決着と和解
少し離れた場所では、膝を着いてボロボロのルクの目の前に、ベリッサが立ち尽くしていた。
ベ「…やっぱりねぇ。あの男が戦えないってだけで、こんなに戦いが楽になるなんて…私の作戦大成功☆」
ベリッサは笑って言うが、今にもルクに魔法攻撃が放たれようとしている。
ル「…あぁ、やっぱりすごいな、ベリッサ。…やっぱり、俺の相方は君しかいない…。」
ルクはベリッサを見つめた。
ベ「はぁ?なに、やられそうになって今更そんなこと言うの?おもしろい冗談ね?」
ベリッサはルクを睨み付ける。
ル「本当のことだよ…。間違ってたのは俺の方だ…。今更だってのはわかってる…。君と離れてみてわかったんだ…。また君と仲間に戻りたいな…。」
ベ「…ふぅん。じゃあさ、その言葉が本当かどうか、誠意を見せてよ?」
穏やかな表情のルクの言葉に、ベリッサも少しだけ怒りが収まっているようだった。
ル「いいよ…。じゃあ、ロードのメガネ、俺の手で割らせてくれないかな?」
ベ「…なるほどね。今度はあっち側を裏切る訳ね…。いいわ、やってみなさい。」
ベリッサは笑みを見せ、自分の服のポケットから、ロードのメガネを取り出した。
ル「…ありがと。」
一瞬ニヤッと笑ったルクは、そう一言言い、メガネを手にしたベリッサの手に、見えない速さで銃弾を放った。
ベ「っ!!?」
手に激痛が走ったベリッサは、その衝撃でメガネを手放した。
マ「よぉっし!メガネゲット!!」
タイミングを見計らっていたマオが、ロードのメガネを空中でキャッチした。
ル「上手くいった…!マオ、メガネをロードに届けて!」
マ「了解!ナイスだよ、ルク!」
2人は笑い合い、マオはロードの元へ戻っていった。
ベ「…あんた…私を騙したな!!?」
ル「…実は、事前に仲間たちと作戦会議したんだ。俺が頃合を見て、君にあんな風に言えば、油断してメガネを見せるんじゃないかって。マオも来てくれたから、今がチャンスだと思ってな。…君もちゃんとメガネを隠し持ってくれてたし…まさにシナリオ通りだったよ。」
怒りで声を荒らげるベリッサに、笑みを見せながら、ルクはそう説明する。
ベ「…ふ、ふざけた真似を…よくも…!!」
ル「…悪く思うなよ、ベリッサ。俺はもう、君と仲間に戻ろうなんてこれっぽっちも思ってない。ロードのメガネを取り返す為に、騙させてもらったよ。」
ベ「ああぁぁぁ!!お前なんかマジで消してやるわぁぁあ!!」
ルクのその言葉に、ベリッサの怒りは頂点に達し、ガルベスタタイフーンを放った。
キ「…さぁ、これでくたばってもらうよ!!」
ロードに向けて、キリカが大針を投げる寸前だった。
マ「ロード!!受け取って!!」
ロ「っ!!」
マオの声に素早く反応したロードは、彼の投げたメガネを受け取り、かけた。
キ「―っ!!?」
放たれた大針は、ロードの身体に刺さる間一髪で、彼の魔力により弾かれた。
マ「やったー!」
ロ「マオ、ありがとうございます!」
2人は笑顔を見せ合った。
デ「…!ロード、メガネを取り返せたんだな…!」
ロ「みんなのおかげです。もう大丈夫ですよ。」
ディムアとも、ロードは笑顔を見せ合った。
キ「くっそ…!!ベリッサのやつ、やらかしたな!?」
メガネをかけたロードの姿を見て、キリカは慌てた様子を見せる。
ロ「…今までよくもやってくれましたね。何倍にもして返してあげます。覚悟してください。」
ロードは笑みを浮かべ、フレイムピーラーを唱え、キリカの身体を大きな炎で覆い尽くした。
キ「あぁぁぁあっ!!!」
あまりの熱さに、キリカは悲鳴を上げて苦しみ、倒れた。
その直後に、フレイシーが戦っている複数のモンスターに、〝テンペスト〟を唱え、最大級の風で何度も切り裂いた。
フ「っ!!」
