人魚の秘密の魔法
予選会が全て終わり、ロードとルクは、3人と合流した。
マ「ロード!ルク!予選通過おめでとう~!」
マオは嬉しそうに言い、ロードの胸に飛び込む。
ロ「ありがとうございます。みんなのおかげです!」
マオの頭を撫でながら、ロードは仲間たちに笑顔を向ける。
フ「2人とも、最高に可愛かったわ!」
ル「はは…。俺が予選通過出来たなんて、奇跡だよな。」
フレイシーに褒められ、ルクは照れ笑いを浮かべる。
デ「ロードが出てきたときの歓声がすごかった。この調子なら、優勝出来そうだな。」
ロ「はい。頑張りますね。」
ロードとディムアは、笑顔を見せ合った。
?「…あの、リリアンさん、ちょっといい?」
そのとき、近くでそんな声が聞こえ、5人は振り向く。
リ「あら、〝エイミー〟ちゃん!予選通過おめでとう♡」
エイミーに声を掛けられたリリアンは、彼に笑顔を見せる。
エ「ありがとう。…あのね、ちょっと気になることがあって…。」
エイミーは深刻そうな表情で、リリアンにそう切り出した。
ロ「…先程、ステージに上がったときに僕たちの隣にいた人ですね。」
ル「あぁ、そうだな。何かあったのかな…?」
ロードとルクはそう確認し、5人はエイミーとリリアンの話に耳を傾ける。
リ「気になること?何かしらん?」
エ「…さっき、控え室の外の人気の少ない場所に行ったらね、シャルンが誰かと電話しているのを偶然聞いちゃって…。『今日も掛けてもらいに行く』って、何だか怪しい口調でシャルンが話していたのよね…。」
リ「掛けてもらう?それって、どういう意味??」
エ「意味まではわからなかったんだけど…。何か悪いことしてるんじゃないかって思ってて。シャルンのこと、調べてくれない?」
リ「え~?私、明日の準備が忙しくて、それどころじゃないのよ~!エイミーちゃんが気になることなんだから、自分で調べてよ~!」
エ「でも…私も明日の決勝戦の為に、これからエステ行かなきゃなのよ!」
ロ「…お2人とも、落ち着いてください。」
2人が少し揉め始めたそのとき、ロードが彼らに声を掛けた。
リ「あら!ロードちゃん♡お疲れ様~♡予選通過おめでとう♡」
マ「…ロードちゃん…。笑」
マオは静かにそうツッコミ、笑いを堪えている。
ロ「ありがとうございます。お2人の話を聞かせていただきました。僕でよければ、シャルンさんのこと調べてきますよ。」
ちゃん付けされたロードも苦笑いした後、2人にそう提案した。
エ「えっ…!あなたが調べてくれるの!?」
ロ「はい。先程の話を聞かせていただきましたが、僕もシャルンさんが少し怪しい気がすると、エイミーさんと同じ感想を持ちました。なので、調べさせてください。」
声を上げたエイミーに、ロードは頷いて見せる。
エ「嬉しいし、ありがたいけど…。あなたは、明日に備えてエステとか行かないの?」
ロ「…特にそのような予定はないので。」
リ「もう、エイミーちゃん!?何言ってるのよ!見てみなさいよ、ロードちゃんのこのお肌!エステなんて必要ないくらいとっても綺麗でしょ!?」
エ「…わぁ、本当にスベスベ…!とっても色白だし!悔しいけど、ロードちゃんにはとても勝てる気しないわ…!」
ロ「…。苦笑」
リリアンとエイミーに顔や身体を見つめられ、ロードは固まる。
ル「…話がズレてるわ!とにかく、私たちがこれからシャルンちゃんのこと調べてあげるから、待ってなさいよ!?」
ルクは話を切り上げ、ロードの手を引っ張り、その場を離れる。
ロ「あ、あはは…。では行ってきます。」
エ「お願いねー!」
