メア族の兄妹
ロードたち5人は、スノーヒルの村の近くに来ていた。
マ「よーし!スノーヒルの村に到着まであと少し!みんな、頑張って!」
ル「あ、あぁ…うん…。」
マオの掛け声に、ルクは覇気なくそう返事をする。
マ「ちょっとちょっと!?ルク全然元気がないじゃん!どうしたの?」
ル「いや…寒くて元気が出なくて…。」
マ「え、そうなの?」
ルクの言葉に、マオはきょとんとする。
ロ「マオは暑いも寒いも感じないですからね。羨ましいです。」
マ「うん。オレは全然大丈夫。みんなも寒いの?」
ロードが言うとマオは頷き、仲間を見渡す。
デ「…かなり寒い。」
普段薄着のディムアも、暖かスパッツと厚手のコートを着て寒そうにしている。
ロ「スノーヒルは、雪がいつでも降っている極寒の地域です。その場所に近付いているので、寒いはずですね。」
ロードは笑みを見せて説明する。
フ「でも、もう少しで着くのよね。村に着いたら、まずは温まりましょ!」
ル「うん、そうだな。」
フレイシーとルクは、顔を見合わせ頷いた。
デ「…っ!?」
そのとき、ディムアの顔色が突然変わり、立ち止まる。
ロ「…ディムア?どうしましたか?」
その様子に気が付いたロードが、彼女に声を掛ける。
デ「…近くで、闇の魔力を感じる…!」
ロ「―っ!!」
ディムアの言葉に、ロードだけではなく、仲間たち全員に衝撃が走る。
マ「う、嘘っ!?メア族が近くにいるってこと…!?」
ル「ど、どこにいる?」
フ「突然すぎて心の準備が…!」
マオ、ルク、フレイシーは、突然の事態に混乱している。
ロ「…村の方からでしょうか。行ってみましょう。」
デ「うん…!」
冷静に言ったロードに、ディムアは頷く。
5人は、スノーヒルの村に急いで向かった。
雪の降るその村では、村人たちがざわついていた。
「さっきそこで闇の魔法で襲われたんです…!怖かった…!」
?「大変でしたね。無事でよかった。」
しばらく歩いていると、怪我を負った村人と話をしている男性と会った。
ロ「あの、少しお話良いでしょうか?」
ロードは男性に声を掛ける。
?「ん?君たち、ここにいたら危ないよ。家の中に避難していなさい。」
ロードたちに顔を向けた男性は、少し焦りの感じる口調でそう注意した。
ロ「…もしかして、メア族に襲われましたか?」
?「あぁ、そうだよ。村の住民がメア族に襲われてしまったんだ。村の中でメア族の目撃情報が入って、村人はパニックになっている。君たちも襲われないように、家の中に隠れていて欲しい。」
怪我を負った村人に視線を向けたロードの問い掛けに、男性はそう答えた。
ロ「実は、僕たちはメア族に会いたいと思っているので、隠れているわけにはいかないんですよ。」
?「メア族に会いたい?やめた方がいいよ。メア族はとても凶暴だ。会っても話は出来ないし、襲われるだけだよ。メア族のことは私に任せて、さぁ、早く…。」
隠れに行こうとしないロードたちを、男性は少し険しい表情で説得しようとする。
そのとき、近くで発砲音と少年らしきものの悲鳴が聞こえた。
「っ!!」
ロードたちは、すぐに現地へ走った。
そこには、ライフルを持つ旅人と、足に大怪我を負った少年の姿があった。
?「…うっ…あぁぁっ…!!」
出血する足を押さえ、少年は必死に痛みに耐えている。
「よしっ…。もうその足では逃げられないだろう。憎きメア族め…村人を襲いやがって!」
もがき苦しむ少年を、旅人は睨み付ける。
ロ「…待ってください!」
少年と旅人の間に、ロードは立った。
「…なんだ、お前は。そこをどいてもらおうか?」
旅人は、今度は目の前に立つロードを睨み付ける。
ロ「これ以上彼を傷付けないでください…お願いします…。」
悲しみのこもった視線で、ロードは旅人を見据える。
「メア族を庇う奴がいるのか…。なら、まとめて殺るしかないな…!!」
ロ「…っ。」
旅人とロードは戦闘態勢を取ろうとした。
?「争いはやめなさい。」
落ち着いた声を発し、男性が旅人の前に出てきた。
「…チッ。俺はメア族を捕まえようとしただけなのに…。」
?「メア族を捕らえたことは感謝する。しかし、命を奪うのは、たとえ相手がメア族だろうと、私が許さないよ。」
「…ふんっ。」
旅人はその場から去っていった。
?「…。」
ロードを一瞥した後、男性は少年の方に視線を向けた。
傷付いた少年に、ディムアがリカバリーを掛けていた。
?「っ!君、その少年からすぐ離れた方がいい!」
男性は慌て、ディムアに向けて声を上げる。
ロ「…大丈夫です。ここは、彼女に任せていただけないでしょうか。」
?「…なに…?」
ロードにそう声を掛けられ、男性は困惑する。
?「…。」
少年は、ディムアにリカバリーをかけられている間、大人しくじっとしていた。