モンスターとの戦いで苦しい状況だったフレイシーは、その光景を唖然として見つめる。
モンスターは、一瞬で全て消滅した。
フ「ロード…!ありがとう!」
ロ「フレイシー、モンスターとの応戦ありがとうございました。」
ロードはフレイシーに微笑み掛けた。
次に、ベリッサの放った風魔法に身体を切られて更にボロボロになって倒れるルクの元へ駆け寄った。
ロ「ルク、ありがとうございます!あとは任せてください!」
ル「あ…あぁ…。よろしく、ロード…。」
ルクは弱々しくも、清々しい笑顔を浮かべていた。 2人は頷き合った。
ベ「…最悪ね…!まぁいいわ!!あんたたちまとめて始末してやるから!!!」
ベリッサは叫び、ライトニングを放った。
それと同時に、ロードはコールライトニングを唱え、ベリッサのライトニングをいとも簡単にかき消し、さらに彼女の身体に強い雷を落とした。
ベ「ああぁぁぁぁぁっ!!!」
あまりの激痛に、ベリッサは激しい悲鳴を上げる。
そして、力無く地面に倒れた。
デ「…す、すごい…。」
ロードのすぐ後ろでその光景を見ていたディムアは、あまりの迫力に息を呑んだ。
マ「し、死んだ…?」
苦しそうな表情で目を閉じて倒れるベリッサを凝視し、マオは恐る恐る呟く。
ロ「…いえ、生きていると思いますが…少しやりすぎてしまったようです。」
ロードは困ったように言い、ベリッサにゆっくり歩み寄り、リカバリーをかけた。
「…。」
その様子を、仲間たちは静かに見つめる。
ベ「…うぅっ…。」
傷が少し回復したベリッサは目を覚まし、ゆっくりと起き上がる。
ロ「大丈夫ですか?…すみません、力加減を間違えました。ここまで追い詰めるつもりはなかったのですが…。」
ベリッサの顔を覗き込み、ロードは心配そうに尋ねる。
ベ「…な、なによ…。私が憎いんでしょ…。さっさと終わらせなさいよ…。」
弱々しく、ベリッサは視線を落として呟く。
ロ「いえ。最初から君の命を奪おうなんて気は一切ありません。」
ベ「…え…?」
ロードの言葉に、ベリッサは彼と視線を合わせる。
ロ「確かにメア族を狙うことや、僕のメガネを盗んだことは許し難い行為ですが、きっと君はもう二度としないことを約束してくれると思っていますからね。」
ロードは小さく笑って言った。
ベ「…。あぁ…もうこんな痛い目に遭うくらいなら、もうメア族を狙う仕事なんて辞めるわよ…。」
悔しそうな表情で、ベリッサはそう返す。
ロ「それに、仮にも君はルクの元仲間です。死んでしまったら…ルクが悲しむと思うので。」
ル「…ロード…。」
穏やかな笑顔のロードの横顔を、ルクは見つめる。
ベ「…っ…。…おかしいわね…。私が倒そうとしてた相手は、こんな優しいことを言う人だったの…?気が付かなかった…。」
微かに震える声を出すベリッサの瞳からは、涙が流れていた。
ル「…ベリッサ。君もメア族を狙うのを辞めるんだろ?だったら、俺たちまた仲間にならない?今度は、ロードたちも一緒に…。」
ルクがそう言いかけると、ベリッサは小さく首を横に振った。
ベ「…遠慮しておくわ。私は、あんたたちとは違う道を行く。」
ル「…そっか。わかった。」
涙を拭いながら言ったベリッサの言葉に、ルクは少し寂しそうな表情で、納得したように頷いた。
ロ「残念です。また、いつかどこかで会えるといいですね。」
ベ「私なんかとは二度と会わない方が良いわよ。…まぁ、もし会っちゃったときの為に、あんたを負かすくらい強くなってやるわ。そのときは、覚悟しなさいよ。」
ロ「それは楽しみですね。そんな日が来ることを待っていますよ。」
ロードとベリッサは笑みを見せ合った。
ベ「…それじゃあ、さよならー☆」
ベリッサは明るく言い、5人に背を向け、まだふらふらな足取りで去っていく。
ル「…ベリッサ!今までありがと!元気でな!」
