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366日の愛の花束  作者: 辛已奈美(かのうみなみ)
1月
25/60

1月24日 おもと

おもとの鉢は、私が祖母から譲り受けたものだった。深い緑の葉は、何十年も変わることなく、静かに時を刻んでいた。その鉢植えの前に、私はいつも彼と座っていた。


彼とは、高校時代の同級生である直樹だ。優しくて、いつも私のことを気にかけてくれる、穏やかな人だった。卒業後も、時々、おちこんでいるときを見計らったかのように、私の実家に訪ねてきて、祖母自慢のおもとの前で、近況を報告しあった。


ある日、直樹は真剣な顔で言った。「実は、転勤が決まったんだ。海外に行くことになった。いつ日本に戻ってくることができるのかわからない。」驚きを隠せない私に、彼はゆっくりと、おもとの葉を指さしながら続けた。「このおもとみたいに、君とずっと一緒にいられると思っていた。でも、そうじゃないんだ」。


彼の言葉は、まるで、静かに佇むおもとの葉の緑のように、深く胸に突き刺さった。私は何も言えなかった。ただ、おもとの葉の緑を、彼の顔に重ねて見ていた。


転勤のお祝いに、祖母から譲り受けたおもとを贈ることにした。引っ越し祝いの縁起物として、おもとがあることを知ったからだ。海外に行っても無事でいてほしいと思っていた。また、自分が大切にしていたものを、彼に持っていてほしいという思いもあった。


転勤の日、私は彼を空港まで見送りに行った。別れ際に、彼はおもとの鉢から小さな株を一つ、そっとえり分けた。「この小さな株は、君が持っていてほしい。再会するまで、僕と君の二人が幸せであることを祈って。」受け取った小さな株は、彼の温もりを湛えていた。


彼は遠くへ行ってしまった。連絡は、時々メールで近況を報告する程度だ。それでも、彼の温もりは、彼を送っていった日に、帰ってきてすぐに鉢に植えた、とても小さくなったおもとを通して、私の中に生き続けていた。一年後、私は彼が今生活している国へ行った。彼に会うためだけではなく、おもとの葉を、彼の住む街の土に植えるためだ。


彼が住んでいるマンションの窓から見える小さな庭に、私は少しだけ成長したおもとの株を植えた。その株は、やがて根を張り、新しい芽を出し始めた。彼の温もりを閉じ込めた、新しい生命。それは、私たち二人の、永遠の恋の始まりだった。











1月24日

誕生花:おもと

花言葉:長寿

科・属:ユリ科・オモト属

和名・別名:万年青

      縁起草

      辛抱草






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