ルク&ベリッサとの戦い①
その後、ぬすっとモンキーを探しながら、3人はコーラルビーチのフィールドを進んでいた。
マ「…ふんふん。この地域のフィールドには〝ブルーペンギン〟とか〝クリオネ〟とか、見た目が可愛いモンスターがいっぱいいるね!」
周りを歩く初めて見るモンスターたちを、マオは興味津々で観察している。
ロ「そうですね。それに何もしなければ襲って来ないモンスターばかりのようなので、戦闘はしなくて良さそうです。」
デ「…うん。そうだな。」
ロードの言葉に、ディムアは小さく頷く。
そんな平穏な時間は、3人の目の前に現れた人物によって終わってしまった。
?「そこのお2人さん、ちょっといい?」
デ「…?」
声を掛けられ、ロードとディムア、マオは振り向く。
そこには、青年と後ろに女性が立っていた。
?「突然で悪いんだけど、そっちの女の子を借りても良いかな?」
笑顔で青年はディムアを見て尋ねる。
ロ「本当に突然な話ですね。何の用ですか?」
デ「…っ。」
ロードはディムアの前に出て、警戒心を見せる。
マ「…この人たち、すっごい怪しい!」
マオもロードの後ろに隠れながら、彼らを威嚇する。
?「あ、やっぱり警戒するんだ。あのね、正直に言うと、俺たちはメア族を捕まえる仕事をしてるんだ。」
そう言いながら、青年は困ったように笑う。
ロ「…そうですか。」
ディムアを護る体勢を変えることなく、ロードは真顔で言う。
?「うんうん。だから、痛い目にあいたくなかったら、すぐにそこにいるメア族を渡してほしいって言ってるんだよね。」
ロ「なるほど、そういうことですね。」
ロードは少し笑みを見せ、納得したように頷く。
?「そうだよ。さぁ、早く渡して。」
ロ「断ります。」
ロードが迷うことなくにこやかに言うと、青年の目つきが突然変わった。
?「…バカなヤツらだな。大人しく渡せば、無傷で見逃してやったのに…。殺るぞ。」
?「はーい☆」
青年に声を掛けられた後ろの女性は、楽しそうに返事をして杖を構える。
青年は銃を取り出し、銃口をロードに向けた。
マ「銃…!?ロード、気を付けて!!」
ロ「はい、大丈夫です。」
マオが咄嗟に声を上げると、ロードは頷く。
青年が引き金を引き、1発の銃弾を放ったが、ロードはウィンドエッジでその銃弾を弾き飛ばした。
その直後にロードの〝ウィンドカウンター〟が発動し、青年に風がまとい、身体を切り裂く。
?「っ!!?」
ダメージを受けた青年は、膝を付いた。
?「それーっ☆」
青年の前に出た女性が笑顔で杖を振ると、ロードとディムアの身体に小さな落雷が落ちた。
デ「っ!!」
ライトニングの効果で、ディムアの身体は痺れ、動けなくなった。
同時に、ロードの〝ファイアーカウンター〟が発動し、女性の身体を炎が覆った。
?「きゃぁっ!?」
女性は悲鳴を上げ、炎を魔力で振り払おうとする。
その直後、青年が銃弾を放つが、ロードはディムアの身体を支えて横に飛び、その銃弾を素早く避けた。
ロ「…ライトニング、お返ししますね。」
すぐに体勢を立て直し、笑みを見せてそう言ったロードは、青年と女性にライトニングを放った。
?「うぉぁっ!!?」
落雷を直撃した2人は、身体が痺れ、動きを止めた。
ロ「…大丈夫ですか?」
デ「あぁ…うん。」
ロードに顔を覗き込まれ、ディムアはゆっくり立ち上がり、小さく頷く。
ロ「すぐ追い払うので、もう少し耐えてくださいね。」
デ「…うん。」
小さく笑みを見せるロードがそう声を掛けると、戸惑いながら、ディムアはもう一度頷いた。
マ「ロード、敵が攻撃して来そうだよ…!」
ロ「…はい、了解です。」
マオの言葉に、ロードは青年と女性に視線を戻した。
?「…こんなんで負けてられねぇ!〝ベリッサ〟!本気出すぞ!!」
べ「わかってるよー☆〝ルク〟こそ、今度は本気で狙い撃ちしてよねー☆」
