忍び寄る魔の手
マオ、ルク、フレイシーと別行動することになったロードとディムアは、暗い部屋を進んでいた。
デ「…2手に分かれなければいけないなんて、大変なことになってしまったな。」
歩きながら、ディムアは小さく呟く。
ロ「確かに、仲間がそろっていないという状況に不安はありますね。でも、フレイシーはルクが頼もしく守ってくれています。マオも2人の戦闘のサポートをしてくれるので、大丈夫だと思いますよ。」
心配そうな表情のディムアに、ロードは微笑み掛ける。
デ「…うん。きっとすぐ合流出来るしな。」
ディムアも小さく笑い、頷いた。
ロ「…僕も、ディムアを不安にさせてしまわないように頑張らないといけないですね。」
デ「…えっ…?」
その言葉に、ディムアは思わずロードを横目で見つめる。
ロ「2人きりになった今、君を護れるのは僕しかいませんから。」
デ「…。そ、そんな、改めて2人きりって言うな…!意識してしまう…。」
頬を紅潮させたディムアは、ロードから視線を逸らす。
ロ「すみません。みんなと合流することを考えましょう。」
デ「…うん。」
優しく笑うロードを見て、こんな状況でも、ディムアは幸せを感じていた。
そのとき、近くで金属を擦り合わせるような、耳障りな音が聞こえてきた。
「―っ!」
ロードとディムアは立ち止まり、奥の暗い空間から歩いてくる何者かを警戒する。
姿を現したのは、剣を持った、首のない銀色の鎧のモンスターだった。
デ「…首がない…!?」
その見た目に、ディムアは怯えたように呟く。
ロ「不気味ですね…。でも、一緒に戦えば怖くないですよ!」
デ「うっ、うん…!」
2人は杖を構え、戦闘態勢を取った。
剣を構え、モンスターは2人に急接近した。
ロードはスナップウィンドを唱え、剣が振り下ろされる前に、強い風で硬い鎧を切り裂き、ダメージを与えた。
同時にディムアはシャワーオブアローを唱え、魔法の矢を4本刺し、モンスターを消滅させた。
その直後に、どこからか飛んで来たマジックアローが、ロードに直撃した。
ロ「…っ!」
その衝撃で、ロードは一瞬体勢を崩す。
ロードのサンダーカウンターが発動し、マジックアローを放ってきたモンスターに、稲妻が落ちた。
モンスターは一瞬動きを止めるも、すぐに動き出し、2人に剣を振り下ろそうとする。
銀色鎧のモンスターと同じく首がなく、頭があるべきところから炎が燃え盛っている金色の鎧のモンスターに、ディムアはライトニングを唱えた。
雷を直撃した金色の鎧のモンスターは、再び動きを止めた。
デ「ロード…大丈夫か!?」
ロ「…はい、大丈夫です。すみません。」
2人は体勢を立て直し、目の前のモンスターを見据える。
ロ「…こちらの金色の鎧のモンスターは、もしかしたら雷属性が耐性かもしれないです。」
自らのサンダーカウンターと、ディムアのライトニングがあまり効いていない様子から、ロードはそう推測した。
デ「…わかった!雷以外の魔法で戦う!」
ロ「はい、お願いします!」
2人は頷き合い、周りに数体いる金色と銀色の鎧のモンスターに、範囲攻撃魔法を唱えた。
ロードの風魔法、ディムアの炎魔法で、その場にいるモンスターを一掃することに成功した。
デ「…ふぅ…。」
周囲にモンスターがいなくなったことを確認し、ディムアは小さく息をつく。
ロ「お疲れ様です。」
デ「…お疲れ。」
ロードに声を掛けられ、ディムアは頷く。
ロ「…やっぱり、モンスターの耐性や弱点がわからないというのは不便ですね。いかに普段マオに助けてもらっているか思い知らされます。」
そう言ったロードは、困ったような笑みを見せる。
デ「そうだな。…でも、さっきのモンスター、ロードが雷属性が耐性だと咄嗟に判断してくれたおかげで、楽に倒せることが出来た。ありがと。」
