想いを受け継ぐ
フレイシー、ルク、サニヤの3人は、港に到着した。
マ「…あっ!フレイシーとルクが戻って来たよ!」
彼らの姿に気が付いたマオは、ロードとディムアに、そう声を掛ける。
ロ「…2人と一緒にいる方が、長でしょうか…。」
デ「…。」
サニヤの姿を見て呟くロードの隣にいるディムアは、不安な表情を浮かべていた。
フ「…みんな!長のサニヤさんが来てくれたわ!」
港で待機していたロードたち3人に駆け寄り、フレイシーはサニヤに視線を向けた。
ロ「はじめまして、サニヤさん。わざわざこちらまで来てくださり、ありがとうございます。」
サニヤに向かい、ロードは丁寧にあいさつをする。
サ「はじめまして!丁寧にありがとう!フレイシーちゃんとルクくんから、話は聞いたよ。あなたがロードくんだね。あと、マオくん。あなたが、ディムアちゃんだね。」
笑顔でロードにあいさつを返したサニヤは、3人と順番に視線を合わせた。
デ「…。」
サニヤに見つめられるディムアは、どうしていいかわからず、うつむいてしまう。
サ「…フェアリーアイランドへよく来たね。さぁ、家へおいで。ゆっくりお話をしよう!」
そんなディムアを安心させるように、サニヤは彼女ににっこりと優しく微笑み掛けた。
デ「…私も、一緒に行っていいのか…?」
サニヤに視線を向け、おそるおそるディムアは尋ねる。
サ「もちろんだよ!あなたがとても優しい心を持っているってことは、瞳を見ればわかる。こんな優しい子を、拒絶出来るわけがないからね!」
デ「…っ!」
サニヤの言葉を聞き、ディムアは恥ずかしそうにうつむき、頬を赤らめた。
ロ「ありがとうございます…!」
ディムアを受け入れてもらえたことに安堵し、ロードは笑顔でサニヤに頭を下げる。
マ「よかったね!ディムア!」
デ「…うん!」
マオに笑顔で声を掛けられ、ディムアは小さく笑みを見せて頷いた。
「…サニヤさん、本当に通して大丈夫ですか?彼女はメア族ですよ?」
ディムアを横目で見ながら、門番はサニヤに尋ねる。
サ「あぁ、この子は大丈夫だよ。私が言うんだから、間違いないでしょ?」
「は、はい。大変失礼致しました。」
サニヤの言葉に門番は一礼し、横に1歩ずれて、島への道を開けた。
先頭を歩くサニヤの後ろを、5人は歩いていたのだが、そのときすれ違う島の住民たちは、皆驚いた表情で、彼らを凝視していた。
中には、サニヤに声を掛ける住人もいた。
「サニヤさん!メア族をこの島に入れるなんて…!?」
サ「怖がらなくて大丈夫!この子は普通のメア族とは違う、優しい子なんだよ!」
怯えた様子の住人に、サニヤは真剣な表情で、そう伝えていた。
ロ・デ「…。」
住人たちの視線が怖くて、ディムアは無意識にロードの背中に隠れながら歩いていた。
怯えた様子のディムアを安心させるように、ロードは彼女と頻繁に視線を合わせていた。
ほとんどのラファ族が、闇の魔力を感知する能力を持ち、ディムアがメア族だということがひと目でわかってしまうので、ラファ族の人々がディムアを怖がるのは仕方ないことなのだろう。
しかし、ディムアが絶対に人々に危害を与えないのに恐れられてしまうのは、とても悲しいことだと、彼女本人や仲間たちは痛感していた。
ディムアをこの悲しみから解放させる為に、浄化魔法を必ず習得しなければいけない。
彼女を見つめながら、ロードは改めて心の中でそう決意を固めていたのだった。
ロ「…。」
そんな中、とても強い視線を感じ、ロードは振り向く。
自分と同じくらいの年齢の女性が、木の陰からこちらを睨んでいる。
彼女も、きっとメア族のディムアのことを恐れているのだろう。
そう思い、ロードは声を掛けることもなく、前に向き直り歩いていた。
サニヤの家に、たどり着いた。
サ「みんな、お疲れ様!さぁ、遠慮しないで上がってね!」
サニヤに促され、5人はあいさつをして、家に上がった。
