マスターモンキーを懲らしめろ
更にフィールドを進んでいくと、突如3人の目の前にモンスターが飛んできた。
「っ!」
そのモンスターを、3人は確認する。 それは、猿の容姿をしたモンスターだった。
マ「あっ!こいつがぬすっとモンキーだよ!」
ロ「現れましたね。」
声を上げたマオの言葉に笑みを浮かべ、ロードは杖を構える。
デ「…。」
ディムアも、目の前のモンスターを警戒している。
ぬ「ウッキー!」
ぬすっとモンキーは、ロードに攻撃をしようとした。 その直前でロードはスナップウィンドを唱え、風で吹き飛ばし、消滅させた。
マ「あっ!後ろにも何体か来てるよ!」
後ろから迫って来るぬすっとモンキーの群れを見て、マオは声を上げる。
ロ「群れですか…。ディムア、僕から離れないでくださいね。」
デ「…わかった。」
ロードに声を掛けられ、ディムアは頷いた。
数体で一斉に襲い掛かってきたぬすっとモンキーを、ロードのウィンドエッジで消し去る。
ディムアはマジックアローを放ち、近付いてくるぬすっとモンキーを、1体ずつ確実に攻撃していた。
マ「わわっ!?」 ロードとディムアの攻撃魔法を素早くすり抜けた1体のぬすっとモンキーが、マオに飛び付いた。
そのぬすっとモンキーを、ロードはライトニングで消滅させた。
マ「びっくりしたぁ!ロード、ありがとー!」
ロ「いえいえ。」
マオに笑顔を向けられ、ロードは詠唱の合間に頷く。
その後、ロードは範囲魔法、ディムアはマジックアローで、ぬすっとモンキーとの応戦を続け、ようやく周りにいたぬすっとモンキーを全て退治することに成功した。
デ「…ふぅ…。」
ぬすっとモンキーの群れを倒し、ディムアは小さく息をつく。
ロ「少し休みますか?」
デ「…いや、大丈夫だ。」
ロードに顔を覗き込まれ、ディムアは首を横に振る。
マ「うーん、あいつらがぬすっとモンキーなのは間違いないけど、今まで盗んだ物はどこに隠してあるんだろう?」
考えながら、マオは呟く。
ロ「よく探すしかないと思いますが…。」
ロードはそう言いながら、マオをよく見る。
ロ「…マオ、バッグはどうしましたか?」
マ「…えっ!?」
ふと尋ねたロードの言葉に、マオはハッとして、自分の腰を触る。
マ「な、ないっ!バッグ盗られた!?」
ロ「…やられましたね。」
慌てるマオを見て、ロードは困ったように笑う。
デ「…あいつが持ってるのがそうか?」
少し離れた場所にいるぬすっとモンキーを、ディムアは指す。
ぬすっとモンキーは、確かにマオのバッグを持っていた。
マ「あっ!オレのバッグ返せー!!」
ぬ「ウッキー!」
マオが追いかけ出すと、ぬすっとモンキーは逃げ出した。
ロ「僕たちも追いましょう!」
デ「…うん。」
ロードの掛け声にディムアは頷き、2人はマオの後を追う。
ぬ「ウキキッ!」
マオのバッグを持ったぬすっとモンキーは、大きなモンスターらしきものの前で立ち止まった。
?「また盗んできたかぁ!ご苦労だったぁ!」
大きなモンスターは、ぬすっとモンキーからマオのバッグを受け取り、笑い声を上げる。
?「がははー!今日も人間たちの困った声が聞こえてくるようで、気分が良いなぁ!」
ロ「…なるほど、君が親分ですか。」
?「っ!?」
モンスターの背後に回り、ロードがそう声を掛けると、モンスターは勢いよく振り向いた。
?「なんだぁ、お前はぁ!?この〝マスターモンキー〟様の後ろに立つとは、いい度胸してんなぁ!?」
そのモンスター、マスターモンキーは、怒って顔を赤くしながら、ロードを睨み付ける。
ロ「子分のぬすっとモンキーに命令して、街の人々の物を盗んで困らせているようなので、懲らしめに来ました。」
マス「懲らしめるだとぉ…!?」
笑みを浮かべて言うロードの間近に怒った顔を近付け、マスターモンキーは、恐怖を煽ろうとする。
マオ「お、オレのバッグ返せよ…!」
デ「こ、このモンスター、近いぞ…。大丈夫か…?」
ロードの後ろで、マオとディムアが少し怖気付いた様子を見せている。
ロ「今なら無傷で済ませてあげますよ。今まで盗んだ物を全部返してください。」
マス「はぁ!そんな言葉だけの強がりが通用する訳ないだろぉ!?お前なんかに返してたまるかぁ!!」
ロードの言葉にマスターモンキーは激怒し、周りにモンスターを召喚させた。
デ・マオ「っ!?」
複数のモンスターの出現に、ディムアとマオは身構える。
ロ「…話になりませんね。」
ロードはそう一言言い、一瞬鋭い目付きに変わり、ウインドエッジを唱えた。 風に当たったモンスターたちは一気に消滅する。
デ「っ!!」
風を逃れ、襲いかかってくるモンスターに、ディムアはマジックアローを放ち、ダメージを与える。
マス「おりゃぁっ!!」
マスターモンキーが、ロードに拳を突き出してきた。 その拳を、ロードは杖を盾に防御する。
すると、サンダーカウンターが発動し、マスターモンキーの体に稲妻が走った。
マス「うぎゃぁっ!?」
マスターモンキーの体は痺れ、一瞬動きを止める。
デ「…くっ…!」