ロ「…いえいえ、こちらこそありがとうございます。」
2人は微笑み合う。
ロ「また突然襲われてしまうかもしれないので、気を付けて進んで行きましょう。」
デ「あぁ、そうだな。」
ロードの言葉に、ディムアは頷き、2人は再び奥へと進み始めた。
一方、マオ、ルク、フレイシーも、2人との合流を目指し、暗い城内を進んでいた。
ル「…俺が守らなきゃ…俺が守らなきゃ…。」
歩きながら、ルクは独り言を呟いている。
フ「…ルク?どうしたの?」
ル「…え?」
フレイシーに顔を覗き込まれ、ルクはきょとんとする。
マ「『俺が守らなきゃ』って、さっきからずっと呟いてるよ?」
ル「嘘!?声に出てた!?」
マオの言葉に、ルクは驚いた様子で声を上げる。
マ「もしかして、無意識だったの?」
ル「あ…あぁ…。心の声が無意識に声に出ちゃってたな…。 」
マオに苦笑いされ、ルクは気まずそうにうつむく。
マ「フレイシーを守ることに相当プレッシャーを感じてるってことだねぇ。」
今度は、ニヤッとした笑みを見せ、マオは言った。
フ「…そんなに、私のことを…?」
フレイシーの頬が赤くなる。
ル「いや、その…。今フレイシーを守れるのは、俺しかいないから、頑張らないとって思って…。」
そう言いながら、ルクは恥ずかしそうな笑みを浮かべる。
フ「ありがとう!ルクが一緒にいてくれるだけで、私は安心よ!」
ル「あ、ほ、本当に?はは…よかった…。」
満面な笑顔のフレイシーの言葉を聞き、ルクは照れ笑いをしていた。
マ「…こっちがこの調子じゃ、あっちはもっと熱いんだろうな…。笑」
そのやり取りを見て、ロードとディムアが2人きりでラブラブしていることを想像し、マオはニヤニヤしていた。
そのとき、3人の前に、モンスターが現れた。
「っ!!」
ルクは銃、フレイシーは杖を構え、戦闘態勢を取る。
骸骨のモンスターは、手に持つ武器をルクに向かって振り下ろした。
瞬時に攻撃をかわしたルクは、そのモンスターにクイックショットを放った。
2発の銃弾を受けたモンスターは、体勢を崩し、動きを止める。
マ「…こいつは〝ボーンファイター〟!耐性は雷と光、耐性物理!」
ル「了解!」
マオの説明を聞き、ルクは頷き、ボーンファイターにパワーショットを撃った。
フ「骸骨…怖いわ…!」
その見た目に怯えながら、フレイシーは、ウォーターシェルを唱えた。
水の弾をくらったボーンファイターは、数メートル飛ばされながら消滅した。
マ「…っ!!ルク、フレイシー!!後ろ!!」
「っ!!?」
マオの言葉に、2人は同時に後ろを振り向いた。
しかし、間に合わず、2人はモンスターの背後からの攻撃を直撃してしまった。
フ「きゃぁっ!!」
フレイシーはその場に倒れ込む。
ル「くっそ…!!」
ルクも一瞬床に膝を付いたが、すぐに立て直し、自分とフレイシーを襲う、被り物を被った骸骨のモンスターに、ランダムショットで銃弾を1発ずつ放った。
そのモンスターは、1歩後退するも、あまりダメージは受けていないようだった。
マ「この被り物の骸骨モンスターは〝ボーンウォーリア〟!耐性は銃、弱点は物理!ルク、気を付けて!」
ル「銃が耐性か…!わかった!」
マオに注意を促され、ルクは頷く。
体勢を立て直したフレイシーは、ガルベスタタイフーンを唱え、周りに集まってきている数体のボーンファイター、ボーンウォーリアをまとめて風で切り裂いた。
ルクはボーンファイターに狙いを定め、ランダムショットを放った。
弾を直撃した数体のボーンファイターは、消滅した。
その直後、突如眩い光の矢が空中で出現し、ルクとフレイシーの身体に刺さってきた。
ル・フ「あぁっ!!」
身体に痛みが走った2人は、同時に悲鳴を上げ、床に膝を着いた。
マ「2人とも、大丈夫!?」
