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366日の愛の花束  作者: 辛已奈美(かのうみなみ)
2月
38/60

2月5日 ワスレナグサ

陽気な春の風が、桜並木を揺らしていた。その中で、最も大きな桜の木の下にある、ベンチに座る茜は、掌に握り締めた小さな青い花、ワスレナグサを眺めていた。それは、一年前に別れた恋人、隼人から貰った最後のプレゼントだった。


隼人との出会いは、この桜並木だった。初々しい恋は、燃え上がる炎のように激しく、忘れられない日々を二人に与えた。二人は近くの会社に勤めている関係で、暇さえあれば一緒にいた。仕事の休み時間がかぶれば、一緒に食事をし、仕事が休みの日にはデートをするなどしていたのだ。


しかし、隼人の遠くの町への転勤が決まった。二人にとって、遠距離恋愛は想像以上に辛かった。今まで一緒にいた時間が長い分、寂しさが募り、互いに連絡を取っていた。しかし、遠くにいて、会えないからこそ、互いについて、わからないことや、意図したことと違うように通じてしまうことが増えた。その結果、たくさんすれ違い、たくさんの誤解もしてしまい、そして最後は、静かな別れとなってしまった。別れても二人とも、互いのことが好きだったのだ。


「できたら、僕のことを忘れないでほしいな。今までありがとう。大好きだよ。」と、隼人はワスレナグサを茜に手渡した。その言葉は、彼の優しい瞳に宿る切なさと重なり、茜の胸を締めつけた。一年経った今も、その言葉、その瞳、そしてこの花は茜の心に深く刻まれていた。


二人が別れたから数年たった、今日は、隼人が転勤した町から、一通の手紙が届いた。薄っすらとインクの滲んだ便箋には、彼の温かい字が綴られていた。「お久しぶりです。元気にしていますか。急な連絡ごめんなさい。桜の季節になったので、君に会いたくなりました。ワスレナグサは、まだ咲いていますか?」


茜は、手紙を読み終えると、握り締めていたワスレナグサをそっと桜の木の下に置いた。そして、深呼吸をして、隼人が帰ってくるであろう駅へと、ゆっくりと歩き出した。忘れかけていた恋の温もりを、再び胸に感じながら。彼の希望でもあり、あの日の約束でもある、「彼のことを忘れない」ということを思い出しながら。 ワスレナグサは、忘れさせないために、そして、再び出会うための、小さな青い証だった。











2月5日

誕生花:ワスレナグサ

花言葉:私を忘れないで

    真実の友情

科・属:ムラサキ科・ワスレナグサ属

和名・別名:勿忘草

      忘れな草

      ミュオソティス

      ミオソティス

      わすれな草






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