ディムアは周りのモンスターと応戦するが、あっという間に囲まれてしまった。
ディムアを囲むモンスターたちに、ロードはウィンドエッジを唱え、切り裂いて消滅させた。
デ「…ありがと…。」
ロ「いえいえ。」 2人は顔を見合わせた。
マオ「ロード!危ないよっ!」
ロ「っ!」
マオの言葉に、ロードは後ろを振り向く。
マス「隙ありじゃあ!!」
マスターモンキーは、ロードに突進をしてきていた。
ロ「残念でしたね。僕に隙はないんですよ。」
ロードはそう言って笑みを浮かべると、ガルベスタタイフーンで自らの周りに風を巻き起こし、マスターモンキーをいとも簡単に吹き飛ばす。
マス「っ!!?」
ロ「これもおまけにどうぞ♪」
空中に浮くマスターモンキーに向け、ロードは笑顔で杖を大きく振り、フレイムトルネードを唱えた。
マスターモンキーの体の下から、炎が燃え上がり、マスターモンキーは火だるまになった。
マス「あっちゃぁぁぁっ!!」
黒焦げになり、マスターモンキーは倒れた。 同時に、ディムアの目の前にいた少しのモンスターは消滅した。
ロ「…どうでしょう?まだやりますか?」
マス「い、いやいやいや!もう降参だぁ!オラが悪かったよぉ…!」
ロードがゆっくり歩み寄ると、マスターモンキーは慌てて土下座をした。
マオ「やったぁ!ロード、かっこよかったよ!」
マオは目を輝かせて飛び上がり、喜びを全身で表現している。
デ「…。すごいとしか言いようがないな…。」
ルク・ベリッサ戦に続き、ロードの強さを目の当たりにしたディムアは、唖然として呟いた。
ロ「ありがとうございます。」
ロードは2人に笑顔を見せた。 そして、物陰に隠してあった盗品の数々の入った大きな袋を、マスターモンキーが引っ張り出してきた。
マス「こ、これ!今まで子分たちが盗んだ物が全部入ってるんだぁ…。返すから許してくれぇ…。」
ロ「もうしないと約束しますか?」
マス「も、もちろんだぁ!もうしないよぉ!」
ロードの問い掛けに、マスターモンキーは怖がる様子で即答した。
マオ「…バッグあった!よかったー!」
袋の中から自分の盗まれたバッグを取り出し、マオは早速身に付けた。
ロ「よかったですね。」
マオ「うん!ありがとー!」
安心した表情のマオを見て、ロードは微笑んだ。
ロ「それでは、これを返しに行きましょう。」
デ「あー…。1人で持てるか…?」
ロ「…難しいみたいです。一緒に持ってもらえますか?」
デ「…わかった。」
ロードとディムアで、ぬすっとモンキーが今まで盗んだ物の入った袋を持ち、街まで向かった。
コーラルビーチのインフォメーションへ、ぬすっとモンキーの盗品をすべて預け終えた。
マ「係員の人、喜んでたね!」
ロ「そうですね。一件落着です。」
マオとロードは、満足そうな笑顔を見せ合う。
デ「…あの親玉のモンスターも、あんな目にあえば、もう悪さは出来ないだろうな。」
最後の黒焦げの痛々しいマスターモンキーの姿を思い出しながら、ディムアは言う。
ロ「あれでもだいぶ手加減はしましたけどね。」
デ「…本気じゃなかったのか…?」
ロ「あんなモンスターを相手に、本気なんか出さないですよ。」
ロードの余裕の微笑みを見て、ディムアは苦笑いをする。
マ「どう?ディムア。ロードめちゃくちゃ強いでしょ?」
デ「あぁ…。こんなに強いと思っていなかったから、正直かなり驚いた。絶対に敵に回したくない相手だ…。」
マオの問い掛けに、ディムアは少し視線を落として言う。
ロ「ありがとうございます。…そんなに心配しなくて大丈夫ですよ。この先、ディムアが僕の敵になることなんてないと思っているので。」
デ「…。それはどうだろうな…。」
微笑み掛けるロードから視線を外し、ディムアは静かに呟いた。
ロ「…今日はお疲れ様でした。今日はもう休みましょう。」
ディムアの様子を気にしながらも、ロードは気持ちを切り替え、2人にそう声を掛ける。
マ「うん。お疲れー!」
マオは明るく頷く。
ロ「明日以降、ディムアに魔法を教えていきますね。よろしくお願いします。」
デ「…うん。よろしく…。」
ロードのその言葉に、ディムアは戸惑いながらも頷いた。
マ『今日は、コーラルビーチの街で最近多発している盗難事件について調査した。事件の犯人は子分のぬすっとモンキーと、その親分のマスターモンキーというモンスターだった。居場所を突き止め、ロードが強力な攻撃魔法で制裁すると、マスターモンキーは今まで盗んだ物を全て返し、もう盗みは二度としないと約束もした。それから、同じくコーラルビーチのフィールドにて、メア族を捕まえようとする、ルクとベリッサと呼び合う男女2人組に絡まれた。その2人のことも、ロードが懲らしめてやった。カバリア島でも、ロードの魔法の強さは絶好調だ。やはり、メア族は狙われているようだ。今後も注意が必要。この島の都心部はメガロポリスという場所のようなので、明日はそこを目指そうと思う。』
研究所に、マオは文章を送信した。
1*メア族と旅のはじまり―完―