。その姿は、まるで恋人を見守るように優しく、献身的だった。浩の心には、同じマンションに住んでいる幼馴染みの美咲への淡い恋心が芽生えていた。その淡い恋心を大好きなクロッカスへも注いでいたのだ。美咲は、活発で明るい女の子である。おとなしく人づきあいが苦手な浩とは正反対の性格だった。


ある日、マンションの庭で走り回っていた美咲が転んで膝を擦りむいた。心配した浩は、いつもクロッカスの傍らで話していたように、美咲のけがを消毒液とばんそうこうとで優しく治療した。連に治療をしてもらった時、美咲は、浩の温かい手のひらを感じ、美咲を見る彼の眼の奥に秘められた深い愛情に気づいた。


けがの手当てをきっかけに、美咲は連を意識し始め、浩の優しさに惹かれていった。連の優しさは、クロッカスに水をやる時と同じ、静かで温かい優しさだった。しかし、その優しさは、美咲には重く感じられる時もあった。それと同時に浩のクロッカスへの愛情のように、美咲は、彼からの愛情に人同士の恋愛感情とは少し違うような距離も感じていた。


「浩君は庭に生えているクロッカスの花みたいだね」ある日、美咲は言った。浩は首を傾げた。「それはどういう意味?」


美咲は、クロッカスの可憐な姿、そしてその控えめな美しさを見つめながら答えた。


「連君は静かで、でも、すごく強い。そして、誰かのことを深く愛しているね」


その言葉が、浩の心に深く刺さった。美咲は、彼の心の奥深くにあるクロッカスへの愛情、そして美咲への愛情を、ちゃんと見てくれていたのだ。浩は、自分の気持ちを伝えることにした。クロッカスを背景に、春風に揺れる紫色の花びらのように、彼の気持ちは、静かに、そして力強く、美咲へと届いた。


「美咲、僕は美咲のことが大好きだ。恋人になってほしい。」


その言葉を聞いて美咲は微笑んでうなずいた。











1月3日

誕生花:クロッカス

花言葉:青春の喜び

    切望

科・属:アヤメ科・サフラン属(クロッカス属)

和名・別名:ハナサフラン






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