ベ「…あんたもね、ルク。」
去り際に少し寂しそうな様子のルクに声を掛けられ、ベリッサは少し振り向き、小さな笑顔で静かにそう返した。
マ「…行っちゃった。結局、あの人は悪い人だったの?それとも良い人?」
ベリッサの姿が見えなくなり、マオが不思議そうに疑問を口にする。
ロ「過去に過ちを犯したものの、きちんと反省出来たんです。根は良い人だと思いますよ。」
ル「…うん。俺もそう思う。」
ロードの意見に、ルクは頷いた。
フ「ベリッサちゃん、もうメア族を襲うの止めるって言ってくれてよかったわね!」
フレイシーは嬉しそうに満面の笑みを見せる。
デ「そうだな。ロードのおかげだ…ありがとう。」
ロ「いえ。僕の方こそ、本当にみんなに助けられました。ありがとうございました。」
ディムアに微笑み掛けた後、ロードは仲間たちに視線を合わせてそう声を掛けた。
フ「やっぱり、ロードはメガネがないとよね!」
ロ「本当ですね…。こんなことはもう懲り懲りなので、今度からメガネは夜寝る前に金庫にでも入れておこうと思います。」
マ「あははっ!それならきっと盗まれることはないね!」
苦笑いをするロードの言葉に、仲間たちは声を出して笑う。
デ「…結局、また私はロードに護られてばかりだったな…。」
ロードの隣で、ふとディムアは落ち込んだ様子で呟く。
ロ「そんなことないですよ。ディムアがずっと隣にいてくれたおかげで、ほとんど目が見えなかった僕にとっては、とても心強かったんです。そして嬉しかったです。ありがとうございました。」
デ「…っ。。」
ロードのそんな優しい言葉を聞いてしまい、ディムアの顔は真っ赤になった。
ル「なんか、なんでかわからないけど熱いな?笑」
マ「わかるよ!特にこの辺りが熱い!笑」
ルクの言葉を聞き、マオはロードとディムアの周りを飛びながら、そう答える。
フ「ふふっ!ロードとディムアは本当に仲良しね♡」
眩しいほどキラキラな笑顔で、フレイシーは2人を見つめる。
デ「…も、もうここに用はないだろ!?私は先に帰ってるからな!!」
ロ「そ、そうですね…。帰りましょうか。」
真っ赤な顔のディムアは早歩きで歩き出し、ロードも慌てて彼女の後ろを追う。
ル「あー!ロードもちょっと顔赤くなってる!照れてるんだろー?笑」
ロ「…んー、何でしょう…身体が熱いです。もしかしたら熱があるかも…。」
フ「え、本当に?大丈夫?」
マ「いや、大丈夫!ロードは本当に照れてるだけだから!」
ロ「…は、早く帰らないと…あはは…。苦笑」
デ「…っ。。照」
幸せな雰囲気のまま、5人は帰路に着いた。
マ『魔法の書の解読を進めていた今日、大変な事件が起こった。なんと、ロードのメガネが盗難されてしまったのだ。メガネがないとほとんど見えないロードにとっては、深刻な事態だ。『メガネを取り返して欲しければ、ゴーストブルーフィールドに来い』という窃盗犯からの手紙を見つけ、我々はゴーストブルーフィールドを進んだ。魔法攻撃の命中率が大幅に下がってしまったロードは、戦闘が大変そうだった。しかし、ディムアがロードを献身的にサポートしてくれていたおかげもあり、犯人を追い詰めることが出来た。犯人の正体は、まさかのルクの元相方のベリッサだった。ロードがメガネがないとほとんど見えないことを知っていたベリッサが、暗殺者のような危険な女とともに、我々に襲いかかってきた。とても苦しい戦いだったが、ルクの活躍でメガネを取り返すことに成功し、2人を倒すことが出来た。同時に、ベリッサも改心してくれたようだ。この1件で、ロードとディムアの絆が更に深まったようだった。』
マ「もう付き合っちゃえ!笑」
そう呟き、ニヤニヤしながら、マオは研究所に文章を送信した。
8*メガネ盗難事件―完―




