4つ目のアイテム・浄化魔法のリスク
マ「…んん~…。…あぁ、寝ちゃってた…。」
深夜、マオは目を覚ます。
目の前には、スタンドライトに照らされた魔法の書と、文字がたくさん書き込まれたノートが、開かれたまま机の上に置いてある。
隣には、机に突っ伏して眠っているロードがいた。
マ「ロードも寝てる…。」
ロードを起こさないように、マオは彼の背中にそっと毛布を掛けた。
ロードとマオは、この日も魔法の書の解読を進めていた。
連日睡眠時間を削って解読していた為、ロードも疲れが溜まっているのだろう。
マ「…毎日お疲れ様、ロード。」
彼の寝顔を見て小さく微笑み、マオは呟いた。
ふと、魔法の書に視線を向ける。
解読も終えていない無数の文字が、自分たちを挑発するように羅列されている。
しかし、魔法の書の全ページの8割程は解読が終わっているのを見て、達成感を感じられた。
マ「…?」
開かれているページの文字の中で、マオの読める単語があり、その文字を凝視する。
マ「この文字…確か…。」
今までインプットした知識を引き出し、その文字を口に出す。
マ「…この…魔法を…掛けた…者は…。死ぬ…。…え…?」
自分が読み上げた文に、マオは驚愕した。
ロ「…。」
ロードは目を覚まし、机に付いていた頭をゆっくり上げる。
デ「…やっと起きたか。」
隣で座っていたディムアが、ロードに声を掛ける。
ロ「…あ、ディムア…おはようございます。」
寝起きの声で言い、ロードはディムアに微笑み掛ける。
デ「おはよ…。こんな所で寝ていたら、風邪引くぞ。」
ロ「…ここで寝るつもりはなかったんですが…寝てしまっていましたね…。」
少し心配そうな表情のディムアに、ロードは今度は困った笑みを見せる。
デ「やっぱり疲れているんだろ。今夜は解読はしないでゆっくり休め。」
ロ「…わかりました。今日だけはしっかり寝るようにします。」
デ「…うん。」
ロードが素直に頷くと、ディムアは安心したように小さく笑う。
ロ「…毛布を掛けてくれたんですか?ありがとうございます。」
デ「…いや、私じゃない。」
背中に毛布が掛かっていることに気が付き、そう尋ねたロードに、ディムアは首を横に振る。
ロ「そうですか。それなら、マオが掛けてくれたんですね。」
ロードはそう納得し、微笑んだ。
デ「…あぁ、マオといえば、マオが今朝から元気がないみたいなんだが、何か知ってるか?」
ロ「そうなんですか?それは心当たりないですね…。」
ディムアに尋ねられ、ロードは首を傾げる。
デ「…てっきりロードと喧嘩でもしたものだと思ったんだが…。」
ロ「いえ、マオと特に喧嘩はしていないですよ。」
デ「そうか…。どうしたんだろう。」
ディムアはうつむき、呟く。
ロ「きっと心配いらないと思いますよ。少し様子を見てみましょう。」
デ「…うん、そうだな。」
2人はそう話し、仲間が集まる部屋へ行った。
マ「…。」
仲間たちが朝食を取っている間、マオは食卓に座るも、ずっとうつむいて黙り込んでいた。
ロ・デ「…。」
その様子を、ロードとディムアは心配そうに見つめる。
フ「…マオ、なんか元気ないね…。どうしたの?」
マ「…うん…ちょっと…。」
ル「大丈夫か?具合が悪いんなら、ちゃんと言えよ?」
マ「…うん…大丈夫…。」
フレイシー、ルクが声を掛けても、マオはうわの空のようだ。
デ「…みんな心配してるぞ。ロードだって…。」
マ「…。」
ディムアの言葉を聞き、マオは一瞬ロードと視線を合わせたが、またうつむいてしまった。
ロ「…では、マオの気持ちが明るくなるような話をしましょう。」
フ「え!楽しみね!どんなお話かな?」
マオを気にしながらロードがそう切り出すと、フレイシーはわくわくした様子で聞き返す。
