戦いの終結
光が止み、ダメージを負ったロードは、痛みに耐えながら、ゆっくり立ち上がった。
辺りを見回すと、仲間が全員地面に倒れていた。
ロ「…マオ…ルク…フレイシー…ディムア…。」
仲間たちの名前を静かに呼びながら、ロードは彼らの元へ歩み寄ろうとした。
しかし、ロードの背中に、ミアノエルが突き出した杖が当たる。
ロ「…。」
ロードは動きを止め、一瞬の沈黙が流れる。
ミ「…降参して…メア族を私に殺らせてくれるのなら…あなたを生かしてあげますよ…!!」
ロードにそう呟くミアノエルの声も、全身も、今までのダメージで震えていた。
ロ「…お断りします…。ディムアは…僕が最後まで護ります!!!」
そう叫んだロードは、ミアノエルが唱えるより先に、ライジンを唱えた。
ミアノエルと、仲間たちに攻撃を仕掛けようとしていたスパイシードラゴンに、巨大な眩い雷が直撃した。
ミ「あぁぁあぁあぁぁっ!!!」
ス「グァァァァァアァッ!!!」
ミアノエルとスパイシードラゴンの悲鳴が、辺りに響き渡る。
そして、ミアノエルとスパイシードラゴンは地面に倒れた。
ロ「…!」
その光景から目を離し、ロードは仲間たちに順番にリカバリーを掛ける。
ミ「…はぁっ…はぁっ…。こ、こんな、ところで…死ぬわけには…いかないん…です…よ…。…あの…メア族と…あの男を…殺す、までは…!!」
朦朧とする意識の中、ミアノエルは、杖を握りしめ、仲間たちにリカバリーを掛けているロードを睨み付ける。
そのとき、ふらふらと起き上がったスパイシードラゴンが、ゆっくりとミアノエルに歩み寄る。
ス「グルルル…。」
弱りきっているスパイシードラゴンは、ミアノエルを静かに見据える。
ミ「…スパイシードラゴン…。私からの…命令…です…。あの者たちを…殺しなさい…。」
今にも消えそうな声で、ミアノエルはスパイシードラゴンにそう声を掛けた。
その声を聞いた途端、スパイシードラゴンは、ミアノエルの身体に、自らの鋭い爪を立てた。
ミ「…っ!!な、何を…!?スパイシー、ドラゴン…!!殺す、のは…私では、ない…ですよ…!!」
慌てたミアノエルがそう訴えるが、スパイシードラゴンは、彼女を冷たく見下ろし、今にも爪が彼女の身体を貫通しそうだった。
ミ「…いっ…いやぁっ…!!!」
消えそうな悲鳴を上げたミアノエルが、死を覚悟したときだった。
デ・フ「はぁぁっ!!」
ディムアがマリストライデント、フレイシーがホーリーランスを同時に唱え、スパイシードラゴンに、闇色の大きな矢と、眩い光の大きな矢が、同時に突き刺さった。
ス「ガァァァァァァァァ…!!!」
スパイシードラゴンは大きな悲鳴を上げ、大きな地鳴りとともに床に倒れた。
そして、やがて消滅した。
マ「…やったぁ!!倒したよ!!」
ル「よっしゃー!!」
マオとルクは、スパイシードラゴンを倒した喜びで声を上げ、手を取り合った。
フ「…みんな無事でよかった…!!」
フレイシーは胸を撫で下ろす。
デ「…!」
スパイシードラゴンが消滅した場所の地面に落ちている、赤く輝く石に気が付き、ディムアは拾い上げる。
ロ「…レッドストーンです。ついに…最後の5つ目のアイテムですね。」
デ「うん…。やっと、終わったな。」
その赤い石がレッドストーンだと確認したロードとディムアは、穏やかな笑顔を見合わせた。
そして、5人は、瀕死状態のミアノエルに歩み寄る。
ミ「…スパイシー、ドラゴン…。最後に、私に反抗、するなんて…!…う…っ、うぅっ…!!」
仰向けで倒れた状態のまま、ミアノエルは涙を流していた。
フ「…ミアノエルさん…。」
そんな彼女を、フレイシーは心配そうに見つめる。
ロ「…。」
一瞬の沈黙の後、ロードはミアノエルの身体に触れ、リカバリーを掛けた。