仲間たちも、その様子を遠目から見守っている。
デ「…もう大丈夫だ。」
傷がほぼ治った少年の足を見て、ディムアは小さく笑う。
?「…お前…メア族か?」
デ「そう。お前と同じ、私もメア族だ。私はディムア。お前の名前は?」
?「…〝カイル〟。」
ディムアから視線を逸らし、カイルは答える。
デ「カイル。何か困ったことがあって、この村に来たのか?」
カ「…うん。〝メリル〟が…。俺の妹が、昨日から行方不明なんだ…。」
デ「…妹とはぐれてしまったのか?」
カ「うん。俺たちの隠れ家が人間に見つかって、襲われたんだ。必死に逃げているうちに、妹と離れ離れになっちゃって…。今頃人間に襲われてしまっているかもしれない…。」
そう話すカイルは、目に涙を浮かべていた。
デ「…私たちがメリルを探してくる。だから、泣くな。」
カ「…探してくれるのか…。でも、俺の力で探し出したい。」
デ「じゃあ、私たちは手伝う。一緒に行こう。」
ディムアは小さく笑い、カイルに手を差し出した。
カ「…。」
しかし、カイルはその手を取ることなく、突然立ち上がる。
カ「…お前がメア族でも、お前の周りは人間ばかりじゃないか…!そんなやつと一緒にいたくない!」
デ「…っ!」
悲しい表情で声を上げたカイルを、ディムアは見つめる。
ル「…お、お前な!せっかくディムアが手伝うって言ってやってるのに、そんな言い方は…!」
フ「ルクっ…!」
ルクの言葉を、フレイシーが慌てて止める。
カ「…っ。」
次の瞬間、カイルは、黒いもやを出現させ、その場にいる全員にもやを浴びせた。
「っ!!!」
突然の激しい息苦しさに、全員はしゃがみこむ。
その直後、ロードのサンダーカウンターの雷が、カイルに直撃する。
カ「…うぐっ…!!」
ダメージを受けながらも、カイルはその場から立ち去っていった。
?「…待ちなさいっ!」
彼を追いかけようとする男性の腕を、ロードが咄嗟に掴み、それを制した。
?「…!」
男性は思わずロードを軽く睨む。
ロ「…すみません、失礼しました。」
ロードは男性の腕を離し、頭を下げる。
?「…一体君たちは何者なんだ?メア族を捕まえようとする私を阻止したいのか?」
少し怒りがこもった口調で言い、男性はロードたち5人を見渡す。
ロ「…申し遅れました。僕たちは通りすがりの旅人です。僕はロードといいます。」
ロードから始まり、マオ、ルク、フレイシー、ディムアは、それぞれ名前を名乗った。
?「…私は〝ウェラト〟。メア族を見つけて保護する為の活動をしているよ。」
ロ「保護…ですか?」
予想外のウェラトの言葉に、ロードは驚きを見せる。
ウ「そう。メア族は危険だが、それでも一人一人が尊い命を持っている。世の中にはメア族の命を狙う者が残念ながらたくさんいるから、メア族が殺されてしまう前に、見つけ次第保護して、彼ら専用の施設へ入れているんだよ。」
マ「じゃ、じゃあ、今も何人ものメア族が施設にいるってこと?」
ウ「あぁ、たくさんいるよ。」
マオの問い掛けに、ウェラトは頷く。
フ「メア族を保護してくれていたんですね…!メア族は、今まで命を奪われていたとばかり思っていたから、嬉しいです!ありがとうございます!」
フレイシーは微笑み、ウェラトに頭を下げた。
ウ「おや…感謝されるなんて思っていなかった。君たちも、メア族を救いたいと思っているのかな?」
ロ「はい、そう思っています。」
ウェラトの問い掛けに、ロードは頷く。
すると、ウェラトの表情は穏やかなものになった。
ウ「そうだったか。そうとは知らず、怒ってしまって悪かったね。」
ロ「いえ、僕も言葉足らずだったので…。」
ロードは視線を落としてそう返す。
ロ「話を戻しますが、カイルは妹のメリルを探しに行かなければいけないようです。メリルが見つかるまで、保護するのは待っていただけないでしょうか?」
ウ「…しかし、メア族を離しておくなんて危険すぎる…。君たちも、先程の彼の凶暴さを目の当たりにしただろう?」
ロードの真剣な瞳を、ウェラトは焦りを隠しきれないまま見つめ返す。
ロ「確かに凶暴ですね。でも、同じメア族のディムアには攻撃しませんでした。」
ウ「あ、あぁ…。驚いたよ…。君もメア族だったなんて…。凶暴ではないメア族なんて初めて会ったよ。」
驚いた様子で、ウェラトはディムアに視線を向ける。
デ「…。」
ディムアはその視線を逸らした。
ロ「メリルを見つけ出した後、ディムアを通して彼らを連れて戻ってきます。なので、ここも僕たちに任せていただけますか?」
ウ「…君たちになら任せられそうだ。わかった。くれぐれも気を付けるようにね。」
ロ「ありがとうございます!」
ウェラトの返答を聞き、ロードは頭を下げた後、仲間たちと笑顔を見合わせた。