ロ「これから目指す場所〝テチチ火山〟のふもとにある村の〝タンゴ村〟の村長のタンゴは、人間の言葉を話す猫だそうです。」
フ「本当に!?猫ちゃんと話が出来るのね!」
ロ「はい。タンゴ村は小さい村ですが、タンゴ村長はその地域でも有名な存在のようで、彼と話したいが為にタンゴ村へ行く旅人が、けっこういるそうですよ。」
ル「へぇー!面白そうだな!」
ロードの話に、フレイシーとルクは興味津々のようだ。
マ「…。」
その話を聞いても、マオの表情は暗いままだった。
ロ「タンゴ村長に会ったら、〝イエローストーン〟のことを聞いてみましょう。何か知っているかもしれませんよ。」
デ「イエローストーン…。浄化魔法に必要な、4つ目のアイテムだったな。マオも、タンゴ村長と話してみよう?」
ディムアがそう声を掛けると、マオがようやく重い口を開いた。
マ「…そのことなんだけど…。浄化魔法の習得に必要なアイテムを集めるの、もうやめにしない…?」
デ「…えっ…?」
予想もしていなかったマオの発言に、ディムアだけでなく、仲間たち全員が耳を疑った。
ロ「…マオ、本当にどうしたんですか?君がそんなことを言うなんて…。」
困惑したロードは、マオの顔を覗き込んだ。
マ「…ちょっと待ってて。」
そう言って、マオは部屋を出て、すぐにまた部屋に入ってきた。 その手には、魔法の書を持っていた。 そして、あるページを開き、ロードに見せた。
マ「ロード、ここにある文字…解読出来る?」
ロ「…いえ、わからないです。マオは読めるんですか?」
ロードのその問い掛けに、マオは深呼吸して、その文を読み上げる。
マ「…『浄化魔法を掛けた者は、命を落とす』…。」
「―っ!!?」
その言葉を聞き、仲間たち全員が言葉を失った。
ル「…えっ…!?浄化魔法の代償が命って…嘘だよな…!?」
マ「嘘じゃないよ…。俺だって信じられなくて、インプットしてある知識で何度も読んだけど…何度読んでも変わらなかったんだ…。」
フ「…そんな…!!」
深刻な表情のマオの話に、ルクもフレイシーもショックを隠しきれずにいる。
ロ「…なるほど。それで君はそこまで落ち込んでいるんですね。」
マ「そうだよ…。ロードは浄化魔法を習得したいんでしょ…?でも、こんな事実を知ってしまったら、絶対習得して欲しくないよ…!」
うつむくロードを、マオは必死の思いで見つめる。
デ「…掛けた本人が命を落とす浄化魔法なんて、習得したらダメだ!!ロードが死ぬなんて…!!」
ディムアの口調は、思わず強くなっていた。
ロ「…みんな、落ち着いてください。まだ浄化魔法のこと全てを解き明かしたわけではないんです。今後も解読を続ければ、命を落としてしまうことを回避する方法が見つかるかもしれません。」
仲間たちを安心させるように、ロードは落ち着いた笑顔でそう話す。
マ「…本当かな…?」
ロ「はい。さすがの僕でも、自分の命を犠牲にするとしか情報のない魔法を習得することはしないですよ。」
デ「…そ、それならいいんだ…。」
マオとディムアは、わずかだが安心した様子を見せた。
フ「浄化魔法って、こんなに怖いリスクを隠していたのね…。」
ル「あぁ…。掛けても死なずに済む方法が見つかるといいな…。」
フレイシーとルクは、怖々とそう話した。
ロ「とりあえずは予定通り、イエローストーンを入手しに、テチチ火山へ向かいましょう。」
マ「…うん…。」
ロードがそう声を掛けるが、マオの気持ちはまだ沈んでいるようだった。
ロ「…心配してくれたんですね。ありがとうございます。大丈夫ですよ。」
ロードは微笑み、マオの頭を優しく撫でる。
マ「…うん!」
マオは頷き、小さく笑みを見せた。
まだ心配事はあるものの、その2人のやり取りを見て、仲間たちは心が温まっていた。