エイミーはロードに手を振る。
フ「ルク…オネエ口調がうつっちゃってる…!笑」
デ「確かに…笑」
マ「ルクのオネエデビューだ!笑」
フレイシー、ディムア、マオは思わず笑いながら、ロードとルクの後を追った。
コンテストの出場者控え室の近くに、5人は来た。
ル「とりあえず戻ってきたけど…。シャルンちゃん、まだいるかしら?」
ロ「予選が終わってそれ程時間は経っていないですからね。まだいるといいのですが…。」
ルクとロード、仲間たちは、予選会の出場者たちがまだ疎らにいるその場を見渡す。
マ「…ん!あれ、そうじゃない!?」
声を上げたマオは、遠くにいる人物を指す。
フ「…あ、シャルンさんだわ!」
その人物が、シャルン本人だとフレイシーは確認する。
ロ「マオ、ナイスです。彼の近くに行きましょう。
マ「オッケー!」
シャルンを見失う前に、5人は急いで彼に近付く。
デ「…なんか、フィールドに向かってないか?」
ル「そうね…。シャルンちゃんは、エステ行かないのかしら…。」
不思議そうに言ったディムアの言葉に、ルクは疑問を口にする。
ロ「エステよりも大事な用事が、フィールドの先にあるということですかね…。」
考える仕草をしながら、ロードは呟く。
マ「本人に直接話聞かないの?何かオレたち、尾行してるみたいになってるけど…。」
ロ「そうですよ。これは尾行です。」
マ「へっ?」
ロードの思わぬ発言に、マオは声を漏らす。
ロ「もし彼が何か怪しいことをしに行っているのだとします。その場合、今僕たちが声を掛けたら、しようとしていることをしなくなってしまう恐れがありますからね。」
マ「な、なるほどね…!」
ロードの説明を聞き、マオは目を見開いて納得する。
ル「尾行なんて響きが悪いけど、これもエイミーちゃんのお願いだもの!仕方ないわよね!」
ロ「そういうことです。」
ルクの言葉に、ロードは頷く。
フ「何も悪いことしてないと良いけど…。」
デ「でも、何だかしきりに辺りを警戒していて、確かに怪しいな…。」
フレイシーとディムアは、緊張している様子でそう話している。
ロ「僕たちが尾行していることを知られないように、みんな気を付けてください。」
ロードの声掛けに、仲間たちは頷いた。
出現するモンスターと魔法で戦いながら、シャルンはフィールドを進んでいく。
そして、フィールドに建つ小さな建物の中に、シャルンは入った。
マ「あそこは…なんだろう?」
マオは首を傾げ、仲間たちと顔を見合わせる。
シャルンが入った建物の中を、5人は覗き込んだ。
シ「…待たせたわね。」
建物の中では、シャルンが人魚と話をしていた。
人魚「どうしたの?2日連続で来るなんて、あなたにしては珍しいわね。」
シ「今回のコンテストで新顔が予選通過したんだけど…。その子が今まで会ったことない、超美貌の持ち主なのよね。」
人魚「へぇ、それでその子に勝つ為に、また綺麗になりに来たってわけね?」
シ「そう。しかも今回は優勝賞品が、賞金の他にグリーンストーンもあるのよ?すごいでしょ?」
人魚「えぇ!あんなに高価な宝石がもらえるの?それは絶対欲しいわね…。」
シ「でしょう?そういうことだから、お願いね。」
そう言ったシャルンは、人魚にお金を渡す。
人魚「はいはい、わかったわよ。」
お金を受け取った人魚は、1冊の本を開き、歌を歌い始めた。
人魚「~~♪♪」
その歌を聞いたシャルンの身体は光り、先程より全体的にさらに細くなり、肌もよりツヤツヤになっていた。
シ「…!さらに美しくなったわ…!これなら、あの子に絶対勝てる…!」