ル「…だ、大丈夫!大したことねーよ…!」
フ「…私も…大丈夫よ!」
心配そうにマオに声を掛けられ、2人は頷き、ゆっくり立ち上がった。
2人の目の前には、黒いローブを身にまとい、杖を持った骸骨のモンスターが数体立っていて、再び魔法を唱えようとしていた。
マ「この骸骨モンスターは〝ボーンマジシャン〟!耐性は闇、弱点は光だよ!」
マオの説明を聞き、フレイシーはハッとした。
フ「…ルク!少しだけモンスターの足止めお願いしていい!?」
そして、ルクにそう声を掛けた。
ル「…あぁ!わかった!」
ルクは頷き、ボーンマジシャンたちにランダムショットを放った。
フレイシーは立ち上がり、呼吸を整え、詠唱を始める。
マ「ルク!危ないっ!!」
ル「っ!!」
マオの叫びに咄嗟に反応し、ルクはボーンファイターの攻撃をよけ、パワーショットを放つ。
しかし、その隙を狙われ、ボーンマジシャンの横からのマジックアローを避けきれず、身体に刺さった。
ル「…くっ…!!」
ルクは床に膝を付き、苦痛な表情を浮かべる。
しかし、フレイシーに襲い掛かろうとするボーンファイターに、必死にクイックショットを放ち、攻撃を阻止した。
マ「…頑張れ!ルク!!」
ル「…おう…!!負けてたまるか!!」
マオの声援を受け、ルクはそう力強く返し、周囲のモンスターたちに、 再びランダムショットを放った。
フ「…ルク、足止めありがとう!!」
そう言って微笑んだフレイシーは、詠唱を終え、〝プラズマショック〟を放った。
眩い光が、ボーンマジシャンたちにまとい、容赦なくダメージを与えた。
マ・ル「…っ!!」
その光のあまりの眩しさに、マオとルクは目を瞑る。
光が消えたときには、複数いたボーンマジシャンたちは、跡形もなく消滅していた。
残った数体のボーンファイターは、ルクがランダムショットを放ち、仕留めた。
マ「…すごい!2人ともかっこよかった!」
モンスターが周囲にいなくなったことを確認し、マオは嬉しそうに声を上げる。
ル「…いや…。フレイシーの最後の魔法がすごかったな!あれは光魔法?」
フ「うん!光が弱点ってマオが教えてくれたから、唱えたのよ!」
ルクに尋ねられ、フレイシーは微笑んで答える。
マ「そっか!これがラファ族の力かぁ!」
ル「危なかったけど、おかげで助かった!ありがとな!」
フ「いえいえ!ルクとマオもありがとう!」
安堵した3人が、そんなやり取りをしていた直後だった。
突然、周囲の壁に灯っていた火が全て消え、辺りが真っ暗になった。
マ「わっ!!な、何!?」
ル「暗い…!何も見えねぇ!?」
マオとルクは、パニックで声を上げた。
フ「…きゃぁっ!!!」
そのとき、フレイシーの悲鳴が辺りに響いた。
ル「―っ!!フレイシー!?」
マ「フレイシー、大丈夫…!?」
ルクとマオがフレイシーに声を掛けても、彼女からの返答はなかった。
嫌な予感がしたそのすぐ後、ルクの身体に異変が起きた。
ル「…うっ…。」
力が抜け、ルクはそのまま意識を失った。
マ「えっ…?ルク…!?」
ルクの小さな呻き声が聞こえ、マオの中で嫌な予感が巡る。
程なくして、壁に掛かる火が灯り、視界が戻った。
マ「…っ!!」
うつ伏せで倒れているルクを見つけ、マオはすぐに近付く。
マ「ルク!!ねぇ、大丈夫!?しっかりして!!」
マオが必死で声を掛けるが、ルクは目を覚まさない。
呼吸はしていて、気絶をしているようだとマオは確認した。 周囲を見渡すが、フレイシーは姿を消していた。
マ「…フレイシーが消えて…ルクが気絶…。あの一瞬の暗闇で、一体何が…!!?」
近くに見えない恐怖が潜んでいることを感じ取り、マオは全身が震え出す。
マ「お、お、落ち着け…!!ロードに連絡を…!!」
震える手で、マオは携帯電話を取り出し、ロードに電話を掛けた。




