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366日の愛の花束  作者: 辛已奈美(かのうみなみ)
1月
3/60

1月2日 ツバキ

冷たい風が頬を撫でる、冬の始まり。大学の構内を歩く私の視線は、いつも中庭のツバキの木に注がれていた。深紅の花を咲かせるその木の下で、彼はいつもスケッチブックを広げていた。彼を見るためにできる限り中庭を通過するようにしていた。


彼の名前は裕也といい、大学の美術部の先輩で、高嶺の花のような存在である。私は遠くから彼を眺めることしかできなかった。まるでツバキの花のように、凛として美しい彼に触れる勇気なんて、私には到底なかったのだ。


ある日、いつものようにツバキの木の下を通り過ぎようとすると、強い風が吹き、私の手からレポートが舞い上がった。何枚もの紙が宙を舞い、まるで白いチョウの群れみたいだった。諦めてしゃがみ込む私に、彼が声をかけてきた。


「大丈夫ですか?」


差し出された手にのっている彼が拾ってくれた中庭に散らばってしまったレポートを受け取る。緊張で心臓が激しく鼓動する。


「あ、ありがとうございます…」


彼は微笑んで、「ツバキ、綺麗ですよね」と呟いた。


「はい、大好きです」


勇気を振り絞って答えた私に、彼は少し驚いたように目を見開いた後、優しく微笑んだ。


「脈絡のないことを言ってしまってごめんなさい。僕もツバキが好きです。特に、この濃い赤色のツバキが大好きです。」


それから、私たちは中庭のツバキの木の下でよく話すようになった。彼の描く絵は繊細で、それでいて力強かった。彼の夢は、いつか個展を開くことだそうだ。私は彼の情熱に心を奪われた。


冬が終わり、春の訪れと共に、ツバキの花は散り始めた。鮮やかな赤い花びらが地面を彩る中、彼は私に一枚の絵を差し出した。それは、ツバキの木の下で微笑む私の絵だった。


「君を描いてみました。」


少し照れくさそうに言う彼。その絵には、私が今まで見たことのない、優しい笑顔の私が描かれていた。


「綺麗…ありがとうございます。」


胸がいっぱいになり、言葉が詰まる。


彼は私の手を取り、「今度、一緒に絵を描きませんか?」と聞いてきた。


繋いだ手の温かさと、彼の優しい眼差しに、私は小さく頷いた。散りゆくツバキの花びらが、まるで祝福の雪のように舞い降りた。私の恋も、このツバキのように、美しく咲き始める予感がした。











1月2日

誕生花:ツバキ

花言葉:控えめな素晴らしさ

    気取らない優美さ

科・属:ツバキ科・ツバキ属

和名・別名:椿

      カメリア






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