鏡に映る自分の身体に、シャルンは見惚れる。
人魚「まぁ、今回も軽く優勝しちゃいなさい。」
シ「もちろんよ!ありがとう!」
人魚に礼を述べ、シャルンは建物を出て行った。
建物内での一連のやり取りを見ていた仲間たちは、ハッとしたように顔を見合わせる。
ル「シャルンちゃん、人魚の歌を聞いたら、綺麗になっていたわね…!?」
フ「うん…。これって、言い方悪いけど…ズルじゃないのかな…?」
マ「どうなんだろうね…。」
ルク、フレイシー、マオは、唖然としながらそう話す。
デ「…どうする?本人に話を聞いてみるか?」
ロ「…。いえ、こちらに話を聞きます。」
ディムアの問い掛けに、ロードは建物を出て行ったシャルンの方ではなく、建物の中にいる人魚の方へ行った。
ロードが建物のドアをノックすると、人魚がドアを開けて出てきた。
ロ「こんにちは。ちょっとお話を伺いたいのですが…。」
人魚「…。何ですか?」
ロードを見た人魚は、わずかに驚いた表情をする。
ロ「先程、あなたはシャルンさんに歌を歌ってあげていましたね。すると、彼はさらに綺麗になっていたので驚きました。」
にやりとした笑みを浮かべて、ロードは言う。
人魚「…っ!」
すると、人魚はバツが悪そうに慌ててロードから視線を逸らした。
ル「…やっぱりね!その様子だと、さっきあなたがシャルンちゃんにしたことは、ズルいことなんでしょ!?」
人魚「し、知らないわ。私はただ、シャルンに頼まれて魔法を掛けただけよ…。」
声を上げるルクに、人魚はそうシラを切る。
ロ「しっかりお金を受け取っていましたね。そのお金は、このことを口外されない為の口止め料ということでしょうか?」
人魚「…チッ…!そんなとこまで見てたのかよ…。」
ロードの指摘に、人魚は舌打ちをして小さく呟いた。
フ「あなたは、コンテストのルール違反だと知っていて、シャルンさんに魔法を掛けていたということなの ?」
人魚「…まぁ、ルール違反かそうじゃないかなんて、私には知ったこっちゃないわ。ただ、コンテストの賞金を半分くれるって言われたから、協力してやったの。」
フレイシーの問い掛けには、人魚は開き直ってそう答える。
ロ「過去のコンテストで、シャルンさんは何度か優勝しているそうですが、毎回あなたが先程の綺麗になる魔法を彼に掛けていたのですか?」
人魚「…もうバレちゃったし、隠す必要もないから言うわ。毎回私が魔法を掛けていたわよ。」
ロ「…なるほど。そういうことでしたか。」
ロードはまたにやりと笑った。
マ「人魚の魔法の力で何度も優勝して賞金を稼いでいたなんて…!許せないね!」
怒り心頭の様子で、マオは声を上げる。
デ「そうだな…。これで今回も優勝してしまったら…。」
ル「こんなズルしてる奴に、これ以上優勝させるわけにはいかないわね!どうにかして懲らしめてやること 出来ないかしら?」
不安そうな表情を浮かべるディムア、シャルンを懲らしめる方法を考えるルク。
フ「ただシャルンさんに注意するだけじゃ、そんなことしてないって言われそうよね…。」
フレイシーも、仲間たちと一緒に考え込む。
ロ「…人魚さん。あなたが歌って唱えた魔法の、美容の効果を解く方法は何かありませんか?」
しばらく考えた後、ロードが人魚にそう質問する。
人魚「…あぁ、あるわよ。この本に解く為の魔法の習得方法が載ってるわ。」
そう言った人魚は、歌を歌いながら見ていた本を、ロードたちに見せる。
ロ「少しだけでいいので、見せてもらって良いでしょうか。」
人魚「いいけど…いくら払う?」
ロ「…はい?」
