情報屋と交渉
休憩を終えた3人は、街に出た。
よく見ると、旅人や街人がフリーマーケットを開いて賑わっているようだった。
マ「わぁ!なんか楽しそう!」
ワクワクした様子で、マオはその賑わう場所へ飛んでいった。
デ「…自由だな。」
マオを見て一言、ディムアは静かに呟く。
ロ「僕たちも見に行ってみますか。何か掘り出し物があるかもしれませんよ。」
デ「…まぁ、見るだけなら。」
あまり興味はないが、ロードに誘われるがままに、ディムアは彼と一緒にフリーマーケットが開かれている場所へ行く。
「いらっしゃいませー!安いよー!」
店主の旅人や街人が、商品を眺める客人たちに声掛けをしている。
マ「へぇぇ、新しいものがいっぱい!」
並んでいる商品を見渡し、マオは目を輝かせている。
ロ「そうですね。でも、わざわざ買わなくても、自分たちで採取出来そうな物ばかりですね。」
マ「た、確かにそうだね!」
ロードの言葉に、マオはハッとなり、財布の紐を固く結ぶ。
デ「…。」
フリーマーケットを楽しむ人々の様子を、ディムアは遠くから眺めていた。
しばらくフリーマーケットの出店を見て回っていた3人は、ある店の前で足を止めた。
その店の看板に『知りたい情報売ります』と書かれていた。
ロ「…ここ、少し気になります。」
マ「うん、何か他の店と違うね!」
ロードとマオはそう話し、ディムアもつれて、店主に話を聞くことにした。
情「こんにちはー!何か知りたい情報があれば、情報屋の俺が報酬と引き換えに教えてあげるよ!」
店主である情報屋の青年は、3人に笑顔を向けてそう声を掛けてきた。
ロ「こんにちは。どんな情報でも教えてもらえるんですか?」
情「まぁ、内容によるけどね。ちなみに、どんなことが知りたいの?」
ロードの問い掛けに、情報屋はそう答え、逆質問をしてくる。
ロ「…今一番知りたいことは、『メア族について』です。」
デ「…っ!」
情報屋に言ったロードの言葉を聞き、ディムアは困惑する。
マ「あー!オレも是非ともメア族のこと知りたいなぁ!」
デ「…。」
そう言いながらマオに横目で見られ、ディムアはうつむいた。
情「へぇーっ、キミたち、メア族に興味あるんだ?全然知らないの?」
ロ「そうなんです。僕たちは、カバリア島に来てから、まだ間もないもので。」
情報屋に尋ねられ、ロードは困ったように笑って答える。
情「そっかー!いいよ、報酬と引き換えに、メア族のことを教えてあげるよ。」
マ「やった!それで、報酬はどのくらいなの?」
マオは喜び、情報屋に尋ねる。
情「んー、じゃあ、10万ゲルダでどう?」
マ「じゅっ、10万ゲルダ!?高すぎない!?」
情報屋が提示する金額の高さに、マオは声を上げる。
情「払えないなら、教えてあげられないなぁー。」
マ「むぅぅ…。」
情報屋の笑顔を見て、マオは悔しそうに唸る。
ロ「…ところで情報屋さん、君は今欲しい物はないですか?」
情「え?欲しい物?」
ロードの突然の質問に、情報屋はきょとんとする。
ロ「例えば、強いモンスターが落とすアイテムとか…欲しくないですか?」
情「…あ、うん!確かに、俺には倒せないモンスターのドロップ品で欲しいアイテムがあるよ!」
ロードに顔を覗き込まれてそう尋ねられた情報屋は、閃いた様子を見せる。
ロ「では、そのアイテムを僕たちが取ってくるので、そしたらメア族のことを教えていただいてもいいでしょうか?」
笑顔を見せて、ロードはそう提案する。
情「本当に!?君、取り引き上手いね!」
ロ「ありがとうございます。」
喜ぶ情報屋の言葉に、ロードは小さく頭を下げる。
情「でも、俺が欲しいアイテムを持つモンスターは、かなり強いよ?倒せるかなぁ?」
ロ「絶対倒してみせますよ。」
情報屋の脅しにも、ロードは動じずしっかり頷く。
情「へぇー、すごい自信だね。じゃあ遠慮なく頼むけど、〝ピラミッドダンジョン〟に潜む〝ツタンカーメン〟が付けてるイヤリングを取ってきて欲しいんだ!」
マ「ピラミッド…ダンジョン…!?ツタンカーメン!?」
突然、マオは目を輝かせる。
ロ「わかりました。行ってきますね。」
情「あぁ、よろしく!メア族の情報を準備して待ってるよ!」
ロ「はい、よろしくお願いします。」
交渉が成立し、ロードたち3人は、情報屋の店を離れた。
マ「ふぅ…!危うく10万ゲルダ払わされる所だったね!」
情報屋の店から遠く離れた頃、マオはそう言って息をつく。
ロ「相手の言う通りにそんな大金払うのはもったいないですからね。こちらの提案も聞いてもらえて良かったです。」
マ「これからピラミッドダンジョンとツタンカーメンのデータ収集も出来るし、これなら損することないもんね!さすがロード、頭が回るぅ!」
ロードとマオは、笑顔でそう話す。
デ「…。」
その2人の後ろを、ディムアは無言で歩いている。
ロ「…ということで、ピラミッドダンジョンへ行くことになりました。ディムア、準備をお願いしますね。」
そんなディムアに、ロードは声を掛ける。
デ「…メア族のことを知る為に行動するんだろう…。私としては、本当に気が進まないんだが…。」
浮かない表情で、ディムアはそう呟く。
マ「…そんなに気が進まないんならさ、オレたちと一緒に来なければいいんじゃない?嫌々一緒に来られても、楽しくないんだよね。」
デ「…。」
少し意地悪な態度でマオに言われ、ディムアはうつむく。
ロ「マオ、そんなこと言うものではないですよ。」
マオの前に立ち、ロードは彼を宥める。
ロ「ダンジョンには、フィールドより強いモンスターが生息しているようです。戦力が僕だけだと心もとないので、君が一緒に来てくれると、とても助かるのですが…。」
デ「…私がいたら、逆に足でまといじゃないか…?」
ロードの言葉に、ディムアは遠慮がちに返す。
ロ「そんなことありません。君の力が必要なんです。」
真剣な眼差しで、ロードはディムアを見つめる。
デ「…仕方ないな…。」
少し考え、ひとつ息をついて、ディムアは渋々頷く。
ロ「ありがとうございます。」
安心したように、ロードは微笑んだ。
マ「…なんだよ、嫌な感じ。」
ディムアを横目で見て、マオは誰にも聞こえないように呟いた。