トリシアは、お茶を出し終え、5人とともに、テーブルの前に腰掛けた。
サ「…この島の住民は、みんなメア族に被害を受けたことのある人ばかりで、メア族を過剰に警戒しているの。だから、ディムアちゃんには、ここにたどり着くまでに、住民たちのせいで肩身の狭い思いをさせてしまったね。ごめんね。」
デ「…いや…。気にしてない。」
最初にサニヤに謝られ、ディムアは首を小さく横に振る。
サ「悲しいことに、メア族は本当にマイナスのイメージが付いてしまっているの。メア族を恐れてはいけない、差別の目で見てはいけないって、島の住民たちに教えてきたつもりなんだけど…。なかなか上手くいかないものだね。」
そう言ったサニヤは、少し寂しそうな表情を浮かべている。
ロ「…サニヤさんのような考えをお持ちの方が増えてくれれば、メア族が恐れられることはなくなるかもしれませんね。」
サ「そうかもね。でも、なかなか理解し合えないのが現実みたいね…。」
ロードの言葉に、サニヤは困った笑みでそう返す。
サ「それにしても、魔法の書がこの島にあるってこと、よくわかったねぇ。」
ロ「…魔法の書の在り処は、セレティナさんご本人に教えていただきました。」
サ「えっ?セレティナから…?」
ロードの返答を聞き、サニヤは不思議そうな様子で、目を見開く。
マ「ロードがね、スピリットっていう魔術で、セレティナさんの魂を呼び出して、話を聞いたんだよ。そしたら、魔法の書がフェアリーアイランドにあるって教えてくれたんだ!」
サ「あらぁ、そんなことが出来ちゃうの!?ロードくんはすごいのね!」
マオの説明を聞き、サニヤは驚いたようにロードを見つめる。
ロ「突然呼び出してしまいましたが、セレティナさんは快く、魔法の書がこの島にあると教えてくださいましたね。」
そう言ったロードは、小さく笑みを見せた。
サ「そうなんだね。セレティナはあの世でも元気そうでよかった♪」
冗談混じりに言い、サニヤは微笑んでいる。
フ「この島に魔法の書はあると聞きましたけど…具体的には、どこにありますか?」
緊張している面持ちで、フレイシーは尋ねる。
サ「魔法の書はね、この島の奥にある〝フェアリー神殿〟って場所にあるんだよ。」
マ「フェアリー神殿っ!?」
サニヤの返答を聞いたマオは、新しい地名に目をキラキラさせた。
サ「ただ、その神殿には、〝ホムンクルス〟という強いモンスターが潜んでいるから、注意が必要だよ。」
ル「…うわぁ…ボスか…。」
ルクは声を漏らし、苦笑いを浮かべる。
サ「…それから、あなたたちももう知っていることかもしれないけど…。魔法の書はそもそも普通の人に読める字じゃ書かれていないから、入手出来たとしても、浄化魔法を習得することはかなり難しいからね。」
フ「…普通の人に…読めない…?」
ピンと来ない様子で、フレイシーは呟く。
サ「そう。私やセレティナも、魔法の書を入手したまではいいけど、文字がどうしても読むことが出来なくて、泣く泣く浄化魔法の習得を諦めてしまったんだよ。」
浄化魔法の習得が叶わなかった当時の悲しさが蘇ったのか、そう話しながら、サニヤは落ち込んだ様子を見せている。
ロ「それ程読むのが難しいと聞くと、意地でも読みたくなってしまいますね。」
サ「冗談で言ってるんじゃないよ?本当に難しいんだから!」
笑顔を見せて言うロードに、真剣な様子で、サニヤはそう声を掛ける。
ロ「それでも挑戦したいと思います。どうしても、浄化魔法を習得したいので。」
デ「…。」
サニヤにそう答える真っ直ぐな視線のロードの横顔を、ディムアは見つめていた。
サ「…ふふ!とっても意志が強いね。ロードくんなら、浄化魔法を習得出来る気がするよ!頑張ってね!」
ロ「…はい、頑張ります。」
笑顔を見せたサニヤの言葉に、ロードも小さく笑みを返して頷いた。
マ「よーし!それじゃあ、フェアリー神殿に早速行こう!」
待ちきれない様子で、マオは仲間たちに声を掛ける。
