突然の指令
―そして、その知らせは突然届いた。
ロードたち5人が朝食を終えて、出発の準備をしている最中、マオの中に内蔵されている通信機が音を発した。
マ「…!ロード、上司からだよ!」
マオは慌てた様子で、ロードと視線を合わせる。
ロ「…。わかりました。繋いでください。」
ロードも少し不安な表情で、マオにそう伝える。 カバリア島に来てから、こうして上司から通信が来るのは初めてのことだった為、2人はこのときから嫌な予感がしていた。
マ「…いくよ。」
マオはひと呼吸置き、自分の耳の中を押した。
サ『ロードくん、マオ。久しぶりね。身体は大丈夫?』
ロ「…お久しぶりです。僕もマオも元気ですよ。」
上司サブリナの声を聞き、ロードは少し緊張しながらも落ち着いて返す。
デ「…。」
ロードの不安な気持ちを感じ取ったのか、近くにいたディムアは、静かに彼の隣に座った。
サ『それはよかったわ!カバリア島は危険だけど、ロードくんとマオは、本当に今までよく研究を進めてくれたわね。所長もとても喜んでいるわ。』
ロ「はい。こうして研究が進められているのは、マオと、カバリア島で出会った仲間たちのおかげです。」
サブリナにそう伝えたロードは、マオとディムアを優しい眼差しで見つめる。
マオは小さく照れ笑いをし、ディムアは頬を赤らめた。
サ『ええ、本当に良い仲間と巡り会えたのね。私も嬉しく思っているわ。』
通信機の向こうのサブリナは、明るく言う。
ロ「…ありがとうございます。」
抑えた口調で、ロードはそう返した。
サ『…それでね。今日こうして私から連絡したのは、あなたとマオに、伝えなければいけないことがあるからなの。』
そこで、サブリナは突然深刻な口調になる。
ロ「…はい。…何でしょう?」
ロードは意を決し、サブリナに静かに尋ねる。
サ『…単刀直入に言うと、なるべく早くカバリア島を出て、こっちに帰ってきて欲しいの…!』
デ「―っ!!」
サブリナの言葉に、ディムアは大きなショックを受けた。
マ「…やっぱり、そういう話だったか…。」
予感が当たってしまい、マオはそう呟いて落胆する。
ロ「…それは…何か僕たちが失敗をしてしまったからでしょうか…?」
サ『失敗なんてとんでもない…!あなたたちのカバリア島での研究の数々は、本当に素晴らしくて、非の打ち所が見当たらないわ!』
酷く困惑している様子のロードに、サブリナはすぐにそうフォローした。
ロ「…では、何故ですか…?」
サ『もともと、カバリア島での研究期間は決まっていたの。その期間の満了が近いからということ。それから、所長があなたたちの研究を大絶賛して、帰ってきてレポートを書いて欲しいそうよ。』
ロ「…そうですか…所長が…。」
心が沈んだまま、ロードは静かに答える。
自分とマオの研究が評価され、嬉しい知らせだというのに、今のロードの中に、嬉しさの感情はほぼなかった。
それは、ラファメアの戦いの解決方法…すなわち、ディムアやメア族を救う手立てがまだ見つかっていないからだった。
サ『…わかっているわ。あなたたちがラファメアの戦いについての研究を一生懸命進めていて、まだ解決方法を探している途中なのに、いきなりこっちに帰れなんて言われたら困るわよね…。ごめんなさい…。』
ロードの心中を察しているサブリナは、心苦しそうに謝罪した。
ロ「…いえ。きっとサブリナさんも、所長から僕たちを帰らせるように圧力がかかっていたと思います。そのようなお気を遣わせてしまい、申し訳ありません。」
サ『そんな…ロードくん…。辛いのはあなたの方なのに…。』
ロードの優しい言葉に、サブリナは言葉を詰まらせる。
ロ「…僕は大丈夫です。でも、いつか落ち着いたら、またカバリア島に来て研究の続きを進めることは出来るでしょうか?」
サ『…ええ。またいつか再研究をさせてもらえるように、私から所長に頼んでおくわ。』
ロ「ありがとうございます。…もう少し、カバリア島にいさせていただきたいです。あと少しで、キリよく帰れそうなので。」
サ『わかったわ。よろしくね。…研究所で、あなたたちの帰りを待っているわ。』
その言葉を最後に、通信は途切れた。
マ「…帰れなんて…突然だよね…。」 うつむきながら、マオは呟く。
ロ「…いつかこの指令が出ることは覚悟していましたが…。あまりにも早すぎましたね…。」
ロードはそう返し、いろいろな感情を紛らわすように、小さく息をついた。
デ「…帰ってしまうのか…?」
ロードの隣で、サブリナとのやり取りを全て聞いていたディムアは、今だ現実を受け止められない様子で、彼を見つめる。
ロ「…はい。突然ですが、もうすぐで帰らなければいけなくなりました。」
デ「…そう、か…。」
ロードの言葉に、ディムアに一気に寂しさの感情が押し寄せる。
メア族のディムアは、カバリア島から出ることが出来ない。
ロードがカバリア島を出て行ってしまうということは、必然的に離れ離れになる。
いつか戻って来てくれるかもしれないが、いつかもわからない再会まで、ロードと会えない辛い日々を生き抜く自信が、ディムアにはなかった。
ロ「…まだ君を救う方法が見つかっていないのに、帰らなければいけないのは…本当に辛いです…。」
デ「…っ。」
そう言ったロードの切ない表情を見て、ディムアは涙ぐむ。
デ「…私のことは気にするな。そんな方法見つからなくても、私はちゃんと生きて行ける。」
その涙を必死に飲み込み、ディムアは強がりを言う。
ロ「…本当に、大丈夫ですか?」
デ「…うん、大丈夫だ。心配しなくていい。」
心配そうなロードに、ディムアは小さく笑い掛ける。
ロ「…すみません。いつかはまだわかりませんが、いつか必ず方法を見つけて君を救います。そのときが来るまで、待っていてください。」
デ「…うん、ありがと。待ってる。」
ロードとディムアは、穏やかな表情で見つめ合う。
ロ「ということで、次が最後の旅となります。」
マ「…そうだね。タバスコ火山にあるっていうレッドストーンも見つけて、今後の研究に役立てなきゃね!」
気持ちを切り替え、ロードとマオはそう言い合う。
ロ「そうですね。…ディムア、最後までよろしくお願いします。」 デ「…うん。」
ロードに声を掛けられ、ディムアは静かに頷いた。
ロードといられる残りわずかの時間を、大切にしなければ…。
ディムアはそう思っていた。
ル「よーし!そろそろ出発するかー!」
フ「みんな、準備出来たかな?」
そのとき、ドアを開けて山小屋に入ってきた、何も知らないルクとフレイシーが、ロードたちに明るく声を掛ける。
ロ「…はい。行きましょう。」
まだ沈んだ表情で、ロードは頷く。
ル「あ、あれ…?なんか、みんな元気なくない?」
デ・マ「…。」
ルクの問い掛けに、ディムアとマオは視線を合わせる。
ロ「…タバスコ火山に向かいながら、話しますね。」
フ「え?う、うん…。」
ロードの言葉を聞き、戸惑いながらフレイシーは頷いた。