人魚の問い掛けに、ロードは思わずきょとんとする。
人魚「だって、けっこう重要な情報貸してあげるわけだもの。タダで貸すのももったいないでしょ?」
ニヤニヤしながら、人魚は言い、本を5人の前にチラつかせる。
ル「こ、こいつ…相当お金にがめついわね…!」
ルクは呟き、人魚を白い目で見る。 仲間たちも、彼と同じような目をしていた。
ロ「…困りましたね。僕は、お金で解決する方法があまり好きではないんですよね。」
人魚「何それ?ただ払いたくないだけの口実でしょ?」
困ったように笑うロードに、人魚は少し嘲笑うような表情を向ける。
ロ「…では、僕からの提案です。その本を貸していただけたら、あなたがシャルンさんに魔法を掛けたことを口外しない、というのはどうでしょう?」
人魚「…は?」
その提案を聞き、人魚は首を傾げる。
マ「出た!ロードの得意な取り引き!」
マオは嬉しそうに笑みを浮かべ、仲間たちとともに2人のやり取りを見守る。
ロ「もし、僕たちがあなたの魔法のことを広めてしまったらどうなるでしょう?コンテストにおいてあなたが不正の手伝いをしてしまったという事実が明るみになり、この場所に人が押し寄せ、最悪あなたの身が危険に晒されてしまうかもしれませんね?」
人魚「…なっ…!?…確かに、魔法のことを広められるのは危険ね…。」
ニヤッとした笑みを浮かべるロードの言葉に、人魚はうつむいて困ったように呟く。
ロ「そうですよね。本を貸していただけたら、あなたの魔法の秘密を守りますよ。」
人魚「…はぁ、負けたわ。あなた、可愛い顔して、随分頭が回るのね…。」
そう言った人魚はため息をつき、ロードに本を差し出した。
ロ「ありがとうございます。」
ロードは笑顔で本を受け取った。
デ「…さすがロードだ…。」
フ「本当ね!びっくりしちゃった!」
ディムアとフレイシーは、ロードの機転の利きの良さに感心する。
ル「よし…!人魚め、ざまぁみろだわ!」
ルクも笑みを浮かべ、密かに喜んだ。
ロ「…さて、マオ出番です。この本の内容を、全部インプットしてください。」
マ「わかったよ!ロードちゃん!」
ロードからの指示を受け、マオは意気揚々と本を受け取る。
ページを次々にめくっていき、あっという間に作業を終えた。
マ「オッケー!インプット完了!」
ロ「お疲れ様です。人魚さん、本をお返しします。ありがとうございました。」
人魚「…え?もういいの?」
貸した本が一瞬で手元に戻り、人魚は唖然とする。
ロ「もう大丈夫です。本の内容は、僕の優秀な助手が全て記憶してくれたので。」
マ「えっへん!」
ロードに頭を撫でられ、マオは誇らしげに胸を張る。
人魚「ふーん。まぁ、内容を覚えたとして、解除の魔法をあなたたちが習得出来るかわからないけどね。」
フ「ロードならきっと習得出来るわ!」
フレイシーの言葉に、仲間たちは顔を見合わせて頷いた。
人魚「そう。まぁ、解除魔法がなくても、あなたならシャルンを負かせられると思うわよ。あなたとっても綺麗だから。」
ロ「そ、そうですか?ありがとうございます。」
唐突な人魚のその発言に、ロードは照れ笑いを見せる。
人魚「ええ。じゃあ、健闘を祈ってるわ。」
人魚は最後に5人に笑い掛けた。
こうして、5人はその場を立ち去り、マーメイドパレスに戻った。
マーメイドパレスで待っていたエイミーに、シャルンは特に怪しいことはしていなかったと伝えた。
それですんなり納得してくれて、エイミーはすっきりした顔で帰っていった。
ロードは、マオと仲間たちとともに、解除魔法を習得する為の勉強を急いだ。