マ「…えっ!?ロード、ミアノエルを助けちゃうの…!?」
ル「それは、さすがに危なくないか…!?」
ロードのまさかの行動に、マオとルクは、慌てた様子を見せている。
ロ「もう彼女に戦う力は残っていないと思うので、少し回復させても大丈夫です。」
仲間たちにそう声を掛けたロードは、少しの時間ミアノエルにリカバリーを掛けた後、手を離した。
ミ「…どうして…敵の私を助けたのですか…?」
ミアノエルは起き上がり、静かにロードに問い掛ける。
ロ「…正直に言います。僕は、ディムアの命を狙い、何人ものメア族の命を奪ってしまったあなたのことが、本当に憎いです。」
そう言ったロードは、ミアノエルを悲しい瞳で見つめる。
ミ「…だったら、殺せばいいじゃないですか…!私は、取り返しのつかない程、メア族を殺したんですよ…!?こんな危ないラファ族なんて、この世から消えた方が良いでしょう!?」
ロ「いいえ。消えた方がいい命など、この世には存在しないです。メア族もラファ族も人間も、みんなそれぞれ尊い命を持っているんですよ。そういう考えを、ミアノエルさんも今後必ず持てると思うんです。」
ミ「…尊い、命…。」
真剣な表情のロードの言葉を聞き、ミアノエルの心は揺れ動いている。
フ「…メア族の命を奪ってしまったのは、とても辛い思いをして、感情をコントロール出来なくなってしまったからなのよね…。苦しかったよね…。でも、ミアノエルさんなら、きっと反省して、更生できると思うから…。」
ミアノエルの手をそっと握り、フレイシーは彼女に優しく声を掛ける。
ミ「…っ!!」
その瞬間、ミアノエルの瞳から、涙がとめどなく溢れ出る。
ミ「…ごめんなさい…。皆さん、とても酷いことをして、本当にごめんなさい…!!」
マ「間違いは誰にでもあるからさ。大丈夫!」
ル「もうメア族を殺さないようにな!」
涙を流して謝罪するミアノエルに、マオとルクは明るい笑顔を向ける。
ロ「わかってくれたのなら、もういいですよ。」
デ「…うん。もう…泣くな。」
ロードとディムアも、小さく笑みを見せ、ミアノエルにそう声を掛けた。
ミ「…ありがとう…ございます…!!」
ミアノエルは、5人に深く頭を下げた。
マ「…今はこんなに反省してるけど…。本当にこのまま帰して大丈夫?また同じ過ちを犯さないかな?」
ミアノエルに視線を向けながら、マオはロードに不安そうに話す。
ロ「その心配はないですよ。彼女は、然るべき場所に行ってもらうので。」
マ「然るべき場所?」
ロードの返答に、マオはきょとんとする。 そのとき、彼らに何かが近付いている音が聞こえてきた。
ル「…ん?何か音がする…?」
フ「…っ!あれを見て!」
ルクが不思議そうに辺りを見回したと同時に、フレイシーが上空を見上げ、指をさした。
その方向から、ヘリコプターが近付いてきていた。
マ「あれは…ヘリコプター?どうしてこんな所に…。」
どんどん近くなるヘリコプターを見つめ、マオは唖然と呟く。
ロ「僕が呼びました。」
「えっ!?」
ロードのその言葉を聞き、仲間たち全員が声を上げ、彼を凝視した。
やがて、彼らの真上の上空でヘリコプターはホバリングし、開いた扉からハシゴが垂れてきて、ある人物が降りてきた。
ウ「…ロードくん、皆!待たせたね!」
そう5人に声を掛けたのは、ウェラトだった。
ロ「ウェラトさん、こんな場所にまでお呼びして、すみません。」
ウ「いや、全然いいんだよ。取り敢えず、皆ヘリコプターに乗ってくれるかい?」
ロードが申し訳なさそうに頭を下げると、ウェラトは落ち着いた笑みを見せ、搭乗するように促す。
ロ「はい、ありがとうございます。…みんな、行きましょう!」
マ「えっ…!?みんな乗るの!?」
ロードにそう声を掛けられ、マオだけでなく、仲間たち全員が、状況が把握出来ず唖然とする。