ロ「そうですね。サニヤさん、ありがとうございました。」
サ「いえいえ。健闘を祈ってるよ!」
ロードに続き、仲間たちもサニヤに礼を述べ、家を出て、5人はフェアリー神殿へと向かった。
サニヤの家を出て、すぐのことだった。
?「…あの…。」
唐突に声を掛けられ、5人は振り向く。
そこにいたのは、先程サニヤの家に着く前に、木の陰から自分たちを見ていた女性だと、ロードは気が付く。
ロ「…はい、何でしょう?」
少し警戒しながら、ロードは女性にそう返す。
?「私は〝ミアノエル〟といいます。よければ、私がこれから皆さんの行きたい場所をご案内しましょうか?」
そう提案したミアノエルは、5人に穏やかな笑顔を向ける。
マ「大丈夫だよ!さっきフェアリー神殿までの道を教えてもらったから!」
自信たっぷりに、マオはそう返す。
ミ「…実は、この島に旅人さんが来るなんて珍しいことなので、皆さんとお話がしたいんです。」
ミアノエルは、遠慮がちに言って、5人を恥ずかしそうに見つめた。
フ「そうなのね!それじゃあ、案内してもらいながら、お話する?」
ロ「…そうですね。お願いします。」
フレイシーの言葉の後、ロードはミアノエルに小さく頭を下げる。
ミ「ありがとうございます。」
ミアノエルは笑顔を見せた。
こうして5人は、フェアリー神殿までの道を、ミアノエルとともに行くことになった。
フェアリー神殿までの道中、ロードたちは、旅の目的や、仲間たちと出会った経緯などを、ミアノエルに話した。
ミ「…皆さん、とっても大変な旅をされているんですね。」
話を聞いたミアノエルは、驚いたように目を見開いて5人を眺める。
マ「そうだよ!でも、すっごい楽しいよ♪」
そう言ったマオは、ニッと笑顔を浮かべる。
ミ「…ディムアさんは、ロードさんと出会えたから助かったんですね。」
デ「…うん。」
ミアノエルの言葉に、ディムアは小さな笑顔を見せ、頷いた。
マ「そうそう。ロードと出会えてなかったら、ディムアはあの男に殺されてたよ。」
ロ「なんだか、懐かしく感じますね。」
マ「オレたちが初めてカバリア島に来たときのこと思い出すよね!多分まだそんなに経ってないけど!」
旅の始まりを思い出しながら、ロードとマオは話している。
ミ「そこから、ディムアさんを救う為の旅が始まったんですね。それって、まさに運命の出会いじゃないですか?」
デ「…えっ…!?」
穏やかに微笑むミアノエルの言葉を聞き、ディムアは頬を赤らめる。
フ「そうよね!ロードとディムアが出会ってなかったら、私もこうしてみんなと出会って旅してなかったもの。」
ル「俺も、2人を狙って戦って、こうして仲間になることも出来なかったな。」
フレイシーとルクも、しみじみと語っている。
マ「うんうん。今みんなで旅が出来てるのは、2人の運命の出会いのおかげだねぇ!」
そう言って、マオはロードとディムアに視線を向け、にやにやしている。
ロ「そうですね。…ディムアと出会えて本当に良かったと思います。」
デ「…私も…ロードに出会えて良かった…。」
仲間たちの言葉を聞き、そう交わした2人は、恥ずかしそうに見つめ合った。
ミ「…皆さん、本当に仲良しで素敵ですね。」
マ「えへへ、まぁね♪」
ミアノエルの言葉に、マオは嬉しそうに笑みを浮かべる。
ミ「…あ、フェアリー神殿はあそこですよ。」
ミアノエルが指さす先に、うっすらだが建物が見えてきた。
フ「あそこね!ミアノエルさん、案内してくれてありがとう!」
建物を確認したフレイシーは、ミアノエルに礼を述べる。
ミ「いえ。こちらこそ、お話を聞かせてもらえて楽しかったです。浄化魔法の習得は本当に難しいですが、私も応援しています。頑張ってくださいね。」
ロ「はい。ありがとうございます。」
微笑み掛けるミアノエルに、ロードは頭を下げた。
ミアノエルに見送られ、5人はフェアリー神殿に向かって歩き出した。




