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366日の愛の花束  作者: 辛已奈美(かのうみなみ)
2月
39/60

2月6日 シャクヤク

初夏の陽射しの中、咲くシャクヤクは、まるで彼女のようだった。大きく、鮮やかで、そしてどこか気高く。僕は、家族の誕生部プレゼントを買うために、たまたま入った花屋の片隅で彼女と出会ったその日、一目惚れした。


彼女は、凛とした美しさで、買い物客や、通行人など、誰からも注目を集めていた。名札には「雪城」とあった。雪城、その名前にふさわしい、美しい女性が、シャクヤクの花のように、そこに存在していた。だが、彼女は道路から見かけるときも、花屋の中でも、いつも一人だった。誰とも言葉を交わさず、ただ静かにシャクヤクを見つめていた。


ありったけの勇気を振り絞り、僕は彼女に話しかけた。「そのシャクヤク、本当に綺麗ですね。いつもジッと見ておられますが、その花が好きですか?」彼女は、少し驚いたように僕を見た後、何も言わずに静かに微笑んだ。その笑顔は、シャクヤクの花びらのように、柔らかく、そして美しかった。


それからというもの、僕は毎日、花屋に通い、彼女に話しかけた。雪城と話すことができる時間は、ほんの少ししかなかった。僕も仕事があるし、彼女もあまり人と話そうとしないからだ。それでも、シャクヤクの世話の仕方、好きな花の話題、毎日の些細な出来事、様々なことを二人で話した。だんだん、彼女の優しい笑顔と、静かな言葉に、僕は惹かれていった。


ある日、雨上がりの花屋で、雪城が一人、シャクヤクの枯れた葉を丁寧に摘んでいた。僕は、そっと彼女の傍に立ち、「僕も手伝いますよ。枯れた葉を摘んだらいいですよね。」と声をかけた。


一緒に作業をしていると、彼女は、花屋の片隅で、売り物ではない、シャクヤクを育てている理由を話してくれた。亡くなった祖母が、一番好きだった花だから、と。その言葉に、彼女の深い愛情を感じた。


夕暮れ時、花屋を後にするとき、雪城は、少し照れながら、小さなシャクヤクの苗を僕に手渡した。「話を聞いてくれて、手入れを手伝ってくれて、ありがとう。」と小さな声で呟き、彼女は静かに去っていった。僕の胸には、シャクヤクの甘い香りが、そして、雪城の温かい気持ちが、満ち溢れていた。その苗は、僕たちの恋の始まりを告げる、小さな芽だった。











2月6日

誕生花:シャクヤク

花言葉:はじらい

慎ましさ

科・属:ボタン科・ボタン属

和名・別名:芍薬

      ピオニー






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