しかし、あれよあれよと、ミアノエルを含む全員が、ヘリコプターに乗り込んだ。
そして、ヘリコプターは進み始めた。
ウ「…まさか、こんなに早くロードくんたちと再会するとは、思ってもみなかったよ。」
ロ「はい、僕もです。」
上空を飛ぶヘリコプターの中で、ロードとウェラトは小さく笑い合う。
マ「…えーと、オレたち、まだ理解が追いついてないんだけど…。」
ル「…そうだな。ちょっと説明してもらっていいか?」 苦笑いをするマオとルクは、ロードに視線を向ける。
ロ「あ、すみません。実は、ミアノエルさんがメア族を狙っていると知った後に、ウェラトさんに連絡を取って相談したんです。」
ウ「そう。ロードくんから、『メア族の命を狙うラファ族がいる』と連絡があったものだから、それならうちの保護施設に入れた方がいいと判断して、ヘリコプターで飛んできたわけだね。」
ロードに続き、ウェラトが仲間たちにそう説明した。
マ「えっ!?…それって、タバスコ火山を進み始めて少ししたときの、ミアノエルに会った後のこと…!?」
ロ「はい、そうですね。」
声を上げるマオに、ロードは頷いて見せる。
フ「ラファ族も、保護施設に入ることが出来るんですか…?」
ウ「もちろん入れるよ。うちは更生施設でもあるからね。メア族の命を狙うのなら、尚更入った方が良い。私が責任を持って、彼女を見ているよ。」
不安そうな表情のフレイシーの疑問に、ウェルトはしっかり頷いて見せる。
フ「よかった…!よろしくお願いします!」
フレイシーは微笑み、ウェラトに頭を下げる。
ル「…こうなることを想定して、ウェラトを呼んでおいたってことだろ?相変わらず、頭が回るなぁ…!」
マ「そうだよね!さっすがロードだよ!」
そう言ったマオとルクは、尊敬の眼差しでロードを見つめる。
ロ「いえいえ。…ウェラトさんにお願いしたので、彼女ももう、メア族を襲うことはないと思います。」
デ「…そうだな。よかった…。」
ロードとディムアはそう交わし、微笑み合った。
ミ「…。」
ミアノエルは、終始無言で、うつむいていた。
ウ「それにしても、タバスコ火山の山頂付近なんて、ずいぶん危険な場所に行っていたんだね。メガロポリスに皆を送り届けるから、ゆっくり休むと良いよ。」
ロ「…はい。ありがとうございます。」
そう声を掛けたウェラトに、ロードは感謝を述べた。
そして、ヘリコプターは無事メガロポリスに到着した。
ウェラトとともに施設へ向かうミアノエルを、5人は静かに見届けた。
マ『最後の5つ目のアイテム、レッドストーンを探しに、タバスコ火山を訪れた。タバスコ火山には、カバリア島最強と言われている、スパイシードラゴンが潜んでいる。しかし、敵はそれだけではなかった。フェアリーアイランドで出会ったミアノエルというラファ族が、我々をここまで尾行して襲いかかってきたのだ。彼女は、過去にメア族に家族を殺され、メア族を憎み、復讐で今まで何人ものメア族を殺してきたという恐ろしいラファ族だった。ディムアや我々全員の命を狙い、スパイシードラゴンをも操ってきたが、みんなで力を合わせ、死闘の末、ミアノエルとスパイシードラゴンに勝利した。レッドストーンも入手した。ミアノエルは、ウェラトのいる更生施設へ入所することとなった。ロードとフレイシーの言葉を受け、自らの過ちをきちんと反省していたようなので、彼女はきっとやり直すことが出来るだろう。…浄化魔法の習得に必要なアイテムは、これで全て揃った。でも、これで終わりではない。重大な課題が、まだ残っているのだ。』
マ「…これが最後の送信になるかな。」
いろいろな感情が入り交じる中、マオは静かに呟き、研究所に文章を送信した。
13*君を救う為に―完―