そう交わした2人は、同時にロードとディムアに攻撃を仕掛けてきた。
青年のルクは〝パワーショット〟をロードに放ち、女性のベリッサは〝ガルベスタタイフーン〟を唱え、2人の身体を風で覆った。
ロードは咄嗟に〝アイスクリスタル〟を唱え、ルクの放った銃弾を氷の塊で弾き飛ばした。
ガルベスタタイフーンのダメージは受けてしまったが、すぐに〝ウォーターカウンター〟が発動し、ロードの杖から放たれた水の弾が、ベリッサに勢いよく直撃した。
べ「もーっ!?カウンター魔法が厄介なんだけどー…!?☆」
水の弾を受けて体勢を崩したベリッサが、弱音を吐く。
ル「…そうだな…!でも、そろそろ終わりにするから!!」
ベリッサにそう声を掛けたルクは、ロードの後ろに隠れるディムアに、パワーショットを放とうとした。
しかし、撃つ直前にディムアが唱えたマジックアローが身体に刺さった。
ル「…いっ…!!?」
油断していて変な声を出してしまったルクは、その場に倒れ込んだ。
ロ「…ナイスですよ、ディムア。」
デ「…うん。」
ロードに微笑み掛けられ、ディムアは小さく頷く。
マ「相手はだいぶ弱ってるね!」
ルクとベリッサの様子を見て、マオは言う。
ロ「そうですね。では、君の望み通り、そろそろ終わりにさせますね!」
ル「…っ!!?」
ロードに笑顔で視線を合わされたルクは、思わず身体を硬直させてしまった。
次の瞬間、ロードはフレイムトルネードを唱え、ルクとベリッサの身体を炎で覆った。
ル・べ「あぁぁっ…!!」
2人の悲鳴が、同時に響く。 炎が消えたとき、2人の身体はボロボロで、力尽きたように倒れていた。
マ「よぉっし!これで勝ったね!」
デ「…。」
マオは喜び、ディムアは、ロードのあまりの魔力の強さに唖然としていた。
ル「…くっ…!な、なんだ、こいつ…めちゃくちゃ強えぇ…!?」
ベ「…うん、降参だねー☆」
勝ち目がないと感じた傷だらけのルクとベリッサは、ふらふらと立ち上がり、後退りをする。
ロ「これに懲りて、メア族を捕まえるなんて止めることですね。」
真剣な表情で、ロードは2人にそう忠告する。
ル「辞める訳ないだろ!次は絶対に捕まえてやるからな!!」
ベ「たいさーん☆」
そう声を上げた2人は、おぼつかない足取りで立ち去っていった。
マ「突然びっくりしたね…。ロードとディムア、大丈夫だった?」
ロードから離れ、マオは2人に尋ねる。
ロ「はい、大丈夫ですよ。」
デ「…大丈夫だ。」
2人は頷いて見せる。
ロ「あのようにメア族を捕まえようとする悪い人が寄って来るんですね。」
マ「そうだね!いつどこから襲いかかってくるかわからないから、気を付けよう。」
ロードとマオは、顔を見合わせてそう話す。
ロ「…?」
デ「…ん?」
ふと、考える仕草をするロードに、ディムアは視線を向ける。
ロ「そういえば、彼らは何故ディムアがメア族だとわかったのでしょう?」
デ「…あ、確かに…。」
ロードの疑問に、ディムアも不思議そうな表情を見せる。
マ「そういえばそうだね!ディムアは闇の魔力を使った魔法を出してないし…。」
ルクとベリッサと戦う以前のモンスターとの戦闘シーンを思い出しながら、マオは言う。
ロ「…外見でのメア族の特徴があるのか、闇の魔力を感知する方法があるのか…。考えられるのはそれくらいですかね。」
デ「…。」
ロードとマオに見つめられ、ディムアは2人から視線を逸らす。
ロ「気になるので、今度ディムアを襲う人が近付いて来たら、聞いてみましょう。」
マ「悪い人たちに、そんなこと聞いて正直に教えてくれるかな?」
ロ「もちろん、無理やり聞き出すんですよ♪」
マオが疑問を呟くと、少し怪しい笑顔で、ロードはそう答えた。
デ「…なんだかわからないが寒気が…。」
マ「…うん。次会う悪い人たちは気の毒だね。南無南無…。」
次にロードに懲らしめられる悪者たちを想像して合掌するマオを見て、ディムアは苦笑いをした。